交流
今日のお客様は獣人さん。ネコっぽい人とイヌっぽい人でたぶんカップル。ドリンクをカフェの方で飲み終えてから猫エリアで過ごしている。どちらが猫たちにモテるか勝負をしている。
ネコっぽい方はおもちゃを巧みにあやつり、元気いっぱいなタム、ハチ、ヒメを中心に遊んでいる。
一方イヌっぽい方は日なたに寝転がり、大人しくのんびりなタン、しずか、ぶちょさんたちがくっついて寝ている。
隣の席には先日来店された有翼族ハーピーのハルさんがいる。相変わらず猫と仲がいいけど足をずっとかまれている。本人はくすぐったいと笑いながら言っているけど、両足に5匹ずつ集まっているのでさすがに危ないと思い止めたところ大丈夫だと断られてしまった。その様子をみたカップルは関係のないハルさんを優勝者と崇めている。ハルさんの猫愛は半端ない。
カップルとハルさんが仲良くなって猫たちと遊んでいるのをカウンターの中からハチくんと一緒に眺める。デンさんはテラスで寝ている。
「こんにちはー入れますかー?」
そう言って入ってきたのは小さい子二人とお父さん。何度か来店してくれている。
「こんにちは。あの。こちらって子供だけでも入れますか?急に仕事が入ってしまって少し出かけることになってしまったのです」
「そうですか。原則お子様のみでの入店はお断りしています。ですが何度もきていただいていて様子を見た中では問題は起きにくそうなので大丈夫ですよ。ただ、なにかありましたら猫エリアからは出ていただくことがありますのでよろしくお願いいたします」
「わかりました。ふたりとも。お店の人の言うことをちゃんと聞くんだよ。いつも通り猫ちゃんの様にさせるんだよ」
「はーい! 自分から追いかけず来てもらえるように頑張る!」
元気よく返事をしてから猫エリアへはゆっくりと入っていった。
「すみません。よろしくお願いいたします。早めに戻りますので」
そう言ってお父さんは仕事へと向かった。見送ったあと、二人のようすを見る。ハルさんに呼ばれているところだった。ハルさんの足を甘噛している猫たちをなでるように誘ってくれたみたい。二人は嬉しそうに猫たちをなでている。
「お姉さん。足痛くないの?」
「大丈夫よ。慣れてあるし、実は持続性の回復魔法かけているの。だからかまれてもすぐ治るの。でもマネしたらダメだからね?」
「大丈夫! マネなんてできっこないから」
「ねー」
マネはしてはいけないけど。なるほどそんなカラクリがあるわけですね。やはり魔法は便利。持続性の治癒魔法か……。誰か詳しい人いるかな?今度ギルド行ったときにでも聞いてみよう
。
お客様の様子を見てみる。カップルは変わらず元気な猫たちと遊んでいる。ハルさんはかまれたままでうとうと。お子さまたちもいつの間にか猫と一緒にハルさんにくっついて寝ている。申し訳ないと思い小声で
(ハルさん。ごめんなさいね。大丈夫?)
(うーん。大丈夫ー。気持ちいいからこのまま寝ちゃいそー)
しばらくすると子供たちのお父さんが来店した。
「ごめんなさい。遅くなってしまいました」
「全然大丈夫ですよ。それに」
猫エリアでハルさんに懐いてぐっすり寝ている二人を指差す。
「ははは。猫と優しい方に巡り会えて幸せそうだ。ありがとうございます」
「いえいえ。中へ入りますか?」
それじゃあと中へ入って二人を起こしている。ハルさんに何度も頭を下げてお礼をして、今度はみんなで仲良く話しているみたい。猫と人の縁だけではなく人と人の縁も繋げられるといいなと思う。
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