第3話 ハッ「ぴい♪」ハロウィン!
トリーック、エン、トリーーート!
はい、ということで、ですね、今夜はハロウィンということで、素敵なゲストをお迎えしています。
まずはこちら、パンプキンプリンみたいなオレンジ色の頭のね、プリンちゃん。ぷっくりとして可愛いですね。
「ぴぃ!」
そしてこの子、紫色の、カイちゃんです。シュッとして器量良しさんですね。
「ぴぴ」
飼い主さんのもふ江さんにもご登場いただきます。ネットに情報がまだ出回っていない頃からモフェアリー飼育に取り組み、第一人者と言っても過言ではありません。あ、顔出しNGなんですね。それで布を。まあハロウィンですからゴーストの。
もちろんうちの、ピンクのモフィ、ブルーのプニィ、緑のメディもいますよ〜!
モフィはね、小悪魔の羽根をつけてみました。メディのは魔女さんの帽子です。
あ、プニィ猫耳イヤなの。お目目にじゃまだったかな。じゃあ外すね。トホー。
総勢5匹のモフェアリーにこちらのテーブルの上を自由に動いてもらって……当番組には珍しく季節感あふれる飾りつけです……ごらんのように、お菓子フルーツきのこ、おもちゃ。ハロウィンということでフォロワーの皆様から沢山の差し入れをいただきました。
(黒い敷物の中心に、豆電球の入ったプラスチックの南瓜ランタン、周りに食べ物や玩具が置かれている。
ケージからモフェアリーたちがよちよち這って出る)
食べたり遊んだりする様子を皆さんにご覧いただきながら、我々人間がトークしていこうと思います。
(早速プリンちゃんが柔らかくなった柿を一切れ抱えて食べている)
「もふ江さんのモフェアリーちゃん達にはちょっと変わった経験があるそうですね」
(カイちゃんが紫イモのスイーツに鼻を近づけてヒクヒクさせている)
「はい。その前に、モフェアリーの成長段階ついてお話ししたいのですが、需要あるでしょうか?」
(プニィが何か口に入れてもぐもぐしながらカメラ目線。たぶん茸だろう)
「おお、ぜひ伺いたいです」
(メディが茹でたカボチャのまわりをぐるぐる歩く)
「番組をご覧の皆様にはご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、お浚いしましょう。
モフェアリーはこのパネルのような、真っ白いクッション状の卵塊から生まれます」
(モフィが南瓜ランタンの口のところからチラッと顔を見せる)
「孵化したばかりの幼生はこちらの写真のように、全身を赤いゼリー状物質に覆われています。赤いゼリービーンズのような見た目ですね。露出しているのは口と鼻と肛門のみです。
この段階の幼生が目撃されるのは、卵塊を覆うクッション状物質が何かの拍子に外から破られた場合だけです。幼生にとっては災難ですね」
(モフィが南瓜ランタンの電源スイッチに気づき、押したら卓上の明かりが消えた)
「この状態を気持ち悪いと思う方もいるようですが、赤ちゃんですので温かく見守ってください……まあ、そんな人はそもそも飼わないでしょうが」
(またモフィがスイッチを押し、明かりが点いた)
「一般的には、この状態のときはまだクッション状部質の内側で過ごしています。
それを内から破り外に出るころには、こちらの画像のように、赤いゼリーは頭部を残してだいたい剥がれおちています」
(ランタンが点滅し始めた。モフィはスイッチで遊ぶのがすっかり気に入ったらしい)
「頭部はゼリー状物質が二重になっていて、やがて外側の赤い層が取れると、個体によってさまざまな色が表れます。もちろん内側の層も赤い子もいます。
この状態が、私たち人類が日頃目にするカラフルなモフェアリーです。といっても、外側の層が取れて間もないうちはまだまだ子供です」
(ランタンの点滅でテーブル全体がチカチカしている。一方、カボチャ色のプリンちゃんはレールの上にある車のオモチャに気づく)
「いよいよ本題に近づいて参りましたが、この時の頭の色は必ずしも一生のものではありません。中には色の変わる子もいます」
(プリンちゃんが車を押すと滑らかに走る)
「特に、頭の色がマダラになっている子は変化の途中ですから、いずれどちらかに落ち着きます」
(車がレールの反対側の端に届くころ、紫色のカイちゃんがそれに駆け寄る)
「プリンとカイは2匹とも、頭の色が大きく変化した子たちなのです! しかも以前は、プリンが紫色で、カイがオレンジ色だったんですよ!」
「えーっ?! もしかして私たち……」
「入れ替わってる! って前前前世かい!」
(カイちゃんが、レール端で止まった車を押し返す)
「なお、こちらの写真が変化の記録です。プリンはふっくら丸顔、カイは細面なのは変わらない判別ポイントです」
「ああ……本当だ。過渡期のまだら模様の時期もあるんですね。可愛い写真をありがとうございます」
(ランタンにチカチカ照らされ、オレンジ色のプリンちゃんと紫色のカイちゃんの間を車が往復する)
「近頃モフェアリーを飼育してみたい方の相談を受けることも増えてきまして……どうも気になることがあるんです」
(走る車に青いプニィが飛び乗った。カイちゃんとプリンちゃんが両端で見守るなかプニィは行く)
「ぴわっ!」
「これはまだ仮説なのですが……頭の色の安定しない子は、卵のなかにいた頃から栄養が不足がちだったのではないか、と考えているのです」
(速度が落ちてくるとプニィは車を跳び下りて画面奥側へ駆けていった)
「というのも、まだら模様の子が弱って、そのまま亡くなることが相次いだ時期がありまして……そのなかで体力を回復して助かった子はすっかり新しい色になってるんです。この子たちみたいに」
(配信者とゲストは神妙な表情。ふいに、ランタンの点滅が消えた状態で止まる。モフィはスイッチで遊ぶのに飽きたが、しっぽが引っかかってランタンから出られない)
「ぴぅー」
「あれ……はいはい」
(配信者が考えこむ間にメディがいい感じにモフィのしっぽを押したら脱出できた。配信者はランタンのスイッチを入れ、出入り口をふさいだ)
「まだら模様の子をもらいたがる人にはその辺りをしっかり説明して、変化が落ち着くまで待っていただく場合もあります。あるいは残念ながら、お断りする場合も」
「モフェアリーちゃんの健康を第一に考えてあげたいですよね」
「それ! そうなんですよ」
「貴重なお話をありがとうございました!」
(モフィとメディがレールの車に寄っていくが、プリンちゃんとカイちゃんは車を押すのに飽きたようだ)
「ところで今回はハロウィン・スペシャルということで長めに枠をとりましたので……少し時間が余りましたね」
「じゃあ、そちらのモフェアリーちゃんにも大人気のこれで遊ぶところをご覧いただきましょうか」
(配信者とゲストがおもちゃのレールの両側から車を往復させる。モフェアリーたちは代わりばんこに乗って上機嫌だ。
マイクが切り替わってモフェアリーの声を拾うようになった)
「ぴわっ♡」
「ぴわっ♡」
(HAPPY HALLOWEEN)
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