願わくば彼女が幸せでありますように

サンドリヨン

願いと呪い

全部、全部、全部、私が悪いんだよね。わかってるよ。私がいなければ、私さえいなければ、あなた達も、他の人だってハッピーエンドを迎えられる。ごめんね。ごめんね。私なんていなければよかったのにね。私なんて生まれなければよかったのにね。私が不安にならなければよかったのにね。あなたといた時間だけが私にとっての救いだったけど、あなたはそうじゃなかったね。


私はいつも双子の妹と比べられてきた。父には殴られ、色鮮やかに、まるで人間じゃないみたいに痣だらけだった。母には罵られ蔑まされて、「あんたなんて死んでればよかったのに」なんて、まるで人間じゃないみたいに言葉で刺されて、わたしの心は血だらけだった。妹やクラスメイトには無視をされて、まるでそこに居ないみたいに、扱われ、父と母が存在を認めてくれている分マシに見えるくらいだった。だから、生きている意味なんて分からなかった。死ぬ意味も分からなかった。死んでいるように生きているのか、生きているように死んでいるのか、自分でさえも分からなかったからかもしれない。親に売られた女の子の話を聞いた。まだ私の方がマシなのかなと思った。お屋に殺されかけた男の子の話を聞いた。まだ私の方がマシなのかなと思った。そんな比較が意味をなさないことを誰よりも、わたし自身が1番よくわかっていたのに。「このときにもう死んでいればよかったのに」と、この後何度思うことか、このときの私は知らない。それからは地方の大学へと進学し、手切れ金と絶縁状を親に渡され、私は家族がいなくなった。このときの私が一番幸せだったんだろう。夜寝るときに過去の出来事がフラッシュバックしてきて寝れなくなったことを含めても、圧倒的にプラスだった。


大学で初めての友人ができた。出会わなければ良かったと何度思うことか。初めての友人は親友になり、好きな人になった。親友のままでいれば良かったのかな。でも初めて恋を知って止まり方を知らなかった私は関係を変えようとしてしまった。関係は親友から恋人に変わったけど、彼女の気持ちは私に向いてなかった。でも、誰にも渡すつもりはなかった。一生私だけのものであれば良いのにと願った。少しずつ空回りしていたのは分かっていた。でも頑張って尽くしたのに。違う。こんなことを書く資格はない。大丈夫。私が悪いのはわかってる。私が束縛しちゃったからあなたの気持ちは離れていったんだよね。だから私が悪い。全部私のせいにして、幸せになって。嫌だ。やっぱり幸せにならないで欲しい。私と同じ苦しみを味わって死んで欲しい。こんなことを書きたいんじゃない。少し話が逸れちゃったね。それからあなたは少しずつあの男と会い始めたよね。私がいくらやめてって言ってもあなたは友達だからと言葉を濁して、あの男にやめるように言っても俺の勝手だろなんて。私が女じゃなければもっと堂々としてあなたの隣にいれたのかな?もし遠距離にならなければ、もっとあなたを信じれたのかな。違うよね。やっぱり私がいなければ全て上手くいくんだよね。それからしばらくして昨日のこと。貴方から別れて欲しいって電話してきたよね。私が泣いて嫌だって言うと、あの男に変わって、ウザイとか死ねとか、安直だけど、久しぶりの暴言は私にはきつくて、どれだけ死にたくなったかあなた達は知らないし、分かるなんて言って欲しくない。これを読んでいる人もそう。読んでいる人も私が悪いって思ってるんだろうな。そんな考え方だから、上手くいかないんだとか、次があるとか言う人がいるのなら、私は人でなくて良い。


私が思い描いた未来はそんなに高望みだったのかな。私にはわからないよ。


〜〜〜〜


遺書を書き上げた。誰に向けたのかもわからない、私の独白。途中から、何が書きたいか分からなくなったけど、書き直してる時間はない。


「別れてもいいけど、最後に電話でいいから話がしたい」


そうLINEを送ると数分して電話がかかってきた。


「もしもし、今までごめんね、私が悪かったよね。別れるからあと少しだけ、恋人でいて欲しい。私ね、あなたと一生一緒にいたいと思っていたの。うん。分かってる。ちゃんと別れるから話を聞いて?うん。ありがとう。それでね、貴方に別れたいって言われてから、なんにもわかんなくなっちゃって、起きてるのか寝てるのか、生きてるか死んでいるかも希薄になってきちゃって、だけどね、急にはっとして、私がいたからあなたは苦しかったのかなって気づいてね、やっぱり死んだ方が良いと思うんだ。私みたいなやつは。でも1つくらいは、人生で1つくらいは願いを叶えたくて、一生あなたといるって願いを叶えようと思ったの。だから、今から私を殺すから、そしたら別れていいよ。ね、当てつけじゃないよ。お願い、一個くらい思い出を持って死にたい。ね、だから、あなたが私の好きだったところ、友達としてでも良いから聞きたいな。うん。大丈夫、最後だよ?なんかない?、優しいところって、なんにもないとき言うやつでしょ。ふふっ、初めて笑った気がする。うん。今から落ちるから、幸せになってね。」


身を投げる。まだ繋がっている通話画面を見て、


「死んじゃえ」


〜〜〜〜〜


大学生くらいと見られる女性の遺体が発見された。河の上流にある滝に身を投げたものと思われており、身元が誰かはまだ分かってない。滝の上から彼女のものと思われる遺書が発見された。願わくば来世では彼女が幸せであれるようにと思わずにはいられなかった。

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