認知的不協和に咲く花(仮)
@MrKIM0613
プロローグ キミに咲く花
少年は走っていた。
闇を貫く電灯の光と、それに照らされて煌めく水たまりをたたえる夜道をただただ息を切らして走っていた。
背後からは無情にも、夜明けの日光が地に色を付け始めており、それらから逃げるようにして少年は走っていた。
「なぜ逃げるのか」その問に対する明瞭な答えは彼の胸中にも存在しない。
それもそうだ、彼は「自分」を失っていた。
人間の生存に不可欠なたった一つの概念を彼は失ったのである。このことはつまり、彼の認知によって構成されている世界の不安定化を意味していた。
そうこうしてるうちに、極彩色の太陽は既にその顔を出していた。
目まぐるしく景色は変わり、息も絶え絶え、もはや朧気な光しか写さなくなった少年の目に一輪の花が写った。
凛として、しかしどこか儚げに咲くその花はなんとも形容できない姿をしていた。
訳の分からない葉脈をもち、摩訶不思議な茎を誇る”分類からの逃亡者”であるその花は、少年を呼ぶように静かに光を灯していた。
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