第43話 長嶺結夏の目的
「そんなニヤニヤしてるの気持ち悪いよ」
「嬉しいんだからしょうがないだろ」
俺は夏休みから数日経った後、長嶺に再び呼び出されていた。定期的な報告会ってやつだ。
「落ち込んでたかと思えば、すぐに元気になっちゃうなんてね」
「いろいろあったからさ」
「元はと言えば、勝手にキミが勘違いしてただけでしょ」
恭也がミナを好きだと勘違いしたり、ミナが恭也に告白していると勘違いしたり、ここ1ヶ月で何度落ち込んだことか。
「ったく、振り回されるこっちの身にもなってよ」
「それについては悪かった。だけど俺だっていろいろと尻拭いしてるんだぜ。恭也の家の住所をお前に教えたって誤魔化したりしてさ」
「その節はどうも」
突然恭也から電話が来たときは驚いた。なにせコイツは勝手に恭也の家に遊びに行ってるんだからな。
「分かってると思うけど、あたしのこと恭也くんに話したりしてないよね?」
「それはもちろん。そういう契約だからな」
長嶺は俺たちと同じくタイムリープをしている。そもそもそのタイムリープを持ち掛けてきたのは長嶺の方からだった。
同窓会のあった日、俺は酔いつぶれた恭也を長嶺と2人で公園まで運んでいた。
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「この機械は“ミネサヴァ”っていうタイムリープをすることができる機械なの。楠本くんもやり直したい過去があるでしょ?」
ベンチに恭也を寝かしつけた後、長嶺はアナログ時計のようなものを出して説明を始めた。
「ふ~ん、本物なのかそれ?」
胡散臭い話だとは思うが、彼女は本物だと断言した。ちゃんとしたところから入試たものだから効果は確認済みだそうだ。
「ありがとう、じゃあありがたく頂くよ」
「タダであげるって言ってないけど」
「なんだよ、条件でもあるのか?」
彼女はコクリと頷き、右手で3のポーズをしてきた。
「1つは、この機械は2人まで一緒に使えるの、だから楠本くんは恭也くんと一緒に使うこと。そして2つ目はあたしが一緒にタイムリープをしていることを内緒にしておくこと」
「2人までしか使えないのに、どうやってお前はタイムリープをするんだ」
「大丈夫、もう一台あるから。どう守れる?」
タイムリープが出来ることに比べれば、別にこの2つぐらい容易いことだ。
「それでもう1つは?」
「それは……」
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「3つ目のお願いを聞いてもらう代わりに、キミを生徒会長にしてあげるのはいいけど、そのためにはキミ自身の努力も必要だからね? ちゃんと勉強してる?」
3つ目の願いは2つの願いと比べて難易度が高くあった。だから俺の方の願いを聞いてもらう条件で聞き入れることにした。
「その辺は大丈夫だ。ちゃんと勉強はしている。次の中間では50位を獲るつもりだ」
「生徒会長を目指すならもう少し高い順位を取って欲しいところだけど、前回の順位を考えるとそのぐらいか」
50位を越えるとレベルが一段と上がる。今の実力ではそれ以上の順位を取るのは不可能に近いからな。ちょっとずつ頑張っていくつもりだ。
「もちろん、あたしの3つ目の契約もしっかり守ってもらうからね」
「ああ、それはちゃんと考えてはいるが、夏祭りは随分恭也と楽しんだそうじゃないか」
「あたしだって、楽しみたかったんだもん。キミが全然家から出てくれなくて、花火が始まる時間ギリギリで会場に着いたんだから。少しぐらい役得あったっていいでしょ」
恭也からはあの日あったことのことは聞いていた。まぁ俺がミナとの惚気話をしている時にぽろっとこぼしていたのを聞いただけだけど。
「あれは危なかったな。危うく告白されちゃうところだったよ」
あれだけ一気に距離を詰められちゃー、惹かれない方が無理があるだろう。それにしても可哀そうな奴だ。コイツの目的を知らないんだから。
「あたしが恭也くんと付き合うわけにはいかないからね。だって、あたしがタイムリープをした目的は」
コイツの3つ目の契約。それこそが、彼女がタイムリープをする理由である。
「恭也くんと沙織ちゃんをくっつけることなんだから」
コイツの考えていることが俺には全く分からない。何故そこまでして2人をくっつけたいのか。
ただ一つ言えることは、もう俺たちが知っている歴史とは大きくかけ離れてしまっているということ。ここからの展開は俺には全く読めないということだ。
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第1部完結です。ここまで呼んで下さった方々ありがとうございます。
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第2部の更新は未定です。2月中には再開するかと思います。
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