第4話 これから俺は一体どうすれば良いんだ!?
昨日の件があってからというものの、俺はずっと憔悴していた。また、変なトラウマが出来ちまった……今日学校どうしよう。
早朝から俺はそんなことを考えながら、狐色に焼けたパンにバターを塗る。そして、コップにカフェオレの元を入れ、電気ケトルに入ったお湯を注ぐ。
いつものマイルーティーンをすると、俺はバターを塗ったパンを食べ、カフェオレを口でずずと啜りながら、スマホでニュースを見ていた。
「……」
ダメだ、昨日のあの件が頭から離れない……。宝条菫が実は、自分が推していたアイドルだったことがずっと俺の頭から離れない。
「行くか……」
学校に行く支度をした俺は、憂鬱な気分で自分が行くべき場所に向かっていった。トボトボと自転車を押しながら、菫にどういう態度をするべきか悩んでいると、突然、肩をトントンと叩かれた。
ふと、俺は後ろに振り向く。すると、誰かが俺の頬を人差し指でムニッとする。
「わぁ! 引っかかった!」
「あぁなんだお前か、穂状」
「反応薄ッ!」
「スマンが俺今そんな気分じゃないの」
俺のやつれた顔を見た穂状は、心配した様子で「大丈夫? 何かあった?」と言った。俺はそれに対し、昨日あったことを正直に言おうとした。が、そのとき、俺の脳裏に菫のある言葉が過ぎる。
『あ、あの! このことは絶対に誰にも言わないでください!』
「いや特に何もなかった、ただ今日はちょっと調子が悪いだけだ」
「ならいいんだけど」
穂状は心配した顔をしたまま言うと、そのまま俺と穂状は一緒に学校に行くことなった。
今更気づいた事なんだが、改めて穂状を見ると、彼女の顔は幼稚園のときから何も変わってないなと感じた。子供っぽさが残った可愛い顔をしている。
「わ、わたし顔に何か付いてる?」
ずっと彼女の顔を見ていたせいか、穂状は少し照れた様子で髪を耳にかける。何を考えてるんだ俺は……。
「す、すまん」
「……なんで謝んの? 別にわたし嫌じゃないから」
「そ、そうか」
「あ、そういえば私、神島がどこ中から来たのか聞くの忘れてた」
穂状は拳を手で叩いて言うと、俺の顔をのぞき込むように見てくる。近いですよー、ホントに近いですよー、これ俺じゃなかったら直ぐに勘違いして好きになっちゃパターンだからねー。
「俺か……俺は
「へぇー、スミミと一緒の中学だったんだー。あ、てことは中学の時にフラれたんだね……可哀想に……」
「——うるせ」
そんな会話をしていると、俺たちはあっという間に学校に到着した。到着するなり、穂状は早速自分の友達を見つけたのか、俺に「先に行くね」とだけ言って、友達の方に向かっていった。一人残された俺は自転車を駐輪場に置きに行った。
※
駐輪場に自転車を置き、学校に入ろうとした時。
「「あ」」
なんということでしょう、宝条菫さんと出くわしたではありませんか。俺と宝条は目が合ったままそこから動こうとはしなかった。
「あ、えっとなんか昨日はごめん」
「謝るのは私の方、助けてもらったにも関わらずあの場から逃げちゃって……本当にごめんなさい」
彼女は俺に向けて頭を下げる。
「ま、まぁここで話すのもアレだから、教室で話さないか?」
「それもそうだね……」
※
俺と宝条は無言の沈黙のまま教室に入ると、クラスにいたクラスメイトが一気に宝条に集まる。そして、質問攻めにあう菫、俺はそんな人集りから脱出する。
「相変わらずの人気ぶりだな」
「だよね〜、もうスミミはこのクラスのマドンナだもん」
俺の元に近寄ってきた穂状は言う。まぁ穂状の言い分には納得できる、なんせ宝条は顔が良いし、しかもオマケに性格も美人ときた、ホント最強かよ。
「おいお前ら、もうすぐでチャイムが鳴るから座れー」
教室に入ってきた教師は言って、生徒達は自分の座席に座った。そして、先生から告げられる今日の一日の日程。
しかし俺の頭には、菫がスミスミだという事だけが頭に残っていて、先生の話なんて聞き流していた。
朝のホームルームが終わり、俺は宝条の元へ歩み寄る。それを見た彼女は何かを察したのか、こくりと頷いた。そして、俺と宝条は教室を出て行った。
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