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海の見える景観。


「景色いいね」


それぞれ飲み物を買い

一息つく。



当時のカメラは「携帯用写真撮影機」と言えるもの。

現代の様に

写真は手軽でも簡単でもない。

フィルム付きカメラもまだ先だ。


それでもかなり小型のカメラであり。

タイマー付きは大学生が持つにはやや高級。




海が見える崖側の柵辺り。

カメラが安定する位置を3人で探していた。

タイマーで撮ろうとするが

なかなか 上手くいかない。




「写真撮るの?

 シャッター押そうか?」



声を掛けられた。

男性だ。


「お願いします。3人で一緒に撮りたいんです。」


「なかなか上手く撮れなくて」



小綺麗な白いシャツ。

穏やかな表情。

中年男性。

不審さは感じない。



3人は安堵する。

カメラを渡した。



「キレイに撮れたか判らないから」

ナンだから何枚か撮ろう。



中年男性は申し出、

角度を変え。

ポーズを変え。

数枚撮ってもらう。



「ありがとうございました。」



自販機のコーヒーを渡そう。

財布の小銭に目をやったのは

ほんの一瞬。





「あれ、いない」


「今まで いたのに」


穏やかな表情の中年男性。

消えていた。


探すにも 隠れるような場所もない。


そういえば

声を掛けられた時もいきなりだ。


不思議に思ったが

探す術もなく。


そのまま車に乗り、旅を続行した。



その後はいつもと変りなく

3人、

楽しく数日を過ごしていた。

飛び込みの宿も快適そのもの。


「こんな旅も楽しいね」


休みの時には またみんなで旅行しよう。

そう約束した。

3人。

笑顔での帰宅。





次の日。


・・・1人死んだ。

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