8話目 神秘の洞窟エナレス
「ティ、ティア様。どこまで行くんですかっ……。ここ、洞窟なんですけど……。」
ティア様に手をひかれて走り続けていたら、いつの間にか変な洞窟の中に入っていた。
薄暗くて肌寒い。どこかでピチョン、ピチョンと水が滴る音が聞こえる。
「ティア様?!聞いてます?!」
ティア様は我に返ったように足を止めた。途端、ぜぇぜぇと荒い呼吸を繰り返す。
「ティア様っ。大丈夫ですか?」
「ええ……。少し疲れてしまっただけですので……。」
「そんなに走るからですよ。というか、この洞窟綺麗ですね…。」
この洞窟は薄暗いがところどころ石が群青色に光っていたり、湧き水もなぜか光っていたりとしていて、とても神秘的だ。
「ここは「神秘の洞窟エナレス」と呼ばれる洞窟です。そしてここの最深部には世界の全てを知る水の神様がいるらしいんですよ。」
高くて綺麗な声が洞窟に響き渡る。
「全てを知る水の神、ですか。その方に会ってどうするつもりなんですか。」
そう質問すると、ティア様の目つきが真剣なものに変わった。
「レファレイさんが追われている訳が知りたいんです。父様のレファレイさんへの執着は、今まで父様の娘としてそばで見ていたうちで一番なんです。だからおかしいと思って───」
「俺を利用してここに来た、という訳ですね。」
「───はい。すみません。」
「いえ。俺も知りたかったので別に。───もう一つ質問があるんですけどいいですか?」
「はい。いいですよ。」
「ティア様は───俺の敵ですか。味方ですか。」
会話が途切れた。
喋り続けて温かくなった体に洞窟の冷たい空気が染み込む。
「私は────味方でも敵でもありません。ただ真実を知りたいがために人を利用する卑怯な王女です。」
真っ直ぐ俺を見つめて口を開いたティア様。
「そうですか。卑怯というところがアレですけど一番納得する意見ですね。では行きましょうか。」
「はい。」
歩き続け数十分。
「ここが最奥部です。」
広い空洞が目の前に広がっていた。
「案外すぐに着きましたね。」
「レファレイさんの能力のお陰ですよ。」
最深部まではそこらじゅうにある水に乗って来た。そして、長時間水を操っていたらいつの間にかレベルが
「そんなことはないで────」
『か弱き人間よ。ここへ何の用で来た。』
喋り終える前に最深部の中心から声が響いた。
「!」
辺りで垂れていた湧き水が声のした方へと集まった。ぐねぐねと動きながら女性の姿になる。
「エナレス様……ですか?」
『その通りです。私の名はエナレス・アンデテルカ。アンデテルカ王国の初代女王でございます。』
俺もティア様も目を見開いて驚いた。まさか、水の神がアンデテルカ王国の女王だったなんて。ということは、ティア様は神の子孫?!
「エ、エナレス様。お聞きしたいことがあるのですけれど、よろしいですか?」
『知らない子に情報をあげるほど私はやすくないわよ?』
「私の名はティア・アンデテルカ。エナレス様の子孫でございます。赤の他人というわけではございません。」
間髪入れずに会話を続けるティア様とエナレス様。俺が入る隙はないので大人しく2人の会話を聞いていることにした。
『ふふ。面白いわね。では、証拠を見せてもらいましょう。』
「証拠、ですか?」
『ええ。』
「何を見せれば良いのですか?」
『アンデテルカ家はね。生まれつき───』
一瞬沈黙が最深部を包む。エナレス様が口を開いた。
『───水を操れるんですよ。』
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