子供たちによる捕獲作戦? 〜side:リーベルティ〜

 

 キースお兄ちゃんに、悪魔を捕まえるゲームだと言われて、僕たちは速攻で部屋から飛び出した。体が小さいせいで足も短いから、本来の大きさに戻ると、ちょっと走っただけでかなりの距離を走れた。途中で見かけた使用人やメイドは端っこに寄っていたから、多分キースお兄ちゃんが何かしたのだろう。横を通る時はちょっとスピードを落としつつ、僕の背中に立っているスリアルお兄ちゃんに話しかけた。

 

「お兄ちゃんに頼られちゃったね。」

 

「珍しいよね〜。でも、頼られたからには、真剣にやらないとだ。」

 

「もちろんだよ。」

 

 話しながら魔力探知と鼻で、知らない魔力と匂いを探す。スリアルお兄ちゃんも、おそらく匂いを探しているはずだ。スンと鼻を鳴らす音がたまに聞こえた。

 

「少なくともここじゃないよね。」

 

「応接室って言ってたから、この下の階じゃない?」

 

「そういえば言ってたね。降りよっか。」

 

 近くにあった階段を数段ずつ飛ばして降りると、知らない匂いと魔力をうっすらと感じた。

 

「いる。」

 

 スリアルお兄ちゃんも気づいたようで、俺の背中から離れて自分で飛び始めた。それとほぼ同じタイミングで、応接室の向かいにある部屋から見た目だけは知っている男が出てきた。

 

「あれ、ミーゼンさん?」

 

 ミーゼンとは、王宮の至るものを管理する総支配人、セバスの補佐官だ。王宮にいてもおかしくはない。

 

「おや。君たちか。どうかしたのかな?」

 

 が、本当にミーゼンさんなら、の話だ。ミーゼンさんは絶対に、俺たちには敬語を使う。最強種の怒りを買いたくないのもそうかもしれないけど、1番は相手に敬意を表しているからだ。王族はもちろん、貴族や家族、友人にしても、敬語を取ることは殆どないのだ。キースお兄ちゃんが「ガチの英国紳士じゃん!」と言っていた。だから、目の前にいる敬語で話さないミーゼンさんは、俺たちの知るミーゼンさんではないと言うこと。まぁ、そんなこと考えなくても、魔力感知がもうすでにミーゼンさんじゃないって言ってるけどさ。

 

「僕たちはキースお兄ちゃんたちと追いかけっこして遊んでるんだ。僕たちが鬼なんだよ。」

 

 んー、どう捕まえようかな。遊ぶのもいいけど、あんまり長いと、お兄ちゃんにその場で待機を命じられた執事やメイドたちのお仕事が進まない。いくら国王が許しているとは言え、仕事を進められないのは申し訳ない。とりあえず、一旦相手に合わせようと思った。スリアルお兄ちゃんも僕の意図に気付いたみたいで、僕をチラッと見てミーゼンさんではないミーゼンさんをじっと見つめた。隙を探っているのだろう。

 

「そうだったのか。では、私はお邪魔してしまったね。」

 

 ここでいなくなってしまう、と、くれば、ネタバラシだな。

 

「ううん。そんなことないよ。僕たちが探してるのは、ミーゼンさんに化けた悪魔だからね。」

 

「なっ、くそっ!」

 

 バレていないと思っている悪魔に向けて、ニヤリと笑うとそれを見た悪魔が慌てた様子で逃げ出そうとした。

 

「逃がすか!」

 

「ぐはっ、」

 

 もちろん、その行動など予測していたスリアルお兄ちゃんが、高速飛行で悪魔の背中に頭から突っ込んだ。あーあ、お兄ちゃんの頭、大理石の壁ですら砕くし、なんならお兄ちゃんは無傷だ。だから、いくら防御力に自信のある悪魔であったとしても、勢いつけたお兄ちゃんの突進ならダメージを負う。

 

「僕たちが中級以下の悪魔ごとき、みすみす逃すなんてありえないんだけど。」

 

 悪魔を逃さないように、お兄ちゃんが大きなフェンリルの姿に擬態して、悪魔を全体重で踏みつけていた。その悪魔は、キースお兄ちゃんが捕まえた悪魔と比べて、ほんの少し強いぐらいだから、僕たちが遅れをとるわけがない。

 

「リーベルティ、こいつ気絶してるぞ?」

 

 お兄ちゃんに言われて、顔を覗き込んで見るけど、本当に気絶していた。あー、多分、頭打ちつけて、脳震盪起こしたのかな? それにしては弱いけど。

 

「よっわ……」

 

「それには同意するけどね。さ、運んじゃおう。」 

 

「はーい。」

 

 

 

 

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