6
石畳の上を落ち葉が走り抜けていく。
それをよく見えなくなった目で見送りながら、私はいつも思うのだ。どうして人が亡くなるのは歳の順ではないのか、と。
通い慣れた霊園を歩いていた。私以外には誰もいない。いなくなってしまったのだ。妻も、そして息子も。
手にした花の中には、あの方が好きだというかすみ草を入れてもらった。いつも自分の隣にいない誰かのことを、あの方はまるでかすみ草みたいな存在だと思っていたのかも知れない。
その墓石の前で立ち止まる。
刻まれているのは剣城光朗という名前と、その隣に姓の異なる女性の名前だ。血縁すらない彼女が何故ここに収められているのか。その経緯を思い出すと今でも目頭が熱くなる。
「剣城さんにお願いがあります」
彼女に真実を告げたその一月後に、呼び出された。そこでもう先が長くないことを告げられ、言われたのだ。
――光朗さんの隣に埋めてくれませんか、と。
もう私以外には大した血縁者もいない。反対する者もいないことを告げて快諾すると、あの方は初めて笑顔を見せた。
きっとあちら側でもあの二人は一緒に並び隣同士になって本でも読んでいることだろう。
そう考えると、どうしようもなく二つの涙が滲んで私の目の前が霞んでいった。(了)
わたしの隣はいつも空席 凪司工房 @nagi_nt
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