第33話 〜ぶっ殺す〜
変異種の姿が消えた。辺りを見ると,変異種は一瞬で移動をしていた。
「ギャギャギャギャギャギャ」
とてつもなく大きい歯軋りのような声なのか鳴き声なのか分からない音を発した。
変異種の体に亀裂が入る。中から新たな体がニュルッと飛び出してきた。
出てきた体には新たな羽が生えてきている。そして一回り大きい体をしていた。
「あいつ脱皮しやがったか?」
雷斗が発言しているうちに,次の瞬間には姿が消え雷斗の銃の銃口を切られていた。
尖った爪が鋭い刃物のようにキラリと光り,雷斗が持っていた銃を真っ二つに切り裂いた。
さっきよりさらに速くなっている。
俺は自分に攻撃がくるように挑発し,俺に目が向くように仕向けた。
やつは俺へ攻撃を仕掛けてきた。
俺に攻撃がくる分には平気だ。俺自身をバリアで分からないように覆えば大丈夫だからだ。
ただ,相手が気付いてない間に,コイツを倒す算段がつかないと戦況は完全に不利になりそうだ。せっかく羽を破壊したのに,脱皮したこいつには新しい羽があるのも問題だ。
「俺に攻撃をさせるように仕向けている間に,どうすればいいか考えてくれ!!!」
「分かったわ。どうにかしてみる!!」
「雄二さんよろしくお願いします!」
Antsybalは俺に対して空中から目にも留まらぬ速さで何度も何度も鋭い爪で攻撃をしてくる。
どの位の時間攻撃されたか分からないが,かなりの数の攻撃された。だが,俺の鉄騎が傷付いてないのが,おかしいと思ったのか? 攻撃を急に止めた。
正直コイツは単純に強いだけじゃなくて,頭がいい。他のAntsybalと一番違う所はそこだろう。
俺へ攻撃しているのに,ダメージがないのがおかしいと思っているのか不思議に思っているのか分からないが空中でホバーリングしながらこっちを見て首を傾げている。
俺はドローンで大した攻撃じゃないが,攻撃を当てて挑発する。
とにかく苛つかせて俺に攻撃をしてほしかった!!
「ギョギョギョギョギョギョ」
奇妙な鳴き声を発しながらこっちに向かってきた。それでいい!
俺も攻撃を食らいながら,こいつの速さと動きに慣れるように観察している。
サンドバッグのように攻撃を食らい続けたおかげで,何とか見えるようになってきた。
それでもどう攻撃を仕返ししたらいいか分からない。
「雄二さん聞こえますか? 出来たら地面の上に来て攻撃を受けてもらえませんか? もしくはさっきみたいに羽を破壊とかって出来ますか?」
「なんだよ! 彩乃なんかあるのか? とりあえず破壊は無理だ。わかった下で攻撃を受けるよ」
空中で戦っていたが,俺は地面の上に立つ。
「彩乃!?!? 攻撃を食らってればいいのか!?!?」
「雄二さんそうです! お願いします! 私がどうにかします」
彩乃がそんな事を言うなんて珍しい。何か策があると思い,俺は彩乃の言う通りにした。
そろそろバリアの耐久がキツイ感じがしてきた。
いつかは突き抜けてくるかもしれない。そんな事を考えながら,変異種からの攻撃を盾もバリアも使って受け続けている。
彩乃が今まで見たことがない構えをしている。何か狙っているような雰囲気がある。
次の瞬間彩乃の鉄騎が消えた。
何をしたのか分からないが,消えた瞬間彩乃の鉄騎がすぐ目の前に現れた。そして俺への攻撃を繰り返している変異種の脇腹辺りを肘で思いっきりぶちかました。それだけじゃなく,そのまま腕にタコのように絡みつき,関節技で四本ある腕のうち一本をねじ切った!!
彩乃が今まで見せたことがない技を繰り出し変異種に一矢報いた。
ねじ切った腕から緑色の液体が飛び散る。
鳴き声なのか悲鳴なのか分からない声が響く。
その瞬間のチャンスを恵は逃さなかった。外皮でも柔らかそうな部分を狙って攻撃を繰り出す。
恵の全力全開の四刀流で畳み掛ける。
彩乃もすぐさま攻撃を加える。彩乃は今までに俺達に見せたことのない技と技の間に紡ぎ目ない連続技で相手に攻撃を与え続けている。
ここがチャンスだと思った。雷斗も恭子も二人を邪魔しないように攻撃を繰り出す。
俺は二人の攻撃のすきを突いて変異種に一撃入れた。体内から爆発させる。
口から煙を吐く変異種だったが,それでもなお倒れない。
彩乃と恵の攻撃の動きが止まった。変異種が彩乃の鉄騎の腕と恵の足を掴んでいた。
二体の鉄騎を振り回し投げ飛ばす。彩乃と恵の鉄騎は壁まで飛ばされ騎体が壁にめり込んだ。
変異種はすぐに飛び立ち,俺達から逃げようとした。今逃したら次勝てるか分からないほど強くっているかもしれない。だから絶対に逃す訳にはいかない。
変異種が逃げようとしている場所の壁にAntsybalや鉄騎が一体だけなら通れるような穴が見える。
「雄二!!!!!! 逃がすな絶対!!!!!!」
恵のその声に反応した俺は穴をバリアで塞いだ。
穴に入ろうとした変異種が押し返される。
「ナイスだ雄二!!! 私がとどめを刺してやるよ!!!」
「まてやーーー!!!」
恵がいつもの調子で騒ぎながら変異種を追いかけ今までで一番凄みがある攻撃を仕掛ける。
次の瞬間,恵の鉄騎の背中を突き抜けて変異種の腕が出てきた。その腕には真っ赤な血が大量に付いていた。
「ギイイイイイイイイイイイイイイ」
「恵ーーー!!」
「うるせーーー雄二ーーー!!!」
恵の鉄騎は,腕が突き抜けた状態のままで変異種を壁に追い込む。四本の刃を使って肩と足を壁に打ち付け動けないようにしている。
「雄二!!!!! 今だ!!!!! クソビームぶちかませ!!!!!」
「何いってんだ馬鹿! 出来るわけないだろ!」
「やつの腕が私の体を貫通してる!!!! もう死ぬ!!! だけどコイツだけは絶対にゆるせねぇ!!!! ここしかない!!!! いいからぶちかませ!!!!」
「できねぇーーって!!!」
「早くしろ馬鹿野郎!!!! もう意識がなくなる!!!! 抑えられない!!!!」
「クソクソ! クソがクソが! マジでふざけんなよ恵!」
俺はビームを撃ち込む準備をした。
「雄二!!!! そのまま私ごと撃て!!!!
「ふざけんな! ふざけんな! 一生恨んでやるからな恵!」
「ぶちかませーーーーー!!!」
俺は全身全霊,最大出力でビームを解き放った。
「我々の事を自分自身を犠牲にして守ってくれた郡司恵に献花を!」
恵の遺体に俺は最後に花と河童のぬいぐるみを手向けた。
鉄塊 yuraaaaaaa @yuraaaaaaa
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