アンデテルカの秘密
なつふゆ
1章
1話目 レファレイ・ユーガスリク
レファレイ・ユーガスリク。
アンデテルカ王国の平民である。
俺は捨て子だ。運良くロステル・ユーガスリクに拾われた。
「おはよう。父様。」
目をこすりながら木の椅子に座る。
「レファレイ。起きるの早いな。朝食はまだ時間がかかりそうだから、散歩にでも行ったらどうだ?」
「うん。そうする。」
服を着替えて外に出る。
ロステルは一人暮らしをしていた。妻は俺を拾う何年か前に他界したらしい。
なので、今は男二人で暮らしている。
そんなことを考えながら、いつも行く公園の中に入る。すると、
「おはようございます。」
突然、美しい声で話しかけられた。前を向くと、青く輝くドレスを身に纏い、サファイアのような瞳をした美しい女性が噴水の真横にあるベンチに座っていた。
「貴方の名は何というのですか?」
首を少し傾げて聞いてくる。
「ティア様。おはようございます。私の名はレファレイです。平民の私の名前など、別に覚えなくてもいいですよ。」
言ってから、ちょっと失礼だったかな、と思う。
ティア・アンデテルカ。アンデテルカ王国の王女様。
俺は週に4日くらいここへ散歩に来ているが、毎回ティア様を見る。
きっと、毎日ここに来ているのだろう。
「レファレイ様、ですね。よくここで会いますよね。レファレイ様も、ここが好きなんですか?」
にこっと笑いかけられる。青い天使みたいで、思わず頬が赤くなる。
「はい。ここ、きれいなので。」
頬が赤いのがバレないように少し下を向きながら言う。
俺とティア様がいるところは、小さな公園だ。
遊具がなく、ベンチしかないことから、ここにはあまり人が来ない。
でも、この公園には色とりどりの花が咲いていたり、公園の真ん中には噴水があったりしていて、とてもきれいだ。
なので、散歩に行くときや、暇なときはよくここへ来ている。
「きれいですよね。…あ、そろそろ行かないと。では、失礼します。」
ティア様がそう言って立とうとする。その時、
「きゃっ」
足を滑らせ、ティア様が噴水にボチャンッと落ちた。
「ティア様っ!」
「ぷはっ」
助けようとしたら、ティア様が水の中から顔を出した。
「えへへ。落ちてしまいました。」
安心させようとしたのか、ティア様が可愛らしい笑顔で言った。
思ったより、人懐っこい人なのかもしれない。
ざばざばと噴水から出てきたティア様。寒いのか、少し震えている。
全身びっしょりで城に帰ると、問題になりそうだ。
「ティア様。失礼します。」
「?」
ティア様に当たらないくらいに手を伸ばす。
すると、ティア様の服や体についている水の粒が、俺の手に引き寄せられてきた。
「えっえっ」
ティア様が驚いている間に、ティア様を濡らしていた水の粒が全て俺の手に集まって、水の玉みたいになった。
それを噴水に投げる。
バチャッ
と音を立てて、水の玉は噴水の水の一部となった。
「え、何ですか?これは……」
「俺の能力です。水をあやつれるみたいです。なんで使えるかは俺も分からないんですけど。誰にも言ったことないので、言わないでください。」
苦笑いをして言った。
ティア様はすぐうなずいてくれた。
「色々とありがとうございました。ぜひ今度お礼がしたいのですが…」
「いえ、お礼されるほどのことはしてませんし…」
「では!これからもこういう風にお話して頂けませんか?私、会話するほどの人が全然いなくて…」
ぐいぐい来るティア様に驚きながら答える。
「全然良いですよ。俺も最近会話したの父様とティア様くらいしかいないので。」
俺の言葉にティア様の輝く瞳がさらに輝いた。
「ありがとうございます!お願いします!」
「お願いします」?疑問に思いながら、何となくお辞儀をする。
とんでもない会話相手が出来た一日だった。
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