サイクリング車とプール2

そんな中、小学校3年生くらいの夏休みから、家から自転車で25分程行ったところに、市営のプールがあり、家族でよく行っていた・・・といっても、夏休みの間だけで5~6回程度だったのだが。



そのプールは、総合運動公園の中に有った。他に、陸上競技場や野球場、テニスコート等が有り、プールじたい、競技用のプールだった。



50mプールに、25mプールで屋外型のプールだった。



それを市は、新たに、子供用のプールを増築して、夏休みの期間に一般開放しているのだった。



小学3年生くらいから家族全員で行ったのが初めてだったのだが・・・


そこから年月が経ち、小学6年生くらいになると、もう一人で行けるようになり、夏休み期間中、ほぼ毎日プールに行っていた。


ただ、昼までには、やるべき事(夏休みの宿題や家の手伝い等)をやってから、そして、あまり遅くならないうちに、5時に帰って来るのが条件だった。



夏休み期間中、昼までに宿題等を済ませ、昼食も11時と、早めに済ませ、12時には入園料等をもらい、自転車に乗って家を出発、12時半には、プールで遊泳し始めていた・・・のだが。


ある日、いつものように昼までに宿題等を済ませ、いつものように昼食も早めに済ませ、12時にはプールに向けて出発しようとしたのだが、その日は様子がおかしくなった。



前日までは、ちゃんとやりこなしていた事が出来ていなかった。


出発前に必ずやらなければならない事、その日に限って、頭から飛んじゃっている状態で、更にプールに出発しようと自転車に乗ろうとした時、なぜか、チェーンが外れていたのだ。


前日は、チェーンが外れるという事がなかったはずだったが。それに、2日程前にチェーンに油を射したばかりだったのだが。



とりあえず、自分でチェーンをはめ込み、手を軽く洗って、プールに向けて出発した。


最初、ある程度加速するまで、ひたすらペダルを漕ぎ続け、加速がついたら漕ぐのをやめた。するとまたチェーンが外れてしまったのだ。



また降りて、チェーンをはめ込み、再び出発、ある程度加速するまで、ひたすらペダルを漕ぎ続け、加速がついたら、漕ぐのをやめた。するとやっぱりまたチェーンが外れてしまった。



そういう事の繰り返しが10回以上も、家を出発して45分以上もかかったのだが、まだ目的地のプールまでの半分くらいしか来ていなかった。



その時点で、出発前に必ずやらなければならない事、頭から飛んじゃっている状態、つまりやり忘れていた事が頭の中をよぎった。それは。プールへの入園料を貰う事、つまりお金を持って来ていなかった。



前日まではちゃんともらっていたのに、この日は完全にもらい忘れていた。



だから、プールに着いたとしても、入園料が無いため、入る事が出来ない。



また入園料を貰いに家まで戻らなければならなかった。



結局、戻るときにも、チェーンが外れてははめ込み、外れてははめ込みの繰り返しがやはり10回近くも起こっていた。そして45分もかかって家に着いた。



12時に出発したはずなのに、そういうトラブルだけで1時間半も要した、家に戻ってきた時は1時半だった。


家に着いたあと、サイクリング車を玄関にほり投げるように立て掛け、家の中に・・・


母親にやや半泣きの状態で・・・



「お金をもらってなかった!」と言って。右手を差し出した。



その右手はどろどろになっていた。それを見た母親は。



「なんで、そんなにどろどろなの?」と聞いた為



「もう、チェーンが外れてばっかりでどうしようもない」と答えたのだが・・・


「そんなに事有るかいな、なんでチェーンが外れてばっかりなの?」


まったく信用してもらえなかったので、見て貰おうと。サイクリング車の元へ。


そして外れたチェーンを再びはめ直して、後輪を浮かせ、手でペダルを漕いだ、ある程度加速したところでペダルを漕ぐのを止めると、やはりチェーンが外れてしまった。それを見た母親は・・・


「おかしいよ、なんですぐに外れるのよ?もう一回やって見-よ!」



そう言われ再びチェーンをはめ込み後輪を浮かせ、手でペダルを漕ぎ、加速がついたら漕ぐのをやめた、やっぱりまたチェーンが外れたのだ。何回やっても一緒だった。


母親は、兄を呼んで・・・


「これ、ちょっと見てやってよ、チェーンが外れてばっかりで、おかしいのよ!」



それを聞いた兄は・・・


「さっきから何をやってるんだよ!チェーンのはめかたちょっと教えただろうが。もうやり方忘れたのかよ!」


かなり怒っていた。そして、外れたチェーンをやや乱暴にはめ込み・・・


「これでちゃんと入っただろうが!なんで出来ないんだよ!」


ややイライラしている感じだった。


そんな中、母親と兄の前で再び後輪を浮かせ、手でペダルを漕ぎ加速したところでペダル漕ぐのを止めるとやっぱりまたチェーンが外れ、結果は同じだった。それを見た兄は・・・



「なんだよこれは。どうなってんだよ!」


と更にイライラした状態で再びチェーンをはめ込みまた手でペダルを漕ぎ加速したところでペダルを漕ぐのを止めるとやっぱり外れてしまう。それを何回繰り返しても結果は同じで、1時間近くも格闘していたのだった。


最後はかなりイライラしている状態で、ついには投げ出してしまうほどだった。


「もう、こんなのどうしようもないだろ、何をやったんだよ!・・・こんなんおかしいだろ?

自転車屋に持って行って見て貰うしかないよ!」



結局修理のしようがなく、自転車屋にて修理を依頼する事に。


半泣きの状態で家の中に入り、手を洗って、母親に修理費とプールの入園料を貰おうとしたのだが・・・母親もイライラしていたみたいで、四つ折りにした千円札を自分の顔に投げつけてきた、そして・・・


「早よ行け!!もっとしっかりせえ!」


母親のイライラは頂点に達しているようだ。


そして自転車屋まで押しながら歩いて行き、店員に状況を言おうとしたのだが・・・


「チェーンがはめ込んでもすぐに外れてしまうばっかりで・・・」


と言おうとしたのだが。


「チェーンが外れてしまって・・・」


としか言えなかった。



それを聞いた店員は、自分の目の前でチェーンをはめ込んだのだが、やり方はほぼ同じだった。


はめ込んでもすぐに外れてしまう事を口で言うより、すぐ外れるところを見て貰おうと、また後輪を浮かせ、手でペダルを漕ぎ加速したところでペダルを漕ぐのをやめたのだが・・・いままでそこで外れていたのに、今度はまったく外れなくなった。いくら乱暴にやって見てもまったく外れなくなった。突然直ったようだ。店員もただはめ込んだだけなのに。


いままですぐに外れていたのは、なんだったんだ・・・と思い、怒りが頂点に達した。しかし、店員に当たる訳にはいかなかった。


「これで大丈夫でしょう!お金は結構ですよ!」



店員にそう言われると。怒りが頂点に達したままだが、軽く会釈しながらプールに、もうダッシュでペダルを漕ぎわずか15分足らずで到着した。


それにしても、なぜ、よくチェーンが外れてばっかりだったのだろうかか?なぜ、突然直ったのかまったく理解出来なかった。











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