第22話 〜衝撃の事実と強さを求めて〜

 次の日には学校中に会長が倒れた事が広まっていた。

 そんな心配とはよそに一年生だけではないが,鉄騎の訓練のカリキュラムが変更になった。以前よりもより実践的に,そしてAntsybalと戦う機会増えていくようだった。


 会長が居るという前提で動いていた作戦が会長が不在になった事で,会長が不在だったとしても,遂行できるだけの実力を身に付けさせるという思惑があるのでないか? と思っている。


 Antsybalの巣を俺達一年生は見つけ,さらにその時点で戦い,殲滅出来るようなら実際に戦ったりするようになった。レベル2がいても,先生の判断して突入させる事にもなった。


 以前だったらそういう事はなかった。鉄騎の訓練は激しいものとなった。

 俺達のチームも以前より危険が高い任務に行くことが増えた。


 そんな訓練の日々の中で,俺達に衝撃を与えた出来事に直面する事となった。


 俺達は普段通りにAntsybalの巣を思われる場所に行き,実際にどうなのか? という調査の訓練をしている時だった。


 そこへ行くと洞窟らしき場所がそこにあり,中がAntsybalの巣になっているという。危険が高い可能性が高く,レベル3がいてもおかしくないという事なので,出来るだけ安全に調査するよう指示があった。 


 洞窟から一体のAntsybalが出てきた。出てきたAntsybalを見て驚愕した。


 「おいおいおいおいおい! おい! おい!」

 雷斗が焦った口調で話す。


 「あいつ! 生きてたのかよ! あれ!? あいつだよな」


 出てきたのは俺達が出くわした変異種だった。

 財前が倒したと思っていた変異種は生きていたのだ。


 「藤井,違う個体って可能性あるのか?」

 「いや! 変異種は特別で同じ個体が生まれる事はないってらしいわ! だからあのAntsybalは私達が出会った変異種で間違いない」


 「あの野郎! 生きてやがったのか! ぶっ殺すぶっ殺す!」

 「あれがあの財前さんを倒したっていうレベル2の変異種」


 「ええ。間違いないと思う! このまま巣を殲滅する事は出来ないから一旦戻る事にしましょう」

 「もっと確認しなくていいのか?」


 「あの変異種が居るって分かっただけでも収穫よ! 仲間を呼ぶ事が出来るんだもの。レベル2もレベル3もきっと洞窟の中にいるわ!」

 「とりあえず学校に戻って報告しよう!」


 俺達は学校に戻り先生に報告を終えた。

 山口先生が俺達を連れて冬月大佐の所へ向かう。


 「今回呼んだのは,君達が出くわした変異種についてだ。以前会った変異種で間違いないか?」

 「間違いありません。私達が見間違えるはずがありません」


 「そうか」


 「それで,その時実際に戦ったのはお前達って事で大佐はその時の事を詳しく聞きたいんだと」

 山口先生が話す。


 「藤井からの報告では聞いたが,実際に攻撃したのは雷斗と恵だろ? お前達の感想と感触を直接聞きたい」


 「私は……相手の弱点になりそうな関節を狙ったんです。それも同時に,でも変異種は私の攻撃を避けるどころか,掴んでもぎ取ったんです。一瞬のうちに」


 「俺も恵と一緒で関節狙ったんです。でもあの変異種は避けもしなかった」

 「速い,硬い,強いです」

 「下手したらただの銃弾や剣や武器じゃあ傷すらつける事が出来ない相手の可能性があります」



 「それに……本気の財前君と戦って勝つほどの実力があるっていうだけでも分かると思いますけど……かなり危険な相手です」

 恵と雷斗が答えた。恭子がさらに付け加える。


 「それと,鳴き声で仲間を呼ぶのも厄介だと思います。一体だけならまだしも多数で集まられると厄介です」 


 「なるほど! そうか。どうすれば勝てる? と思う? 一応意見を聞きたい」


 「私は正直会長がいるのであれば会長が戦うのが一番だと思います」


 「郡司のスピードを簡単に対処されるほどのスピードとなるとそのスピードに対抗できるのは会長ぐらいしか思い浮かびません。ましてや他のスピードも段違いに速いです。対処出来るのは単体なら会長しかいないでしょう」 


「しかし,会長がいないとなると,数チーム合同で作戦を練って追い詰めるのが得策だと思います」


 「ん! なるほどな!」

 

 「大佐!! お願いします!! 変異種との戦いは私達にやらせてください」

 意外にも恵が大佐に向かって発言した。


 「それは出来ない! 戦いたい気持ちは分からなくもないが,実力が足らないだろう」

 「ではどうすれば戦わせてくれますか?」


 恵が食い下がる。


 「駄目だ! 一年生にさせるわけにはいかない。話を聞く限り,危ない相手であるし,強い相手だ。三年生達に任せる事になるだろう」

 「どうしても駄目ですか??」

 「駄目だ!!」


 「冬月大佐! どうしても駄目でしょうか? 財前く――財前の敵を討ちたいんです」

 恭子も大佐にお願いをする。

 

 「お願いします!」

 雷斗も突然言葉を発した。俺も一緒に頭を下げた。


 「やる気は認めよう。それでもじゃあ戦わしてやる! とはならない。分かるな?」

 「「はい……」」


 「作戦は決行されるまでの野外での演習の成績とそして三年生のチームと模擬戦をして勝ったら作戦に入れてやる」


 「これでどうだ?」

 「分かりました! では山口先生と冬月大佐が納得する結果を出します」

 恭子がリーダーとして答える。


 「それでは私達はこれで失礼させていただきます」

 俺達は恭子に続いて,学長室から出る。


 「ふぅ〜〜……恵ちゃん急に何言い出したんよ本当に。心臓止まるかと思ったわ」

 「急に言い出すんだもんなぁ! びっくりしたぜ」


 「恵みってあんなはっきりと意見言えたんだな」

 「なんですか……? 皆して……」


 「まあ私も郡司さんがまさか冬月大佐に向かってあんな意見言うとは思いませんでした」 

 多分小さい時から一緒だったからこそ俺なんかより余計に皆はびっくりしたんだと思う俺でさえびっくりしたんだから。


 俺達はそのまま残って訓練をする事にした。話した訳じゃないが,正直このままでは全然駄目だという事を皆が皆が分かっていたんだと思う。

 それに大佐にあんな大風呂敷おおぶろしきを広げた手前,無様な結果は出せないと思っている。


 今までよりさらに訓練に熱を入れるようなった。個人で出来ることチームで出来る事を模索し,訓練した。


 だけど,何事もそうだが急激に人間は成長したりはしない。何か新しい事がすぐに出来るようにわけでもない。毎日の少しずつの積み重ねでしか成長の階段を登る事は出来ない。 

 

 時には二段飛ぶかもしれない。しかしほとんどは一段一段登って成長していくものなんだと思う。


 だからこそ変に焦っていたのかも知れない。時間が悠長にあるわけではない。


 俺達のチームが次の日の放課後リーダーの恭子に呼ばれて集まった。

 「正直,このままの実力だったら三年生に勝つことは難しいわ。遥かに練度の高い攻撃と防御,チームワークがある三年生にはただの個人技では通用しない。もっというとあの変異種にもきっと通用しない」


 「それで?? 恭子は何か考えがあるの?」

 「あるわ! 私達のチームで最も足らない事って雄二くんなんだと思う?」


 「ん〜チームワーク??」

 「そう!! まさにそれよ!!」


 「そんな事言ったってチームワークなんて言葉似合うチーム編成じゃないぜ!?」

 「雷斗くん,まさにそこなのよ! 正直結果さえ出せばいいと! そしてこのメンバーでチームワークっていうのもおかしいかな? と思っていたけど,やっぱりそこを無視出来ないと私は最近思ってる」


 「でも恭子さん,チームワークって言ってもどうするんですか?」

 「鉄騎の訓練とか戦術とかじゃなく,私達は私達をもっと知った方がいいと思う」

 「それっていうのはつまりどういう事ですか?」


 「明日は丁度休日で学校も休みだから,遊びに行きましょ!!」 

 「恭子本気で言ってるの??」


 「ええ! 勿論大本気よ! 明日は朝から遊びに行くから皆で」

 「え〜〜せっかくの休みなのに……ずっと寝てたいぜ!」


 「私は……外行きたくないです……」

 「私は別に構わないわ!」


 「じゃあ明日全員学校の校門の前に朝の八時に集合だから! 皆わかった?」

 「「「「了解」」」」


 まさか恭子からの提案で全員で遊びに出かけるなんて出てくると思わなかった。

 リーダー恭子の提案で俺達はチーム皆で遊びに行くことが決まった。

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