10月第5週 最強武器丸太
『クエルチオーリ レッジアーノ ランブルスコ セッコ
NV
メディチ エルメーテ』
イタリア史に名を残すメディチ家を起源に持つ一族によって築かれたワイナリーである。
エミーリャロマーニャ州に位置し、パルミジャーノのチーズや生ハムが有名な土地柄でもある。
エミーリャロマーニャ州の有名なワインといえば微発泡性の赤ワイン・ランブルスコだ。
生産性の高い品種としてエトルリア人が古代ローマ時代から栽培していたらしく、大量生産の安ワインのイメージが強かったが、近年では品質にこだわったランブルスコも老舗生産者を中心に造られているそうだ。
では、早速開けてみようじゃないか。
思っていたよりも凝縮感のありそうな濃厚なルビー色、微発泡らしく穏やかな泡立ちだ。
甘やかなベリー系の香り、口当たりに思ったよりもタンニンの渋味が感じられる。
味わいもちゃんと熟したブドウを使っているのか、カシスのように黒い果実の風味、酸味もわずかにあってバランス良く造られている。
ランブルスコにファ◯タグレープのような工業製品のイメージを持っていたが、良い意味で印象を壊してくれる逸品だった。
『かぼちゃの煮つけと焼き芋』
ハロウィンが近いこともあり、かぼちゃを食べたくなった。
最近の光熱費の暴騰もあり、煮付けも大変になってきた。
そして、考えた。
開拓した畑では伐採した木が腐るほどある。
ちょうどよい燃料が潤沢にあるのだ。
さあて、寒くなってきたし薪ストーブの出番だ。
作り方はシンプルなかぼちゃの煮つけ、ほんだし醤油ベースに砂糖、塩、酒で煮込むだけ。
薪ストーブの上にこれらを入れたダッチオーブンを乗せるだけだ。
で、薪を燃やす場所には皮が焦げないようにアルミホイルで巻いたさつまいもをセットすれば準備は完了。
後は、伐採した杉の枯れ葉と細い枝を、ブドウの収穫で出た使用済み傘紙を着火剤に燃やしていくだけでいい。
畑も片付くし、紙ゴミも無くなる。
だが、まだまだ山程あるのでしばらくは薪ストーブの出番だろうが。
さて、気がつけば完成だ。
味わいはホカホカのかぼちゃの煮つけ、ホッとする落ち着く味わい、実に田舎暮らしにピッタリの一品だ。
焼き芋もまたホクホク、この自然な甘みに身も心も暖まる。
そして、ワインとも合わせる。
やはり泡が入っているので、赤ワインでも十分に楽しめる。
醤油ベースのかぼちゃの甘味がランブルスコの泡との調和が良い感じだ。
焼き芋も気軽に味わえて、この素朴さがどこか落ち着く。
今回はダッチオーブンの試運転も兼ねてなので、これからの楽しみがまた1つ増えたかもしれない。
そんな食事だった。
☆☆☆
「みんな丸太は持ったな!!」
と、声をかけても誰もいない。
一体何の話をしているのだろうと思われただろうが、とある界隈では最強の武器として知られている。
だが、今回はそんな話ではない。
話は月曜日に遡る。
先週は色々なことをやったと書いたと思う。
最後にトラクターで畑全体を耕したので見事に見晴らしが良くなった。
こうなれば、次の作業を行うことができる。
行政の補助事業の関係で苗木を植える前にブドウ棚を先に造らなければならなくなった。
本来ならば、苗木を植えてからの方が作業がしやすいので順番が逆であるが、行政が絡むと融通が利かないのでこういうこともある。
それはそれで仕方がない。
自己資金がない上に、事業資金の大半を賄ってもらっているからだ。
さて、これからブドウ棚を造る前に、畑の中に設置範囲を割り出さなければならない。
この作業は、測量と建築の知識があればさほど難しくはない。
ちょっと丈夫なビニール紐をホームセンターで用意する。
まず最初に、図面を見ながら基準となる一列分を真っ直ぐになるように、長さを合わせながらビニール紐を張る。
これは簡単なのでやれば誰でもできるだろう。
次にコーナー部分で直角を出すのだが、小学校だったか中学校でだったかどちらで習ったか忘れたが、コンパスを使った簡単な算数の法則でできる。
コンパス代わりにビニール紐とその辺に落ちている木の棒で簡単に代用できる。
このようにして基準になる四角面を畑に描き出す。
後は、図面通りに長さと列数を四角面から伸縮させれば、ブドウ棚の位置が大体分かる。
しかし、この図面も雑木林を切り拓く前に、グーグルマップで寸法を出したざっくりとした図面なので誤差は当然ある。
田舎の土地は正確な測量図がある方が珍しいからだ。
この後、図面と現況を見比べながら微調整をして、ブドウ棚の位置が確定した。
これで無事に想定通りの工事範囲だったことでホッと一安心したところだった。
だが、次の日のことだった。
「なんじゃこりゃー!?」
折角ブドウ棚の位置を割り出したビニール紐が一部吹き飛んでいた。
そう、あのブタ野郎オーク……ではなくイノシシだ。
簡易版の獣避け・カモシカネットを張ったわけだが、地面とのわずかな隙間から侵入してきたのだ。
このネットは地面とネットをテントのペグのような杭で固定されているのだが、イノシシ共はこれを掘り返して畑の中に侵入してきていた。
その証拠に侵入場所の近くのペグとその部分のネットがちぎれていたからだ。
ついでにヤツラの臭い落とし物も落ちていたので間違いない。
そうして、始めの戦場に赴く際の掛け声となったわけである。
開拓中の畑では雑木林や杉の巨木を大量に伐採したので丸太がまさに腐る程あるのである。
納入されたばかりの運搬台車を駆り出し、周辺のネットにぐるりと丸太を撒き散らした。
時には細身の女性よりも重い丸太をお姫様抱っこして持ち上げる。
徹底的にヤツラの侵入経路を潰していった。
こうしていると、ブドウ棚の資材が業者から搬入されてきた。
まさに山のような量である。
これらを地道に畑の入り口からそれぞれの設置場所の近くへと運搬していった。
長物の単管パイプは加工する必要があるので、軽トラで運べる長さに切りながら家の物置へと運んでいく。
日も短くなってきたし、暗くなってからや雨の日でも作業できるようにだ。
そして、丸太を大量に運び出したおかげで来年以降に開拓する部分も少し片付いた。
この時に思ったわけだ。
細い枝は薪ストーブで燃やしながら加工作業をすれば良いのでないか?
野ざらしで放置していれば文字通り腐る程ある、ただのゴミだ。
こうして有効利用し、細い枝は燃料となり寒い日でも暖を取ることができ、さらに前半の料理メニューとなったのであった。
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