〇〇様という地元の神社について

八夕川浩(やばたかわひろ)

 私の地元は山奥の人口も少ない町なのですが、そこにはある神社があります。全国的に見たら無名な神社ですが地元では〇〇様と呼ばれ、たまに行われる祭りには多くの人が集まる、かなり大きい神社です。下の駐車場から少し長い階段を登ると大きな鳥居があって細長い参道に沿って灯篭や小さな摂社への小道があり、その両端は山林へと繋がっています。参道の先に大きな門があり奥には古くも荘厳な本堂が構えてあります。

 

 門の手前は左右に道が分かれており、左側の道を行くと錆びた遊具のある公園と、公園と橋で繋がっている盛り上がった小山に建てられた8メートル程の塔があります。たまに薮のあたりからアオダイショウなどの蛇が出るため近づくなと親にはキツく言われていました。小山の周りは濁った池で囲まれ、鯉が泳いでおり、他にも色々な生き物がいるので自由研究をそこでする人も何人かいました。小山の周りは砂利道で囲まれているのですがあまり管理されておらず、今思うとなんであんな遊びにくいとこで遊んでいたのかと疑問に思います。


 もう30年も昔のことですが私の友人がその小山で失踪してしまいました。


 小山といっても直径は横40メートルはあり、池や公園の周りもどこが境界か分からないほど山林が生い茂っており当時警察も捜索に時間をかけていました。私は11歳で、失踪したAとは同じクラスでした。Aは痩せ細った体型でしたが運動神経は良く、持久走ではよく表彰されていました。人気者でしたがAのお兄さんが有名な不良で、Aも影響を受けタバコをたまに隠れて吸っていました。


 Aが失踪したとされた日、学校が終わった後警察が私の家に尋ねてきました。Aとはその前日の夕方まで友人達6人ほどと一緒にその小山で鬼ごっこをしていたからです。しかしその後私たちは暗くなってきたので、まだ帰りたくないというAとBを残して帰ったのです。宮司さんが20時頃見回りをした際に公園ではしゃいでいる二人を見て早く帰りなさいと注意をしたらしいのですがその後21時頃見た時には誰もいなかったので帰ったかと思ったと言っていたそうです。私は警察にAとBが小山に残ったことを伝えました。

 

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