続・邪祓師の腹痛さん
深川我無
ケース6
ケース6.0 餐まれる
キィコ……キィコ……
漆黒の闇の中、小さな明かりを放ちながら錆びた自転車が走る。
走るというには少々物足りないノロノロ運転で、小川巡査は夜の田園を通過していた。
過疎化の進む田舎の交番勤務だが、市民からの要請があればこうして出向かなければならない。
この日も酔っ払いの喧嘩を仲裁し、ようやっと交番に帰る頃にはすでに日付が変わっていた。
空は薄雲に覆われ月明かりの差さない夜の田園は、自身と闇の境界線も曖昧になるほどの深い深い闇がどっしりと立ち込めている。
「松田さんには毎度手を焼かされるよな……」
暗闇の恐怖を紛らすためか、喧嘩の仲裁で気が高ぶっているためか、いつもは言わない独り言を小川はつぶやく。
そんな時だった。
ふと見ると空き家に明かりが灯っている。
あれ……? ここってあの空き家だよな……?
一等古いというわけでもないが、地元の人間は誰も立ち寄らない。そんな空き家。
小川はごくりと唾を飲んだ。
持ち主が立ち寄っただけだと言い聞かせて通り過ぎようかとも思ったが、彼のお巡りとしての正義感と、昇進して片田舎の交番から出たいというほんの僅かな欲が、自転車を漕ぐ彼の足を止めた。
その夜以降、小川巡査の行方を知るものは誰もいなかった。
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