向かい風
向かい風を飲みながら坂を上ると
人はやがて ふと
いつしか紛れ込んだ鏡の家の
鍵のかかった戸棚の奧で
産声もなく生まれた埃の重なりに
悲しいですか と問うのだって
ねえ いいじゃないか
ありったけの勇気が
もしもそこにあるのなら
空の景色というやつは
見上げるほどに
その輝きを剥がしていくけれど
翼を秘めた僕らのように
あの坂を転がり落ちたりはしない
その真実に
どんな瞳で喰らい付けばいいのか
どんな横顔で通り過ぎればいいのか
君の豊かな囁きは
いつもその答えを探している
「世の中は面白い 遮断器に満ちているから」
そう言ったピエロがいた
そいつは あっという間に
世間の海に消えてしまったようでいて
僕らの頭の中のキャンバスに
きっと じんわりと滲み渡っている
人が辿り着いたのは
こんなにも こんなにも
揺らめきのひしめき合う時代だった
濡れた心で描いた地図の片隅で
誰もがみんな 無言の声を詰まらせる
そう 耳のない時代に僕らは生まれた
それでも 僕らはみんな
歪みながらも奇跡の青い鳥になる
さあ 胸のグラスに
また なみなみと
あの向かい風を もう一杯
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