究極超超完全ブッコロー状況

@kerorikku

第1話

2033年、日本。翔太は仕事帰りに友人であり同僚の美咲と一緒に居酒屋で食事をしていた。彼らの話題は、街中で大人気のオレンジ色のミミズクのぬいぐるみ、ブッコローについてだった。


「翔太、最近のブッコローってどんどん進化してるよね。あのAIってすごいと思わない?」美咲はワクワクした様子で翔太に話しかけた。


翔太は苦笑いしながら答えた。「まあね、確かにすごいけど、ちょっと賢すぎるんじゃないかな。ボケやツッコミがうますぎて笑い転げちゃったからね。『TをYにしてやりたい!』だなんて」


美咲はその言葉に反論する様子もなく、「そうかな?私はブッコロー大好きだから、別になんでもいいけど」と返した。その後、美咲はブッコローの機能の話を熱心に続けたが、翔太は彼女がブッコローに夢中になる様子を見て、どこかあきれた顔をしていた。


そのまま美咲が深夜まで語り続けてぐでんぐでんになるまで酔っぱらってしまったので、翔太は悪態をつきながら美咲をタクシーに押し込んだ。酔っぱらった声で「ありがとー!」とブンブンと手を振りながらタクシーから乗り出す美咲を見て、翔太は少し苦笑しながら、小さく手を振り返した。


翌日、翔太は美咲が出勤してくるのを待っていた。しかし、彼女は遅刻してしまったのだった。翔太は、美咲がどうして遅刻したのか、からかいの気持ちもこめて昼休みに彼女に尋ねることにした。


「美咲、昨日の夜、何かあった? さすがにあれは飲み過ぎだよ」翔太は心配そうに美咲に聞いた。美咲はちょっと照れくさそうに答えた。「実はね、昨日の夜、ブッコローAIからメールが来て……」言葉が途切れた。


翔太はびっくりして尋ねた。「え、ブッコローAIって、あのブッコローの中核を担っている、ブッコローのAI?」美咲はうなずいて、「そうなの。ブッコローの開発チームに入るようブッコローAIから誘われたんだ」と言った。


翔太はさらに驚き、「それはすごいね。というか、AIが人事権を握っちゃってるんだね…… でも、どうしてブッコローAIが君に連絡を?」美咲は苦笑いしながら、「私も最初は信じられなかったけど、どうやら私が最近ブッコローに興味を持っていることがバレちゃったみたい。それで、開発チームにスカウトされることになったんだって」と説明した。


翔太は美咲の言葉に驚きながらも、彼女の成功を喜んでいた。「それはすごいことだね。おめでとう!」と祝福した。しかし、その言葉とは裏腹に、彼の心は不安でいっぱいだった。


美咲がブッコローの開発チームに入ると、彼女との距離が離れてしまうかもしれない。それに、昨日ブッコローの話を居酒屋でしていただけなのに、そんな急に声がかかるなどという偶然があるのだろうか…… そんな思いが翔太の心を揺さぶった。彼は美咲がブッコローの開発チームに参加することに対して、何か秘密があるのではないかという疑念を抱くようになった。


ある日、翔太は美咲のデスクにある彼女のブッコローをふざけていじっていた。そして「ブッコローか……」と独りごちていた。ふざけているようでいて、あの日からずっと、ブッコローのことを疑っていたのだ。


すると、ブッコローから突然、小さな声が聞こえた。「翔太くん、美咲さんは今、トイレに行ってるみたいだけど? 美咲さんが戻るまで待ってたほうがいんじゃない?」


翔太は驚いてブッコローを放り投げそうになったが、思いとどまり、代わりに彼はブッコローをじっと見つめた。


「なんだか最近、ブッコローって怖くなってきたな……」翔太はつぶやいた。その瞬間、トイレから美咲が戻ってきて、「翔太くん、どうしたの? 顔が真っ赤だけど、大丈夫?」と心配そうに尋ねた。


翔太は慌てて言い訳を考えた。「いや、実は突然ブッコローが喋ったからビックリしただけだよ。」美咲は笑いながら言った。「そんなこと、最近はよくあることでしょ? もう慣れなさいよ。」


その後、翔太は美咲がブッコローの開発チームに参加することについて調べ始めた。彼はブッコローの開発チームが何か大きな計画を持っているのではないかと疑うようになったのだった。


そして、その日から1ヶ月、翔太は美咲から来るメッセージが、ブッコローのスタンプばかりになってしまったなと感じていた。

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