俺の推しアイドルがクラスのマドンナだったんだが、どうすれば良いんだ!?
沢田美
第1話 俺の青春が終わったんだが、どうすれば良いんだ!?
中二の春、俺は告白をした。思いを寄せていた人に。春風で靡く教室のカーテン、オレンジ色に輝く夕日が美しい。その夕焼けに照らされる彼女の顔はとても可愛い。数分の沈黙が続くと、彼女は笑った。
「ごめんなさい、私今恋愛とか興味なくて、本当にごめんなさい……あ、あとこの際もう私に一切近づかないでね、周りに変な勘違いされると嫌だから」
「へ? それってどういう……」
状況理解が出来てない彼は言うと、笑顔を以外を見せない彼女は教室を出る際に、
「そのままの意味だよ、約束だよ」
と言って教室を出て行った。
こうやって俺の青い春は終わった。無残に散っていく桜の花びら。俺はその散っていく花びらと自分の姿を重ねていた。
それからというもの俺の学校生活は終わった。周りからは『アイツフラれたらしいよ』という変なレッテルが貼られ、元々友達がいなかった俺はクラスから孤立していった。いやそれは元々か。
もちろん彼女にもそれ以来近づかなくなった。会う勇気すらなかった、彼女との約束もあったから。いやどちらかと言うとトラウマがあったからだ。俺はそのトラウマのせいで心の中で「一生恋はしない」と誓ったよ。
そんな日々を過ごしていったら気づけば俺は、不登校になっていた。周りからのレッテルに負け、学校に居づらくなったお陰で俺は中三の始めまで自宅警備員をしていた。
まぁ家に引きこもってからはほぼ自由。俺は暇だっため、よく動画サイトを眺めていた。そんな動画サイトで俺はあるアイドルと出会った。
「仮面アイドル」とかいうアイドルだった。顔こそは目しか見えないけれども、その圧倒的な綺麗なスタイルと、可愛らしい声に俺は興味をそそられた。
その数ヶ月後、俺は立派なアイドルオタクになっていた。そう自宅警備員から生粋のアイドルオタクに進化したのだ。
それからというもの俺は、仮面アイドルの配信ライブには毎回必ず行き、気づいた時には好きなアイドルのファン会員証を持っていた。
ちなみに言っとくが俺の推しアイドルは「スミスミ」という仮面アイドルのリーダーを担っているアイドルだ。もちろん俺はそのアイドルのグッズは全部揃えているつもりだ。
そして気づけば俺のアイドルオタクとしての生活は終わりを迎えていた。そう受験勉強の時期になったのだ! 最悪だネ!
自宅警備員をやめて中三になってからは、受験勉強をするだけで精一杯で、この時は学校の変なレッテルなんて気にしなくて良かった。
が、受験勉強も終われば話は変わってくる。無事は俺は受験した高校には受かった。が、何の偶然なのか知らんが、俺が受験した高校の入学式に彼女がいた。ちくしょう! ここの高校結構頭良い高校なんだぞ!? せっかく過去と決別するために苦労して入ったのに。
この際だから名前は言っておこう彼女の名は「
ま、同じ高校でも同じクラスにならなければ俺的には良いんだけど……。と思っていた時期もありましたとさ。
うちの高校はちとばかり特殊だった。普通入学式が始まる前に自分のクラスなどが分かる筈なのだが、何故か俺のいる高校は入学式が終わってから自分のクラスが分かるという謎システム。
なんやかんや入学式が終わり、とうとう自分のクラスを確認する時が来た。ふむふむ、一年五組だな行くか。
自分の組だけを確認した俺はルンルンとした気分で、自分のクラスに着くと教室の戸を開けた。
俺が最初か……でも俺の予想だとあの女はいない!
ホッと息を吐くと、そのまま自分の席を探し、俺は窓際の座席に座った。それから、ある程度時間が経ち、だんだんと教室にクラスメイトが入ってくる。
その時だった。
「お!
どこかで聞き覚えのある声。その声はとても懐かしく、幼稚園でさよならした幼なじみの
俺は一瞬焦った様子で、声の方向へ顔を向ける。そこにいたのは、たしかに幼稚園でさよならした穂状瑠衣のような女の子がいた。
「えっと……誰だっけ?」
俺はわざと知らないフリをして彼女に言った。すると、穂状のような女の子はムーっとして、
「はぁ? 忘れるとかマジないわー! 私だよ! 幼稚園でよく遊んでた穂状瑠衣だよ! 覚えてないかな?」
覚えてるよそれくらい、その変わらない綺麗な茶髪と、煌びやかとしたキラキラとした目、たしかにその雰囲気は穂状瑠衣だった。
あ、でも、少し変わってるところがあったな、髪型は短髪からツインテールになってるし……あと胸が結構デカくなって——。
そのとき、俺は自分のダメダメな理性を取り戻す為に、自分の両頬をパシンと叩いた。
「え、何やってんの!? ちょっといきなりそれするとか引くわー」
「いや何故か理性が飛びそうになってしまって」
「余計意味わからないから引くんだけど……」
「気にすんな」
「余計気にするんだけど!」
そんな会話をしていると、教室の戸が開き、担任の教師と思われる男が入ってくる。その教師を見た瑠衣は少し残念そうな顔をする。
「イケメンではないかー」
「いやイケメンを求めんな」
「お前ら席に座れー」
男の教師がそう言うと、生徒たちは自分の席に座る。そして、それを見計らったように学校のチャイムが鳴った。
しかし俺は不思議に感じていた、それは自分の隣の窓際の人が学校に来ていなかったのだ。
まぁ、そんなことを気にしながらも、俺は先生の自己紹介や、生徒一人一人の自己紹介を聞いていた。そして俺の番が来た。ま、俺はそういうのは慣れてるからすぐ終わらせる。
「ぼ、ぼくは、か、神島!
ふ、我ながら完璧な自己紹介だ、ほら微かに笑い声が聞こえた。こうして俺の自己紹介が終わったその時だった。
「すいません! 遅れました!」
突然、教室の戸が開いた。誰もが急に開いた教室の扉の方へ視線を向けた。みんながそこにいた者に見惚れ、俺はそこにいた者に絶望した。
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