冒険者
あれから、俺に婚約者ができたことは周知され、お相手の名前と顔は、相手が10歳になってから公表すると発表。理由は、小さい頃の婚約は解消されることが多いからだ。だから10歳になるまでは、発表や婚約パーティはしない。王宮に通う人たちは知ってるだろうけど、そう言う理由から外部に流す人はいないだろう。
そんなことがありつつ、俺とシーラは直接会ったり文通を通して仲を深めた。そして、また二年。俺とセスは12歳、シーラは9歳となった。7歳にしては大人びていたシーラはさらに大人っぽくなり、今では13歳が習う範囲の勉強もし始めた。もちろん、王妃教育もだ。本当は婚約発表した日以降からなんだけど、シーラが意欲的でゴルドールも母上も負けた。ルナもシーラをお姉様と慕って一緒に勉強しているのを見た。
ちなみにこれは余談だけど、ウェスが王子教育を逃げ出してるらしいという情報を入手した日もあったんだけど、そういう時は俺が代わりにおど……優しく教えてあげることにした。言っても聞かないから、拘そk……椅子に座らせらせるように交渉して、家庭教師の代わりに、ね。
それ以降大人しく話を聞くようになったらしいし、テストもいい点取ってるみたいだから、安心だね! (セス:どう考えても、キース様に教わるより家庭教師に教わった方がまだマシだと学んだからでしょう……悪い点取ったら後が怖いですし……)
さて、シーラも母上から気に入られてるみたいだし、不安材料は全くない。ので、俺は父上と母上の許可を得た上で、冒険者登録をしにきた。母上は心配そうにしていたけど、無理はしても無茶しないと誓った。複雑そうな顔をしてはいても、止められないと気づいて見送ってくれた。
セスとセフィ、オーレンという
「あら。キースくんとセスくん。こんにちは。」
ここ数年通い続けたおかげで、冒険者ギルドの職員たちに顔を覚えられた。今日は顔馴染みの受付嬢、ミリアさんが、俺たちに気づいて笑顔で挨拶してきた。
「こんにちは、ミリアさん。今日はギルドに登録しに来ました。」
「ふふ、わかったわ。じゃあここに必要事項を記入してね。」
俺たちが子供のくせに強いってことと、12歳になったら登録する話は知っていたからすぐに一枚の紙を渡された。ここには名前と年齢、種族、使える魔法、スキルを書くようだ。
王族が冒険者登録なんて普通はおかしいから本名じゃなくて、愛称のキースと既に使えると知られている魔法を書いた。スキルは、鑑定と剣術があることだけ書いた。あとは必要に応じて、だな。
セスも同じようにして、名前と魔法は書いて、スキルは剣術と危険察知と、気配察知だけだ。お互い隠し事が多いな。
冒険者登録のとき、真偽判定はされない。俺たちみたいに、お忍び貴族が冒険者登録、なんてことがあるらしいから名前はどうでもいいらしい。種族もそこまで重要視されない。使える魔法とスキルもあるならパーティが組みやすいってだけで、全く無くても実践で身につければいいだけの話だ。最初のランクは薬草摘みとか危険度が低いものばっかりだし、上のランクに上がる時は昇格試験だってあるから、実力がないと簡単にはいかない。実力があれば簡単ってことだが。
「はい。ありがとうございます。お二人でしたら、二つ上のランクから始めていただいて構わないとギルドマスターからのお達しです。」
冒険者にはランクがあり、低い方からGからA、S、SS、SSSランクの十段階あり、魔物にも同じランクがつけられており、危険度によって十段階のどれかの評価がある。
基本的に冒険者は、ソロで行動する時は同じランクの依頼書を、パーティーで行動する時はパーティーメンバーの数や適性によって高ランクの依頼書も受けられる。|(例えば、Cランクが二人とDランクが二人だった時、Bランクの依頼が受けられる。ただし、依頼書のランクが高ければ高いほど、パーティーを組んでいても失敗する可能性はあるので、あまり推奨されない。)
俺たちは、ギルドマスターと面識があってある程度は実力があると知られてるから、Gランクの2個上、Eランクから始まるらしい。ちなみにセフィとオーレンは、Cランクである。真面目にランクを上げてない二人でさえCランクなので、上げたら多分 Aランクは行く。
(登録した理由はあまりにも冒険者ギルドに通いまくってる上にバカスカ高ランクの魔物を倒しちゃうから解体費用が嵩むため。登録すれば解体費用は2割引きになり、多少は抑えられるから。あと、手続きがめんどくさいんだと。)
ということで、俺たちはAランクの魔物、ブーストカウの討伐だ。ブーストカウは、どこの肉でも脂が乗っている高級肉だ。前世でいう霜降り肉かな。美味しい肉なのに、一個体はCランクほどだが、群れで行動するためAランクに認定されている魔物だ。そのため、討伐してくれる人が少なく、報酬は高くなっている。
報酬額に目が眩んだわけじゃない。ギルド側から、ブーストカウの肉が少なくなっていて、いつも頼んでるAランクパーティーは他国に行っているため引き受けられそうな人がいないそうだ。そこで、俺たち二人……というより、セフィとオーレン含めた四人なら大丈夫だろうという判断から俺たちにお鉢が回ってきた。
俺たちの実力を詳しく知らないはずなのに、四人でAランクの依頼を達成できるだろうと判断したギルマスの洞察力が怖いと思ったよね……
俺たちは王都から南東に少し離れた場所。ブーストカウの生息地である草原地帯へときた。
「さて。ブーストカウはっと……」
オーレンが小高い丘に登って辺りを見回した。しかし、すぐに両腕を交差させてバッテンを作った。見える範囲にはいないということか。
「確かこの草原にいるはずですが……」
「もう少し奥かな? めんどくさいから索敵魔法使っちゃうね。」
「それもそうですね。よろしくお願いします。」
時間短縮と探すのがめんどくさいので、索敵魔法を使うことにした。セフィもセスも賛成のようなので、すぐに自分の魔力を薄く周囲に広げて索敵を開始した。前方七キロ先に牛型の生き物がいた。
「見つけた。このまま七キロ先。」
「相変わらず殿下は見つけるのが早いですねぇー。」
戻ってきていたオーレンが顔を引き攣らせてつぶやいた。
「これでも練習したからな。」
「一発で出来たら人間かを疑います。」
「失礼だな。3回目で出来たけど。」
「規格外すぎますね……ま、便利でいいですけど。」
オーレンと軽口を言い合いつつ、索敵魔法で見つけた場所に向かう。しばらく歩き続けて、ブーストカウの群れを見つけた。
「さて、じゃあ、何匹狩れるかな。」
四人で各々ブーストカウを狩っていくことにした。その方がレベルが上がるし、時間効率もいい。1人1秒で最低1匹、計4匹は狩れるのだから。
「油断しないでくださいね。」
「セスもな。いくぞ!」
身長に合わせた剣を鞘から抜き、こちらに突進してこようとしているブーストカウと睨み合った。俺はギリギリまだ引きつけてから横に回避し、その流れでブーストカウの首を落とした。
「よし。次!」
同じように突進してこようとした二匹目のブーストカウは、俺から接近して首を落とし、味方諸共吹っ飛ばそうとした三匹目の突進をジャンプして回避。見えなくなった俺を探している間に、氷魔法、フローズンランスを打ち込んだ。倒れるのを見るまえに、四匹目が走ってきたので、横に避けて首を切り落とす。とにかく肉が傷つかないように首を落として落として落としまくる。ただ討伐すればいいわけじゃないから、ブーストカウの討伐はめんどくさいと思われがちだ。実際めんどくさいしね。
全滅させると肉が無くなるから、ある程度は残すつもりだったが、逃げていったので討伐した分だけ魔法袋に収納した。
目的は達成したので、ついでにGランクの依頼となってる薬草を採集しながらギルドに戻った。解体を頼んでいる間に、ステータスを確認した。
名前:グラキエス・ウィン・アイスリア
年齢:12歳
種族:人間
職業:王族 Eランク冒険者
レベル:50
HP 5180/5180
MP 10275/10560
能力値:筋力325 敏捷280 守備407 器用さ598 幸運値1500 魅力500
適正魔法属性:全属性
スキル:鑑定(上級)、隠蔽(上級)、改竄|(初級)
完全記憶(特級)、能力値上昇(特級)、並列思考(上級)、洞察力強化|(中級)、気配察知|(中級)、危険察知|(中級)
魔法創造(特級)、火魔法|(上級)、水魔法|(上級)、風魔法|(上級)、土魔法|(上級)、光魔法|(上級)、闇魔法|(上級)、索敵魔法|(中級)
炎魔法|(中級)、氷魔法|(特級)、嵐魔法|(中級)、大地魔法|(中級)、雷魔法|(中級)、重力魔法|(初級)、
武術技能|(特級)、剣術|(上級)、弓術|(中級)、槍術|(中級)、馬術|(中級)、柔術|(初級)
耐性:毒耐性|(中級)、魅了耐性|(中級)、麻痺耐性|(初級)、石化耐性|(初級)
称号:[転生者]、受け入れられし者、奪う者
その他:アイスリア王国 第一王子 王位継承権第一位
※[]内は特級鑑定スキルでも見られない。高レベルの完全鑑定魔眼持ちでやっと文字化けする。
名前:セスタ・ガーディーアン
年齢:12歳
種族:人間
職業:側近兼護衛 Eランク冒険者
レベル:49
HP 400/400
MP 980/980
能力値:筋力125 敏捷204 守備150 器用さ300 幸運値400 魅力380
適正魔法属性:炎、氷、風
スキル: 魔法解析(中級)、危険察知(中級)、気配察知|(中級)
火魔法|(上級)、水魔法|(上級)、風魔法|(上級)、土魔法|(初級)、闇魔法|(初級)
炎魔法|(上級)、氷魔法|(上級)
剣術|(上級)、弓術|(初級)、槍術|(初級)、柔術|(初級)、馬術|(初級)
称号: 第一王子の友人兼側近護衛
その他:アイスリア王国ガーディーアン侯爵家長男
あれ? セスって魔力量以外もチートだったっけ? 俺に付き合ってきたからかな?
「お互いなかなか規格外になったなぁ。」
「俺がこうなったのは明らかにあなたのせいだ。」
「セスだってノリノリだったくせに……」
「それは否定しないが、それとこれとは別の話だ。」
「それにしても、セスはタメ口が板についてきたな!」
「冒険者をやるにあたって必須だから仕方ないでしょう。キースとは違うので、慣れるまで時間がかかったけど。」
「俺はそっちの方が好きだぜ!」
「でしょうね。」
冒険者になると敬語で話さない方がいいと言われていて、セスはしばらく抜けなかったけど、最近は慣れてきたようで言い直すことがなくなった。二人っきりでもよろしく! って言ったら呆れた顔をして同意してくれた。ちなみに、オーレンとセフィはすぐに順応した。
「私たちからしたら、これ以上強くなられると無茶しないか心配なんだがな……」
セフィが頭を抱えてため息をついた。
「大丈夫だよ。死ぬようなことにはならないさ。俺だって死にたくねぇし。死んだらシーラを泣かせる上に後を追われそうだしな。」
「えぇ。あの子はすでにキース無くしては生きていけなくなりましたから。あなたのためなら喜んで死にに行くような子ですよ。」
「俺もだからそれは嬉しい!」
「似たもの同士でお似合いだ。」
「いいなー、俺も彼女欲しい〜。」
「オーレンかっこいいのになんで彼女いないの?」
オーレンは前世でいうところの爽やかイケメンスポーツトレーナーって感じなのに、彼女とか婚約者の噂を全く聞かない。
「魔法師団ならともかく、騎士団ですよ? それだけでお察しだ……」
「「「あー……」」」
つまり、忙しいのに、魔法師団と比べて女がいないから出会いも紹介してくれそうな女もいない、と。前世でいうブラック企業に勤めてるサラリーマンみたいだ。
「あー、ドンマイ……?」
「キースさまぁーセフィリスタさまぁーセスさまぁー、誰か紹介してくれませんかねー。」
「俺はシーラ一筋だしなぁ。セスは?」
「私はやることがあるので、自分の婚約者探しも滞っている。」
セスが無言でセフィを見て、俺とオーレンも視線を向けると、メガネのブリッジを上げてため息をついた。
「私に紹介できる女性がいるとでも?? 立場を考えてください。」
「あー……やっぱそっちもそうなんだ。でも
「職場恋愛をしてる人は居るが、大体は仲間としてしか見ていない、と思う。少なくとも私がそうだ。」
「なるほどー。」
騎士団や魔法師団は大体が貴族だから、親の決めた婚約者がいたり、同僚以外で恋愛をしようとしてる人もいるから、同僚は同僚止まりなのだろう。職場恋愛禁止というわけじゃないから、中にはそうじゃない人もいるだろうけど、仕事は仕事として私情は挟まないだろう。
二人とも婚約者がいてもおかしくない容姿と能力と立場なのにな。それを含めなくても、いい奴らなのになぁ。本人たちの意思だから、俺が口を挟むことじゃないけど。
そんな話をしていると魔物の解体と薬草の査定が終わったらしい。受付に行き結果を聞いていると、奥の扉からこの冒険者ギルドの、ギルドマスター ガレット・オルダーが出てきた。
「お前ら、初日からブーストカウを討伐してきたの?」
心なしか口元が引き攣ってるように見える。
「あんたが討伐してこいって言ったんじゃん?」
「言ったけど、最大限の二十匹を討伐できるとは思ってなかったぞ?!」
「え、二十匹狩ってこいってことじゃないの?」
「一応最大限は最大20まで! せいぜい五匹程度狩ってくるもんだと思ってたんだ。いつも頼んでるパーティは十匹で帰ってくるからな。」
「そうなら最初からそう言ってよ?! 狩ってきちゃったじゃん!」
なんだよ、みんな二十匹くらい狩ってるんだと思ってた。
「誰が想像できるかよ……いくら強くてもガキが二人と、そのお守りが二人だけのパーティーだぜ??」
ふむ。確かにそれも一理ある。多分俺たち一人一人はBランクくらいの強さはあるだろうけど、俺とセスは子供だからCランクくらいに見えるだろうしな。
「しかもほとんど一撃で魔法か剣で首を一撃……お前らの底がしれないぜ。っていうことで、お前ら全員昇格試験な。」
「「「「え??」」」」
「お前ら全員Bランクの昇格試験を受けろ。絶対それぐらいの実力があるだろうし、場合によってはAランク、Sランクな。」
たしか、Bランク以上の昇格試験には、Aランク以上の冒険者が試験官となり、その人と模擬戦をして合否が決まるはず。その一個下のCランクはギルドマスターの承認がいるはず……あ、それはギルマスであるガレットの権限で上げられるか。
「んー、試験をするのはいいけど、予定合うかな?」
「今すぐでいいなら俺たちの誰かが相手してやるよ。」
突然横から男の声が聞こえてきたので、そっちをみると、鮮やかな赤髪に両腰に剣を一本ずつ帯剣している男がうさんくらい笑顔を浮かべながら手を上げていた。その隣には黒髪長髪のローブをきた杖を持った女性だった。
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