第15話 授かったスキルは凡庸で⑮

「なんですって!」


カイは動揺し思わず、大きな声を出す。

こんな時こそ落ち着かないと思い、深呼吸をしながら考え始める


(迷子は論外として、家出?・・・はありうるけど、昨日の様子だとぼくに会いに来ないでいなくなるとは思えないし、、、となると誘拐!?)


「マリーは町長だけで探しているんですか!?」


カイが町長に問いかける。


「いや、うちの者たちにも探させている」


他の町の町長は知らないがこの町の町長なら動かせる人間は数十人はいる。それで見つからないとなると・・・やはり誘拐の可能性が高いかもしれない。


「マリーは誘拐されたかもしれません」


「誘拐だと!?」


町長は家出だと思っていたのだろう。カイの言葉に激しく反応する


「確かに私の家はこの町の中では裕福な方に入るが、こんな田舎町の町長の娘を誘拐してもメリットは余りないはずだが・・・」


誘拐だと信じたくないのだろう。町長は否定材料を探す


「そのご様子だとまだ耳に入ってないのですね」


「何がだ?・・・まさか、ランク6とランク5のスキルを授かったのはマリーだったのか」


町長はカイの言葉から結論に至る。さすがに高ランクのスキルを授かった子どもの情報は入っていたがそれがマリーだとは知らなかったようだ


「はい。その通りです」


カイはうなづく


「なんということだ。それ自体は名誉なことではあるが、、、そうなると誘拐の可能性は充分ありうる」


人身売買は違法とされているが、水面下では起こっているという話は子供のカイにも聞こえてくる。ランクが高い子どもをスキルを使いこなす前に誘拐し、裏ルートで売買することで利益を得ているのだ。人族史上最高のランクのスキルを授かったマリーはまさに格好の標的となるだろう


「とにかく僕も探しに行きます!」


嫌な予感がどんどんと膨らむ。カイは居てもたってもいられず、マリーを探しにいく用意をする。


「ありがとう。見つけたらこれを使ってくれ」


町長はカイに何かを手渡す。親指程の蒼い石だ。


「これは・・・?」


「念石と呼ばれるものだ。これは粗悪品なので念話はできないが、強く握って私の名前を呼んでくれれば君たちの位置が私に伝わるくらいのことはできる」


「なるほど。分かりました。それではまた!」


挨拶もそこそこにカイは家を飛び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る