美少女配信者たちから支えられて行われる魔物育成配信、あらゆる魔物を調伏出来る主人公は、美少女配信者から愛される
三流木青二斎無一門
第1話
遥か昔の時代から、この世には存在してはならない生物が存在した。
人々の恐怖、後悔、憎悪、負の感情が凝縮し這入産む、人類に対する悪性腫瘍。
それに対して、人類は、特別な力を持った能力者たちを創った。
その能力者たちは畏霊を祓う者、祓い屋、巫術師、又の名を…。
彼らは存在は500年の長い間、存在自体が秘匿とされていた。
人々の知らない場所で、祓ヰ師たちは生死を懸けて戦っていたのだ。
…と。
そんな語り草はつい最近までだった。
「また畏霊が出現したんだって」
「最近多いよね」
「でも畏霊のおかげで私推しに出会えたからいいんだけどね」
「ちょっとそれは不謹慎すぎるでしょ」
「じゃあ畏霊がいなかった時代の方が良かった?」
「それはそれで困るぅ、私の推しに出会えなくなっちゃう」
女子高生たちの会話。
元来、畏霊と呼ばれる存在は、世間一般的には浸透されていない筈なのだが。
つい16年前のことだ。
祓ヰ師の歴史に置いて、史上最悪の咎人による暴露が行われた。
それによって秘匿とされていた畏霊の存在を露見されてしまったのだ。
それによって日本市民たちは混乱に陥ってしまい、政府も畏霊の情報を口外せざるを得ない状況に陥る。
結果、祓ヰ師と畏霊と呼ばれる存在が世間に周知される事になってしまった。
それ以降、日本市民たちは戸惑いながらもその裏世界の情報を認知しており、現在に至る。
そして祓ヰ師は…。
「今日も夜からこんばんわんっ!シャロだよっ!」
携帯端末のカメラモードで配信をする姿が映される。
黒髪は長く、線の細い体は、黒のレースが編み込まれたロリータファッションに身を包んでいる。
キャラ付けなのか、頭部には犬耳のカチューシャが付けられており、尾骶骨辺りには尻尾が生やされている。
カメラに向けて両手の中指と人差し指の先端を合わせてハートマークを作り笑みを浮かべている。
「今日の配信は畏霊の討伐配信ッ!普段、祓ヰ師ってどうやって戦うのって思う人も居るだろうから、教えとくねッ!」
場所は住宅街、道路付近。
曇り空が闇と同化しつつあり、ポツポツと雨の様なものを振り立っている。
この状況下で、シャロと呼ばれる祓ヰ師はカメラを誘導するように指をさす。
「基本的に、普通の人間には畏霊は見えないよ、生命力が強くて、肉眼で捉える事が出来る人間も居るけど、だとしても戦闘手段は無いから、畏霊と出会った時には迷わず逃げてねっ!」
普通の人間には何も見えない。
だが、カメラには確実に動画に映っている。
それは人の様な靄だった。
「はい、今カメラに映ってる、この人型の半透明の生命体、これが畏霊って呼ばれる存在だねっ!今、視聴者のみんなには見えてるだろうけど、幽霊が写真とかに映る現象とかそこらへんと同じ理論だから、詳しい話は
一種の幽霊の類である。
それを確認した所で、シャロは指を構えて相手を見据える。
指で印を組むと、周囲に風が散っていった。
「じゃあ、お待ちかね…ボクの術式を開示しようか」
そう言うと共に。
彼女の体内に流れている力が影に流れ込む。
そして、影がゆっくりと現実へと浸透していく。
それはまるで、床に張ったシールを剥がしたかの様な実体化であった。
「
狗の形をした影が大きく口を開く。
それと共に、黒毛物と呼ばれた怪異が、人型の畏霊に向かうと、顎を開いて噛み千切る。
畏霊の消滅を確認した所で、シャロは決め台詞を口にした。
「永犬丸家に伝わる秘術、犬に関わる畏霊を調伏して使役する事が出来るんだ、…あっ」
そして、何時も通りの台詞に、シャロははっと息を呑んで、そして溜息を吐いた。
振り向き、カメラに顔を向ける…いや、カメラを持つ、カメラマンに向けて言う。
「…じんちゃん、カメラ止めて」
じんちゃん。
そう呼ばれたカメラマンの青年は、録画停止ボタンを押した。
配信ボタンではない、先程のは、録画をしていたに過ぎなかった。
「どうしたんだ?シャロ」
青年はカメラを下に向けて、シャロの方に顔を向ける。
蒼色の瞳を持つシャロは、瞼を落として薄目になって唸っている。
「いや、さっき間違えて、ボクの家の名前口にしちゃったよ…あー、失敗、リハーサルしておいて良かったぁ」
シャロの言葉に、青年は口を挟む。
「そうか…いや、でも、別に公表しても良いんじゃないのか?公式に、発表されてるし」
公式。
それは、政府から祓ヰ師に対する強制的な申請だった。
「祓ヰ師の活動配信義務ねえ…」
政府が祓ヰ師と言う存在を露見した事で、一つ怪訝すべき点が現れた。
祓ヰ師、超常の力を持つ存在。
彼らが存在し続ける事で、一般市民たちにとっては恐怖でしかない。
何故ならば、超常の力とは、世間一般的に言えば凶器…想像しやすいものを挙げるのであれば、拳銃などを装備しているに等しい。
危険人物、だからこそ、祓ヰ師と言う存在は、世間から安全と認知される為に、または、犯罪の抑止力として『配信義務』が行われている。
「だからって、ボクの名前を知ってる事と、ボクの口から名前を出す事は、全然違うんだけど?じんちゃんだって…
「いや…俺は名前言ってるけど…俺は、お前とは違って有名じゃないからなあ」
苦笑いを浮かべる青年、長狭仁衛。
彼もまた、シャロと同じ様に、祓ヰ師と言う職業に就いている。
有名、と言う言葉に反応するシャロはそれもそうかと頷いてみせた。
「これのお陰で、今じゃあ有名人だよねぇ、あーあ、有名税って怖いなあ」
「そう言っておきながら、シャロ、こういうの好きなんだろ?昔から、配信とかしてたし」
シャロが小学生の頃から、配信をしている事を知っている長狭仁衛。
その言葉を聞いたシャロは訂正する様に言う。
「ボクは基本的にゲーム配信だったし、声出しだけで、顔は隠してたのっ」
祓ヰ師でなければ、顔出し配信はしてなかったと言いたげだった。
シャロの言葉に、長狭仁衛はそうなのか、と頷いた。
「そうなのか、まあ、でも…シャロは可愛いからな、視聴者たちも、好意的だったし」
長狭仁衛の言葉に、虚を突かれたのか押し黙るシャロ。
「…」
「ん?どうした、シャロ」
長狭仁衛は、シャロの方に顔を向ける。
ゆっくりと近づいて来るシャロは、目を細くして、口元を緩ませながら、言う。
「んー?じんちゃんは、ボクの事、可愛いって思ってるのカナ?って」
先程言った言葉を改めて聞こうとしているらしい。
長狭仁衛はシャロの言葉に笑った。
「ははっ、…幼馴染だし、いっつも傍に居たからなあ…でも、可愛いよ」
面と向かって、恥ずかしがる事なく、長狭仁衛が言う。
その言葉を受けたシャロは、蒼い瞳を長狭仁衛に向けて視線を絡ませた。
そして、長狭仁衛の目が嘘を吐いていない事を知ると、首を縦に動かして頷いた。
「…んー、じんちゃんはちゃんと言い切るから、そういう所、好きだよ、うん、ボク、可愛いんだっ」
歯を剥き出しにして笑うシャロに、長狭仁衛は、彼に向けて言い返す。
「まあ、男だけどな」
男。
可憐で、可愛らしいシャロ。
だが、性別は女性では無かった。
女装をする男性。
女子の様な男子。
シャロこと、
「そこは重要じゃないんだけど、じんちゃん」
思わず、永犬丸弥士郎は長狭仁衛の言葉にそう突っ込むのであった。
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