あのまばたきの意味

維 黎

あのまばたきの意味

 こんにちわッ! ぼくの名前は熊谷直樹くまたになおき。『熊』のプーさんと『谷』の訓読みの『や』を文字っての『プーヤ』から変化して『ぷ~やん』って友達からは呼ばれてました。享年12歳で地縛霊歴65年です! よろしくね♪

 

 みんなは地縛霊って知ってるかな? 恨みや未練を残してしまった時になることが多いんだけど、ぼくは別に無茶苦茶嫌いな人がいた訳でもないんだけど、もったいなかったなぁってずっと思ってることはあるんだ。

 それはね。隣のクラスだったサチエちゃんのことなんだ。


 学校に行く通学路で信号機がある大きな道路を渡るんだけど、ある日、その信号機の青が点滅してるときに横断歩道を慌てて渡ろうとしてたんだけど、その時、歩道にいたサチエちゃんがぼくに向かって二回まばたきしたんだ。


『え、なに? サチエの奴、いま俺にコナかけたのか? ひゅ~、モテる男はツライぜ。でもまいったなぁ。サチエはちょっとタイプじゃないんだよなぁ。やっぱチチはボーン! で腰はキュッとしてて、ケツはバーン! って女じゃないとなぁ』


 って横断歩道でどうしようか悩んでたら、HONDAのNSXType Sに轢かれちゃってさ。結局サチエちゃんとは何もなかったんだよねぇ。

 あの時横断歩道を渡れていたらぼく、サチエちゃんと付き合ってたかもしれないんだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「――ねぇ、ねぇ、サチエおばーちゃん」

「ん? どうしたの。ゆきえ」

「どうしておばーちゃんは、二回うぃんくするの?」

「あらあら。すごいのね、ゆきえは。ウィンクって知ってるの?」

「うん! 同じ保育園のちーちゃんから聞いたんだ。”おんなのこーとーてくにっくよ”って言ってた。ちーちゃん」

「ちーちゃんもすごいのねぇ。でもおばーちゃんのはウィンクじゃなくて、これってただのクセなのよ」



――了――














 

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