むかしむかし……

LeeArgent

むかしむかし……

昔々、お爺さんとお婆さんが住んでいました。


お爺さんは山へBMXへ、お婆さんは自宅でTwitterをしていました。


お爺さんが山で颯爽と自転車を乗りこなしていると、山頂から、どんぐりよろしく岩が猛スピードで転がってきました。


「こりゃあやばい」


お爺さんは足をフルスロットルで動かし、岩に負けないスピードでぐんぐん山を下っていきます。


しかし岩は、落下していくに従って更にスピードを増していきます。


あぁ、危ない!お爺さんは今にも潰されてしまいそうです。


「年寄りを舐めるんじゃないぞ!」


お爺さんは、走っていた道を僅かに外れ、障害の少ない道を進んでいきました。そして、時々余裕をかまして、宙返りなどの技を決めました。


「ひゃほうっ!」


この緊迫状態の中、アドレナリン大放出のお爺さんは、興奮がどうにも止まりませんでした。スマートフォンを取り出すと、お婆さんに電話をかけたのです。


「おおい、婆さんや。見てくれ!」


真下にある小さな長屋から、お婆さんが出てきました。お婆さんは耳にスマートフォンを添えて、山を振り返りました。


目の前に見えたのは、両手を離し崖から技を決めながら落ちていくお爺さんと、巨大な巨大な丸い岩でした。


岩はお爺さんを追いかけ、崖から跳び跳ねると、


ずしぃぃん…………


家を下敷きにして、ようやく大人しくなりました。


ずしゃあっと、自転車が土をはね飛ばし、お婆さんの隣に止まりました。


「落石なう」


お婆さんはスマートフォンからTwitterにアクセスすると、そう呟きました。


「なあ、婆さんや」

「何です、爺さんや」


お爺さんは歯を輝かせ、爽やかに言いました。


「引っ越すか」

「そうですねえ」


こうして、お爺さんとお婆さんは、都の息子夫婦と同居することにしたのでした。


めでたし、めでたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

むかしむかし…… LeeArgent @LeeArgent

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ