ナナさんの保護猫活動

ある日のこと、休憩時間にコーヒーを飲んでいたら買い物に出ていたナナさんが慌てた様子でやってきた。


「オーナー大変です!」


 ナナさんの焦った表情を見るとただ事ではないと感じてしまう。


「先程、帰る道すがらにこの子が倒れていたんです」


 腕の中にはぐったりした猫さん。たしかにこれは危険そう。猫さんを預かりバックヤードに連れて行く。そこで簡単な診察を始める。怪我の具合、弱っている部分。病気が原因なのか。ひと通り調べる。


 この世界には様々な魔法がある。以前、指を切ってしまったときに慌てて押さえていると痛みが引いてなぜか治ってしまった。治療院で話を聞くとそういう魔法が使える人は稀にいるらしい。それは生まれ持ったものというわけでもなさそう。でも軽傷のときだけで大きな怪我や病気などはあまり効果がないのでその場合はちゃんと治癒師に診てもらってほしいと言われた。


 少し治療をしたのだがあまり効果は見られない。すぐに治療院へと向かう。診察と治療をしてもらったけど思いのほかすぐ良くなった。さすが高位の治癒魔法って便利だ。体力の回復もすぐできそうなので入院はせずお店で休んでもらうことにした。


 お店に着くと猫たちがその子の元に集まり元気づけているように見えた。猫同士のケンカとか大丈夫そうなのでみんなと一緒にいてもらおう。


そして次の日、昨日の猫ちゃんの様子をみたけどすっかりなじんでいた。しかしどことなくそわそわしている様子があった。休憩時間にコーヒーを飲んでいると買い物に出ていたナナさんが慌てた様子でやってきた。


「オーナー大変です!」


ナナさんの焦った様子で帰ってきた。昨日もこんな感じのことがあったような……


「どうかしましたか?」


「先程、帰る道すがらこの子がうずくまっていたんです」


 彼女は布を抱えていた。その布を開くとその中には小さな子猫がいた。目は閉じられたままで弱々しく呼吸をしていた。生後二週間かどうか。まず体を温めてからミルクを飲ませないと。


「このままだと死んじゃいますよね?」


 ナナさんは今にも泣き出しそうな顔をしながら訴えてきた。とりあえず体を温め。温かいミルクを飲ませる。すぐに飲み始めたから一安心。


「大丈夫よ。そこまで弱っていないから。昨日の子よりは大丈夫よ」


「二日連続ですみません。ありがとうございます」


 ナナさんのほっとした表情を見たあと子猫を詳しく観察する。パッと見た感じは大丈夫だったけど……。ひと通り触診などをする。昨日の子は治療院へ行ったけど……。大丈夫そう。この子猫は大したこともなくすぐに元気になった。そしてナナさんの足元へと走っていく。


「ナナさんにもう懐いちゃいましたね」


「よかったぁ。で、この子の親は……。この毛色や毛並み……。まさかとは思いますけど……」


 子猫を猫エリアへ連れて行き昨日の猫ちゃんと合わせるとお互いを確認するかのように匂いをかぎ合いすぐ親子と気づいたみたいでお互いにスリスリし合っていた。


 話を聞くと、昨日の保護したときになにか気配は感じたものの猫の体調が良くなかったため後ろ髪を引かれる思いでその場を去ったのだが、やはり気になったので今日訪れて子猫を見つけたらしい。他にもいないか探したがこの子だけだったみたい。そして次の日から母猫とその子猫はナナさんの後をついてまわるようになった。


「ふふっ、本当に仲良しだね」


 ナナさんは幸せそうに猫たちと遊んでいる。その様子を眺めながらコーヒーを飲む。

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