あのまばたきの意味

クロノヒョウ

第1話



「なんだなんだ!」


 体の揺れとガタガタゴトゴトという大きな音で目が覚めた。


「地震?」


 しばらくベッドでじっとしていると揺れもおさまり音も静かになった。


 時計を見ると朝の五時。


 俺は恐る恐るカーテンを開けた。


 この時間だと少しは明るくてもいいはずなのに外はグレーだった。


 窓を開けた。


「はあ?」


 一瞬夢を見ているのかと思った。


 昨日観た映画と同じ景色だった。


 空に巨大な宇宙船がいた。


 丸くて薄い円盤の宇宙船。


 映画と同じように人がたくさん外に出てきて騒ぎ始めた。


 向かいのマンションやビルの窓からも人が身をのり出して空を見上げている。


 俺もみんなと同じようにスマホを手に取り写真を撮った。


 しばらくすると宇宙船の裏側が光りだした。


 赤や青、緑などのライトが点々とついた。


 やっぱりこれは夢かもしれない。


 昨日の映画とまったく同じなのだ。


 この後宇宙船のコクピットがアップになって中の宇宙人たちが会話する。


 俺は急いでクローゼットにしまっておいたオペラグラスを取り出してから窓の方へ戻った。


 そしてまた宇宙船をよく眺めた。


 見たこともない精密な機器がたくさん付いている。


「おっ」


 その中からコクピットらしい場所を発見した。


 やっぱり映画と同じで中に宇宙人が乗っている。


 なかなかグロテスクな宇宙人だ。


 いかにも悪いやつら。


 地球をのっとる恐ろしい生物。


 これまでにも様々な星を侵略してきた彼ら。


 映画では彼らのことをインベージョンと呼んでいた。


 操縦席に座っている二匹のインベージョンが何やら話しているようだった。


 ふと、インベージョンと目があった気がした。


 いや、気のせいじゃない。


 確かにこっちを見ている。


 真っ黒で大きな目がじっと。


 俺は胸騒ぎを感じた。


 額から汗が吹き出した。


 ダメだ、目をそらすんだ。


 見てはいけないんだ。


 そう思っても俺の体は動かなかった。


 そしてインベージョンは俺に向かってパチッとまばたきをした。


 次の瞬間宇宙船から無数の光が落ちてきた。


 あっという間に街が破壊され炎と悲鳴に包まれていく。


 それが夢ではないということを実感させる。


 俺はへなへなと腰を抜かしながら映画のエンドロールを思い出していた。



 明日あなたに起こるかもしれない物語。

 あのまばたきの意味とは。

 未来映画『インベージョンのまばたき』 fin




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あのまばたきの意味 クロノヒョウ @kurono-hyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説