吾輩はロボである ~if~
飛鳥つばさ
ロボ研の暇な一日
吾輩はロボである。名前はミケ。
激動の一年間も終わり、学園はしばし春休み。
しかし個性の追求と自己実現を推進するこの学園のこと、情熱と目的意識あふれる生徒たちは、一日も余さず己を磨くべく、それぞれの部活動などに精を出しているわけで……
「暇だなあ」
「暇、だね」
……少し訂正。崇高な目的などを持たないわれら「ロボ研究会」も、家にいてもやることないので、なんとなく登校して部活していたりするのである。
とくに今日などは、ロボ研の目的意識の主な源たる会長のトオル殿が珍しく顔を出していない。となると、
「マスター達、どこに行ってるのかなあ」
目的があるかどうかはともかく、熱意だけはあふれてる吾輩のマスター、ひまわりも、トイトイ殿を引きずって登校して来たきり、部室にロボ二体を放り出してどこかに消えてしまった。あんまり暇なので、吾輩たちは必要もないのに端子を拝借して充電している始末。ああ、電気がおいしい。
「わたしはこんな時間、嫌いじゃないけど」
吾輩の肩の上に乗っかったトイトイ殿の小型ロボ、パイリァンが、体の力を抜いて肩を預けてきた。
まあ昨年度は色々とありすぎた。その甲斐あってか、ロボ研創立以来の悲願である「部活昇格」まではあと一人! というところまで来て、会長殿としてはおおいに発奮するところであるが。逆にこうも平和な時間が続くと、正体のわからない不安感にさいなまれるのは、被害者意識が強すぎだろうか?
「
しかし学園内といっても広い。とくにこの学園は、小中高大の一貫教育なだけあってとにかく広い。しかも空間を贅沢に使っている。その結果新入生と編入生などであるあるなのが「学園内で迷う」だったりするのだ。
「ひまわりさん、探しにいくの?」
充電完了して端子を外した吾輩を見たパイリァンが、少し曇った表情で肩の上から降りた。
「……うん。やっぱりお兄ちゃんも、わたしなんかより自分のマスターのほうがいいよね」
「そういう訳じゃないんだけどね」
おっといけない。一年近くつきあってきて――いや、できてわりとすぐに分かったことだが、この子は自分の感情をなんでも、とくにネガなことを自分の中だけにため込んでしまう。
「パイリァンは? トイトイ殿が心配じゃないの?」
「マスターなら大丈夫、だと思う」
とつとつと答えたパイリァンの瞳が、一瞬違う色に光った。珍しく真剣な表情で吾輩をのぞきこんでくる。
「でもお兄ちゃんがそう言うなら、迎えに行こう。多分、アイドル部にいると思うの」
「アイドル部? トイトイ殿、勧誘されてるの?」
ちょっと意外な行き先に首をかしげる吾輩に、パイリァンはゆっくりと首を振った。
「誘われてるのは、わたしのほう」
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