4話
「さよなら、菜乃葉」
「う、うん、める、またあ、明日」
「あはは、明日は土曜日でしょう? それとも明日も合う?」
放課後、バイトも部活動もしてない私とめるは二人で駅に向かい、そこで別れました。
めるはわざわざ電車を乗り継いで、遠い所から通学しています。
改札を通り、めるが振り返りました。
可愛らしい笑顔を私に向け、手を挙げます。それを見て、私も慌てて手を挙げ返します。
そして、人混みへと消えていくめる。
さよならは悲しいものです。だけど、私はこの瞬間をずっと待っていました。今日の掃除のとき、退屈な授業中、はたまた今日の放課後から、ずっとこの瞬間のことを待ち侘びていたのです。
私は足早に駅のコインロッカーへと向かいました。
コインロッカーに辿り着き、中から小袋を一つ取り出すと、次はトイレに向かいます。
個室に入り、小袋から中身を取り出します。中には他校の制服が綺麗に折り畳まれていました。
私は着ているブレザーを脱ぎ、緑色のリボンを外し、その他校のブレザーに手を通します。前髪の分け目を少し変え、ポケットにしまっていたマスクを着用して完成です。
今まで着ていたブレザーを小袋の中に畳んでしまうと、私は個室を出ました。
トイレの鏡に映る私を見て、めるは私だと気づけないだろう。そんなことを思いました。
私はコインロッカーに戻ると、同じ場所に小袋を戻して、改札を通ります。
向かう場所は三番線。
ちょうど学生たちの帰宅時間と被り、三番線ホームはすごい人混みでした。
私は下りのエスカーレターに乗ると、スマホを取り出します。そしてとあるアプリを起動しました。
画面では地図のようなものの上で緑色の点はゆっくりと点滅しているのが映っています。
私はスマホをしまい、人混みを縫うように進んでいきます。そして、
────いた。
私は発見します。人混みに埋もれながら異様な存在感を放つ、彼女の姿を。
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