虹色戦争

玻璃青丹

第1話


 敵がやってくる気配がする。剣を握りしめ、木陰に隠れる。

向こうから走る馬に跨り走る赤色の鎧を纏った兵士。こちらには気づいていない。息を飲み、近くを通ろうとした兵士に向かって剣を投げた。剣は兵士の頭を直撃し、赤い血をまき散らす。驚いた馬から落とされた死体。頭に刺さった剣を抜こうと手を伸ばすと、背後から再び敵の気配を感じた。振り返ると同じように馬に乗った兵士が二人。剣を掲げて叫んでいる。


「貴様!黒の兵士だな!?」


怒りを露にし、馬ごと体当たりを試みようとした。しかし、兵士が剣を振り下ろす前に兵士たちの身体は宙へと投げ飛ばされていた。

兵士たちの下には、黒い影を纏う牛の頭蓋骨。大きな腕を振り回し、宙を飛んでいた兵士の身体を地面に叩きつけた。原型も残されず地面は赤く染まる。しかし、その赤は徐々に黒く染まっていき、彼らの流した赤い血は、黒い大地へと変色した。

剣を収め、息を吐く。


「今日はここまでか」


それだけ言い残し、近場にいる馬の元へと戻っていく。

黒い馬は主人の姿を見るや嬉しそうに鼻息を立てている。頭を軽く撫で、馬に跨り走り出す。

戦いは、終わらない。これは永遠に続くと思われている大戦争。彼も、その戦争の中でしか生きられない兵士の一人。



第一章 [DUREÐÐU] 始まり



この世界は、戦いのみで構成されている。誰が創ったかなんてとうの昔に忘れ去られていた。

自分の国の領地は広げなければならない。それだけの意識だけで皆が戦いを続けていた。何度も殺されて、何度も生き返り、何度も、何度も、何度も。

辛くもなければ苦しくない。当たり前のことだった。この世界で生きるには戦い続けるしかなかった。誰かが言ったわけでなく、そうなのだと本能が告げていた。


それぞれの国の王たちには色の名前を付けられている。

青き領地の王は「青の王」。

赤き領地の王は「赤の王」。

緑の領地の王は「緑の王」。

黄金の領地の王は「黄金の王」

黒き領地の王は「黒の王」。

そして、全てが謎に包まれている白色の大地の王は「白の王」。


王たちは互いに殺しあうために領土を奪おうと躍起になっていた。何故、何が原因で、等と言った理由など王たちには存在しない。彼らはただ、「相手を殺す」ことのみで生きていたのだから。やがて彼らはお互いの領地を奪い合うために戦いを繰り広げていたが、未だ大きな動きもなく、毎日必ず一人、二人、三人、それ以上の数が死んでいる。

この戦いにいつか終止符があれば。とそんな愚かなことを誰も願ったことがない。

ここは、そんな世界だと、皆が当たり前の世界だと、そう信じていた。


あの出会いがなければ。

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