第6話
四限目を終えるチャイムが鳴った。
クラスメイトの男子たちがはしゃぎながら教室を出ていく。
わたしはチラリと隣の席を確認したあと、親友二人の元へと向かった。
「食堂行こ〜」「マシロ今日購買?めずらし」
何も持たないで歩いてくるわたしを見て、『あーちゃん』と『めーちゃん』は首を傾げた。
「あの、今日はちょっと一緒に食べれないんだけど………」
「およ?どしたん??」「体調わるいん?」
「あ、違くて。えっと、『あーちゃん』と『めーちゃん』とは約束しちゃってたんだけどさ。あの、今日はちょっと他の子に二人で食べたいって誘われちゃって………」
「え、おとこ?」「今カレざまぁww」
「ち、違うよ!女の子だよっ!!……でさ、いつも二人とは食べてるから、今日は………」
「なーんだ、そんなことか!!」
「もっと胸を張って堂々としな。そんぐらいでマシロと友達の縁を切るほど、私たちも薄情者じゃあ無いから」
「い、いいの??」
「あったりまえじゃん!!」
「となると、ウチらは今日は二人きり、、、か。………じゅるり」
「なんか視線がやらしいんですけど!??」
「マシロ、その子と約束してんなら早く行ってあげな。私たちは、、裏庭にでも行こっか♡」
「当たり前のように腰に手を回すなぁ、変態ぃ」
「…………行ってしまった」
わたしは『あーちゃん』の腰に手を回す『めーちゃん』と、そんな『めーちゃん』に対して満更でも無いような『あーちゃん』たちに向かって手を振った。
ほどよく見送ったところで、さて、わたしも井上 静玖ちゃんとご飯を食べようと思い振り向くと、綺麗な美少女のお顔が目と鼻の先に。
驚いて声も出なかったわたしに、井上 静玖ちゃんは、にんまりと笑ってお弁当を二つわたしの前に見せてきた。
「つくってきた。一緒に食べよっ!」
普段よりかは幾分か声のトーンが高い気がする。
もしかして、わたしと同じように楽しみにしてくれてたり?なんだか、そうだったら嬉しいな。
ドクン。ドクン。
………なんだろう?初めてできた彼氏のタッくんと初めてデートに行ったときでさえ、こんなに鼓動は早く、そして大きく鐘を打たなかったのに。
なんでか、彼女、井上 静玖ちゃんとこれから一緒にランチと考えると、無性に緊張してくる。
でも、それはそうと、、、
「えっと、ごめんね。わたし、自分のお弁当持ってきてるんだ………」
「……………………え」
あわわわわわわわわ!
先までの嬉しそうな顔から一転して絶望に染まった泣きそうな顔になっちゃったよ井上 静玖ちゃんが!!?
でも、どうしよう。ほんとに、わたしはお弁当は持ってきてしまってるし。
さすがにお弁当を2つ食べるのは女の子として………、威厳に関わるんだよねぇ。
でも、チラリと井上 静玖ちゃんの様子を窺う。
うるうるとした目でわたしを見ては床を見て、わたしを見ては床を見て、を繰り返している。
「(きっと、今日わたしに食べてもらうために作ってくれたお弁当、だよね??)」
うーーん。無碍には出来ないよね。
よし!!
「じゃ、じゃあさ!井上 静玖ちゃんがわたしのお弁当を食べて、わたしは井上 静玖ちゃんのお弁当を一つだけ食べる、っていうのはどう??」
「え、い、いいの?」
「うん!なんだかやっぱり、自分で作ったお弁当よりも、井上 静玖ちゃんが作ったお弁当が食べたいなぁ、って急に思っちゃって!!えへへ、こっちこそ、本当に食べてもいいん、だよね?」
「え、あ、う、うん!いいんだけど……、いや、違くて、私が聞いたのはマシロちゃんの手作りのお弁当を私なんかが食べてしまってもいいの?ってこと………」
「えっ?なんだ、全然いいよ!むしろ、逆にわたしの手料理なんかで良いの?って思っちゃう」
「マ、マシロちゃんが作るものだったら、何もらっても嬉しい!!から!!!」
「そ、そう?なんか照れるな、えへへ。じゃ、じゃあ、机くっつくて食べよっか?」
「う、うん。………よ、よろしくお願いします………」
合コンか!!
机をくっつけて向かいあった井上 静玖ちゃんの挨拶に内心でツッコミを入れておく。
あれ?そう言えば、なんか今日は今までで一番、井上 静玖ちゃんとお喋りできたかも??
そんなことも内心で思いながら、わたしと『今ちょっぴり話題の美少女』こと井上 静玖ちゃんはランチタイムを満喫した。
時は井上 静玖ちゃんとランチタイムを終えて昼休み。
お互いに机はくっつけたまんまの状態で談笑をしてると、不意に何かを思いついたかのように彼女はわたしの耳元へその麗しの唇を寄せた。
えっ、なになに!?!?
わたしは咄嗟に、あの時のキスを思い出す。
いや、いやいやいや、い、今は周りにたくさんのクラスメイトたちがいるし!ここ教室だし!!
何考えてるんだ、わたし!!
井上 静玖ちゃんは、あのキスをする前の時と同じ、僅かに頬に蒸気を昇らせ、瞳の奥に何か熱い期待やらピンクのものやらを滾らせた状態で、普段は考えられないような艶やかで色っぽい声で、
こう、わたしに囁いた。
「放課後、私との思い出が欲しくなったなら、またあの場所に来て。
―――そろそろ、二回目が欲しくなったでしょ??」
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