#10

 この町には精霊結界という監視用の結界で守られている。


 何故魔族が通れない結界にしなかったのかというと単純に魔力が足りないからだそうだ。


 その監視用の結界はリリルの親御さんが管理しているらしく、結界外30m以内に異常を感知すると塔から警報を出すという仕組みだそうだ。


 俺達は町の外に出て爆発のあったほうへ走った。


 そこには黒いロングコートに身を包んだ清楚な髪の長い美女がいた。


 その美貌は前に精霊に会ったときのようなものとは違い、もっと悪魔的な、魅了するような美しさだった。


 そんな美女とケンザキが戦っていた。


「フフッ私の攻撃を見透かすなんて、なかなかヤリ手じゃない。」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 その時に感じた恐怖は計り知れないものだった。


 僕は固有スキルと聖剣エクスカリバーを持つ、転生者だ。


 固有スキルは通信、仲間と使用魔法、魔力、能力、スキルを遠隔で共有できるスキル。


 だから僕のパーティーメンバーは自らの剣やダガーにエクスカリバーの能力を付与して戦うことができる。


 このスキルを前に僕たちと善戦できた者はいない。


 この女を除いて…


「精霊剣能力付与型斬撃〈フェアリー・エクスカリ…」


「能力発動:マニュアルスリーパー」


 僕が攻撃をする前に眠らされる。


『状態異常を検知、スキル自動発動。』


 それと同時に状態異常回復スキルが発動し、起きる。


 これを何度繰り返したことだろう。


「フォルティッシム・エクスカリバー!!」


 エクスカリバーで強化した斬撃魔法。


 大きな爆発音とともに剣が通った軌跡に触れたすべてを断ち切る。


 これを回避した者はいない。


「あら、凄い斬撃ね。地面も対象もまとめて断つ斬撃、でも遅い。未来の勇者候補のケンザキ君に期待していたのだけれど…残念。」


「私のユウトはどこも残念じゃない。完璧に近い人間だ。氷結魔法応用〈ブリザード・クリエイトソード〉通信スキル:聖剣付与・ブリザードエクスカリバー!!」


「フフッなるほど。確かにどんなに強い竜族も凍てつく斬撃かもね。面白いものを見たわ。ありがとう。いい夢を見てね。マリオネット・スリーパー」


 僕はこの世で最も残酷な悪魔を見た。


 僕の仲間は対応する暇もなく眠らされ、そのまま僕に襲い掛かってきた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 いったい何があったのだろう?


「目を覚ませ!!ピピ、ポポ、メルカ、アイス!!」


「無駄よ。私の能力は眠りと覚醒、私に眠らされた者は私の好きにできる。また、私に起こされた者は私に都合のいい記憶をねじ込まれて私の味方に付く。」


「お前はどこまで非道なんだ!!」


 遠くで何か言い合っているのだろうが俺には全く聞こえない。


 ただただ、あいつに、取り巻き女と清楚で悪魔的な美女が襲い掛かってる。


 どう見ても悪魔的な美女が敵なのだろうが、その他の女は裏切ったのだろうか?


 俺たちはスタスタとケンザキに駆け寄る。


 すると取り巻きの女たちは操られていると分かった。


 なるほど、だからこいつは攻撃を出せないのか。


「ケンタローパーティーか、こっちに来るな、お前たちではこいつらには勝てない!!」


「ケンザキって俺に対して過小評価しかしないよな。」


 俺は今まで魔王軍幹部を大量に倒している。


 世間からはもっと評価されていいはずなんだ。


「ボブ、あの操られている女達を拘束しておいてくれ。」


「分かった。」


「頼む、その子たちは僕の仲間なんだ。お手柔らかに…」


「人に命を助けてもらえるだけありがたいと思え。俺たちだって命がけなんだよ。と、言いたいところだが、きっとボブなら傷一つつけずにやってくれるさ。あいつ、器用だし。」


 もしかして俺達、今最高にかっこいい登場の仕方してるんじゃね?


 今なら何言ってもかっこよく聞こえそうだ!!


「さあ、幹部だか何だか知らんが、俺達が贅沢するための金になってもらう!!」

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