305号

涙まみれの独りの蚯蚓ミミズ

土手に上手につぶされている

友達みんなが

はしゃいで 燥いで 燥いで 燥ぐ

どす黒いありになっている

でも それでいい

僕の心は 痛むのだけれど


透明なインクの 透明な君

他人の目にはまらない画布

その 油絵のような景色の画布に

君は泳ぐのだ ただ悠々と

寂しい路地裏の蒲公英たんぽぽになって

綿毛なんかも翔ばしてさ

希望? ─── ああ そうかも知れない

僕の未来は しぼんだけれど


カーテンの向こうのまぶしさなんて

これからもきっと 変わらないのだろう

人の世の優しさと厳しさに

充分な生を与えているの光よ

哀しみの跡のかびを照らして

今度は何を企むのか?

誰もが皆 小さな星の画家になって

静かに 夜を待てればいいのに

この病室のベッドの上

305号の尊厳の中

僕の命は ついえたけれど

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