第30話 〜女子寮への侵入と腕前と打ち上げ〜

 雷斗と男子寮に戻り,支度したら玄関前で集合する事に。

 すぐに支度をし,玄関へ行く。


 「雄二くん,これから何処に行くんですか?」

 「師匠,女子寮にこれから向かうんです。リーダーがご馳走してくれるっていうんで」

 「そうなんですね。迷惑はかけないように気をつけて下さいね」

 「はい師匠分かりました」


 「悪い悪い雄二! じゃあ行くか」

 雷斗が階段から降りてきて,共に女子寮へと向かう。


 雷斗が言うには,女子寮へ男子が用もないのに行くのはご法度らしい。

 敷地内でも奥の方へと進む。木々に囲まれ隠すかのような場所に女子寮があるようだった。

 すると女性の軍人二人に,門が見える。

 

 「貴様達,女子寮に何の用だ?」

 「いや……一年生の藤井恭子さんに言われて女子寮に来たんですが」

 「ちょっと待ってろ!」


 何やら無線のようなもので確認を取っているようだった。

 「よし! 確認が取れた。中に入っていいぞ」

 男子寮とはえらい違いだなと思った。


 門をくぐると先に女子寮が見えてきた。

 女子寮に着くと玄関で寮母さんと思える方が迎えてくれた。

 「話しは聞いています。こちらにどうぞ!」

 寮母さんが案内をしてくれる。


 男子寮の造りと似ている所もあるが,圧倒的に女子寮の方が綺麗だった。

 案内された部屋に行くと,大きな部屋にそれは綺麗で充実したキッチン完備の部屋に案内された。

言うなれば,超豪華な家庭科室という感じだろうか?


 キッチンには恵と彩乃,恭子が居てすでに何か作っているようだった。

 「雄二くんと雷斗くん,いらっしゃい! とりあえず座ってて」

 テーブルの椅子に座る俺と雷斗。


 「おい! なんだこの部屋! 男子寮にこんな部屋ないぞ」

 「冬月大佐が学生時代に作らせたって話しらしいよ!!」


 「え!? 冬月大佐が??」

 「ん〜噂だと冬月大佐の趣味がお菓子作りで寮で作りたいからってこんな立派な部屋とキッチンと作らせたという!」

 「想像がつかないな!!」


 「まあでもこんな部屋があるから,料理する女性が多くていい意味で今ではちゃんと役に立ってると思うよ」


 「それよりさ〜,今日は何ご馳走してくれるんだ??」

 「こういう時はやっぱりカレーでしょ!?」


 俺は雷斗と目を合わせてお互いに少しホッとした表情を浮かべた。

 漂う匂いでカレーかな? と思っていたが,カレーなら不味いって事はないだろうと思ったからだ。


 「後はサラダとデザートがあるから! いっぱい食べて」

 「皆で作ったの?」


 「カレーとサラダは私と彩乃ちゃんで! デザートは恵が担当してくれた!」

 「え!? 恵デザートとか作るれるの??」

 「雄二くん……失礼」


 「実は恵さんってお菓子作るの上手なんです! 私と恭子さんも最近知ったんですが,凄いんです」


 「へぇ〜それは楽しみだ!」

 俺と雷斗は楽しみに待った。


 「お待たせ!」

 机の上にカレーとサラダが並べられた。

 見た目は超普通のカレーで安心した! 変化球じゃない普通のカレーが一番美味いと俺は思う。

 「じゃあ皆でさっそくいただきましょうか?」

「「「「「いただきます」」」」」

 俺と雷斗は一口食べた。想像しているより遥かに美味しかった。


 見た目は何処にでもカレーなのに,味付けなのか? 隠し味なのかわからないが,美味しい!

 俺と雷斗はがっついて食べた。


 「「おかわり」」

 「雄二くんと雷斗くんってやっぱり男の子なのね!」

 「なんだそれ!? どういう意味だよ」

 「いやぁ〜食べるの早いし,沢山食べるなぁと」


 「いつも男子寮で胃袋鍛えられてるからな俺達は! なあ雄二??」

 「特に雷斗はめちゃくちゃ大食いだよな」


 俺と雷斗は満足するまでカレーを食べ尽くした。


 「いや〜ありがとう! 想像より遥かに美味しかったわ」

 雷斗が言う。


 「二人共凄い食べるから,全部なくなっちゃったわ! まあでもこれだけ食べてくれたら嬉しいね。彩乃ちゃんもそう思うでしょ?」

 「そうですね! 二人共良い食べっぷりでしたね! 見てて気持ちよかったですね」


 「男子寮って物凄い量のご飯を食べさせられる事が多いからさ! 自然と大食いになるし早く食べる癖が付いちゃうんだよなきっと。男子寮の食堂今度来る??」

 雷斗が急に言いだした!


 「いや! でもそんなん無理でしょ!」

 「冗談っだって! 冗談!」


 「でも有名だよね! 男子寮の食堂って」

 「ええ。鬼が住んでるって有名ですよね!」

 俺と雷斗は大笑いをした。


 「なんでそんな噂になってるの!?」

 「鬼だって!!! 鬼!!!」


 「まあでもパッと初対面で見たら,男なのか女なのかわからないような人だからな! 怒るとめちゃくちゃ怖いし強いし!!」

 「だから鬼とか言われちゃうんのかな??」


 「まあでも飯田のおばちゃんが鬼って言われても俺は信じちゃうぜ!!」

 

 「本当にそんな人が居るんですか??」

 「え!? 鬼?? 雷斗どう思う?」

 「見にくりゃあいいじゃん! 休みの日に見に来る位いいんじゃないの? 清美ねえちゃんに聞かないと分からないけど」


 「男子寮に来るっていいのか? 女子寮に行けるなら男子寮も大丈夫じゃないの?」

 「ん〜まあでも飯田のおばちゃんと清美ねえちゃんが居る男子寮だし大丈夫そうじゃない? 何か問題起こしたら殺されちゃうし!!」


 「殺されるって……なにそれ!」

 「んー男子寮を管轄してる食堂のおばちゃんと寮母さんだよ!」

 「二人共信じられない程強くて,誰も勝てないからね! 誰も逆らえないし。あの冬月大佐でも二人には逆らえないらしいよ!」


 「なにそれ! 凄い人達がいるのね」

 「師匠と飯田のおばちゃんに今度聞いてみるよ! 来れるようだったら男子寮の噂の食堂を見に行こうか」


 「デザート……食べよう……」

 「そうね! 恵ちゃんのデザートが残ってたわね。皆で食べましょう!」


 恵が冷蔵庫から取り出したのは苺のフルーツタルトのデザートだった。

 かなり本格的なタルトだと見た目で分かる。何処かのお店で売っていても遜色がないクオリティだと分かる。


 「おい! 恵すげぇ〜〜な! めちゃくちゃ美味しそうじゃん!」

 雷斗のテンションが上がる。この世界に来て,甘いお菓子やケーキというのをそういえば食べてないなって思った俺は,特に毎日身体を動かしている俺達にとって甘いデザートというのは貴重で魅力的なんだと思う。


 そういう俺もかなりテンションが上がった。

 「え!? これ恵が一人で作ったの??」

 「そうだよ……」


 「恵さんが夜な夜ないつも何かしてて,何しているのか? 気になって恭子さんと見に行ったらお菓子を作っていたんです。それから恵さんはお菓子作るのが上手だという事を知って,色々と食べさせてもらっているんです」


 「ちょっと意外だよね!」

 「想像はちょっと付かないかな?」

 「とりあえず皆でいただきましょうか」


 「雄二くんにはコレ……」

 そう言われて河童の形をした砂糖細工をタルトに乗せられた。

 「ありがとう」


「「「「「いただきます」」」」」


 久しぶりに食べる甘い苺のタルトは衝撃が走るが如く脳天に響いた。

 カレーをあれだけ満腹に食べたのにタルトをここまで美味しく感じる事が凄い。


 「美味しい」

 俺の心の声が漏れていた。


 「ありがとう……」

 雷斗もがっついて食べている。

 「美味しいぞ恵!! めちゃくちゃ美味い!!」


 「ね! やっぱ美味しいよね恵ちゃんの作るお菓子」

 俺達は話が盛り上がって様々な話をした。

 いつの間にか俺達はチームとして仲良くなっていたと感じた。


 チームが出来た当初で考えたら考えられないような関係になったと思う。

 時計を見ると二十時を過ぎていた。

 「雷斗。もう遅いからそろそろ俺達帰ろうぜ!」

 「もうそんな時間か……帰るかぁ」

 「恭子と彩乃と恵ご馳走様! 美味しかったよありがとう」


 「ご馳走さん!」

 「こちらこそありがとうね! じゃあ明日学校でね」


 「また明日」

 「明日……」


 俺と雷斗は女子寮を後にし男子寮へと戻った。

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