【1話完結】幼馴染みは、ウルトラヒーロー!!

空豆 空(そらまめくう)

幼馴染みは、ウルトラヒーロー!!


 ひとり静かに泣きながら公園のブランコを漕ぐ。 

 その度にキーキーと響く金属音が、今はどこか心地いい。


「あれ? 叶音カノン? どした?」


 ふいに優しく声を掛けられた。幼なじみの惺義せいぎだ。彼は私の顔を伺いながら、そっと隣のブランコに座った。


「んー? へへっ。なんでもないよ」


「んー、そか。なんでもないのか」


 しばらく流れる沈黙。


 惺義は昔からそう。私が落込んでいる時、理由を問い詰めることはなく、ただそばにいてくれる。


 それがいつも心地よくて、だんだんと私の心は穏やかになって来る。


 ……こうして惺義に心を救わたのは、もう何回目かな。


「……なぁ、叶音? 俺さぁ、子供の頃、ウルトラヒーローになりたかったんだ」


「え? そーいえば星義って、闘いごっことか好きだったね」


 突然の惺義の言葉に、子供の頃が懐かしくなってくすっと笑いながら答えた。


「今もなりたいんだ。ウルトラヒーロー」


「え? それは、特撮ヒーローの俳優になりたいってこと?」


「ちがう。あのさ、お前が泣いてた理由は聞かないけどさ、こうして俺と話してたら、少しくらいは気が紛れるか?」


「え? うん、そうだね。いつもありがと」


 私の答えに、惺義は少しホッとしたような柔らかな笑顔を見せた。


「子供の頃は、悪いやつからお前を守ってやりたかった。今は……こうしてお前が泣いてたら、いつでも駆けつけてやりたいって思う」


 惺義の耳が、少し赤い。


「えと、それはつまり……?」


「だから! 子供の頃からお前のことが好きだった! だから、俺じゃダメか? そういうこと!」


 半分ヤケになるみたいに言う惺義が可愛い。けど、少し考えてから答えた。


「んー、私、ウルトラヒーローって、好きじゃないんだよねー」


「……まじか」


 ガクッと首を垂れる惺義。


「だってね? 1分だけで飛んでっちゃうなんて、寂しすぎるもん。もっと、ずっとがいいよ。それじゃ、ダメ?」


 言いながら、私も少し恥ずかしくなってきて、そっぽを向いた。


「え、マジか! じゃあ、俺、ウザいくらいにそばにいる」


 勢いよくブランコから立ち上がった惺義に、急に抱きすくめられた。


 思いもしなかった惺義の体温に、カーッと顔がほてり出す。


「あ、うそ! 待って!……やっぱりこーゆーのは……、い、一分でもちょっと、長い……かも」


 私の申し出に、


「ヤダ。“もっとずっとがいい” って言ったのは、叶音じゃん。しばらくこのまま抱きしめさせて」


 タイマーの壊れたウルトラヒーローが、私をぎゅっと抱きしめそう言った。



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