仔犬王子とお守り役だと思っている私

桃元ナナ

プロローグ

私、リズリーン=ソラティス公爵令嬢と、この国の第一王子ヴィルアント=ファニーズ様の出会いは、なんと赤ちゃんの頃だったらしい。


勿論出会いの記憶になんてない。

ただ物心ついたときには、私の側から離れようとしないヴィル様と共にいたとしか言いようがない。


極度の人見知り(王様が小さい頃そうであったらしい)で、幻の第一王子なんて呼ばれている。

王家の人達みんなだけど、とてつもない美形であり、特にヴィル様はその愛らしい姿から視線を集める存在だった。


しかし同年代の子供たちの集まりでも、彼は私の背中に隠れてしまう。

彼専属の侍女でさえ、彼は不用意に近づかないようだ。


「リズさえ側にいてくれたら、僕は他になにもいらないよ」


5歳の頃。

2人の王宮でのお茶会で、満面の笑顔を浮かべながらヴィル様は呟く。

大好きなお菓子を目の前に、私は浮かれていた気分は一気に下がっていった。


(いや、第一王子だし、いずれこの国に王となるのに、それでは駄目でしょ――)


公爵令嬢として教育を受け始めていた私は、それでは駄目だと思う。

いずれ国王となった時に、人に支えられ愛される存在でなければいけないのだから。


(このままでは駄目だわ――)


私だって、生まれた時から一緒にいるヴィル様と2人のほうが気楽である。

だけど絶対、ヴィル様の将来の為にはならない。


(こうなったら騙してでも、同年代のお茶会に参加しなければ!)


私も5歳にして、この王子のお守り役として目覚めた瞬間だった――。

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