KOUSEI
@kei06
第1話 プロローグ
「あ、こんなところにいた!」
練習をサボって、芝生に寝転がりながら女子テニス部の練習を見ていると幼馴染兼マネージャーの柚葉がかなり怒った表情で叫ぶ。
「はえーよ、見つけんの」
俺はため息を吐いた。
「あー、そーですか。
じゃあ、相良監督に言っとく。
皇成は明日の紅白戦出ないみたいですって」
「んなこと言ってねぇだろ。」
俺は立ち上がり、ケツをはたく。
「サボってるのが悪い、エースになって私に世界一の夢を見せてくれるんじゃないの?」
リトルで野球を辞めた柚葉に俺は言った。
夢を見ろ柚葉、俺が世界一の夢を見せてやると。
「あぁ、行こうぜ」
俺は柚葉の頭をポンポンと軽く叩き、グラウンドへ歩みを進める。
「で?今日はなんでサボってたの?」
「今日はランニングの日じゃねぇ」
「ホント自分勝手だね」
俺はちゃんとスケジューリングした上でサボっている。
アホみたいに毎日漠然と走ったところで意味はない。
「ただ従って、めちゃくちゃ上手くなるなら従うぜ、俺だって」
ただ従って上手くなるほどこの世界は甘くない。
自分で思考し、練習しなければ意味はない。
あの一流メジャーリーガーも言っていた。
練習は嘘つかないって言葉があるけど、頭使って練習しないと普通に嘘つくよと。
「いいじゃねぇか、神室。
そうでなきゃな。
何も考えないバカほどいらない選手はいねぇ。」
監督を務める相良迅が微笑みながら近づいて来る。
俺はこの人の考えに賛同し、ここ、私立東皇学園に入った。
「あざっす、監督、明日の先発、俺に任せてくれません?
1年VS2、3年でやるんすよね?」
「いいぜ、任せた。
考えて、準備しろよ」
「はい!」
帽子を取り、会釈すると監督は興奮の眼差しを向けて来る。
この人の期待を超えたい。
「やったね」
「あぁ」
俺はストレッチし、投げ込むことにした。
柚葉がストレッチを手伝ってくれる。
「お、皇成投げんのか?」
「あぁ、受けてくれるか?」
「いいぜ、ランニングだりぃし」
「よろ」
「すげぇの頼むぜ」
「あぁ」
俺は同級生捕手で同じく特待生の東條瑠偉とグータッチを交わす。
瑠偉と俺はリトル時代からのチームメイトだ。
瑠偉と俺が負けたことは片手で数えるほどしかない。
「ストレート」
ストレッチを終え、肩を作った俺は瑠偉にストレートの握りを見せる。
柚葉は瑠偉の後ろでガンを持っている。
「明日の試合、爪痕どころじゃねぇ。
全員の記憶に残してやる。
KINGは俺だ!」
俺は思い切り踏み込み、完璧にリリースした。
「ナイスボール、柚葉、何キロ出た?150とかか?」
最高の音を奏で、柚葉に確認する瑠偉。
「153、やったね、記録更新」
「負けないっすよ、先輩」
満面の笑みでガンを見せる柚葉。
俺は隣で投げ込むエースの馬原先輩に宣戦布告する。
馬原先輩は193cmの高身長から最速159km/hのストレートを投げ下ろす、今年のドラ1候補だ。
「やれるもんならやってみな、ルーキー」
「やったりますわ。」
睨む馬原先輩。
俺は睨み返す。
興奮してきたぜ、明日この人を超えられると思うと。
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