第16話 激戦。
ドラゴンの攻撃を防ぎ耐えているエリク。
「もう無理だっ。」
堪えきれずに下がるエリクに合わせ他の三人も後ろに下がる。
尻尾の攻撃を上手くかわすとシルファとユーリアが前に出て仲間を庇うように並び立つ。
ドラゴンは後ろに下がる。こちらを警戒しているようだ。
「良いタイミングだ。狙って来たんじゃないか?」
「ちょ、このヘロヘロな姿が目に入らないんかい、ちゃんと走って来たっつーの。」
「冗談だ、冗談。よく来てくれたな。」
がははと笑い体勢を整えるグレン。
エリクの言う通り、よく見れば全員肩を動かし深い呼吸をしている。
グレンのために急いで来てくれたのだろう。
だが、その状態ではどれだけ戦えるのかは分からない。
そんな事を知ってか知らずか、ドラゴンはハンター達に飛び込んでくる。
「ずいぶん元気だなっ。」
「迷惑。」
ハンター達は左右に別れ攻撃をかわす。
ドラゴンは着地をした瞬間その場で回り尻尾をぶんまわす。
何とかかわす事が出来たものの、段々動きが速くなっていく。
「やってくれるねぇ!」
先の戦いで剥げた鱗に向かって斬りかかるシルファ。
しかし、目の前に現れた顔に阻まれ攻撃できずに終わる。
剣を構えながら後ろへと下がる。
「こっちなら。」
ユーリアは、その攻防で生まれた反対側の首に斬りかかり一太刀を与える。
だが、迫る顔にすぐ身を引く。
虫を払うかの様にハンターを退けたドラゴン。
しかし、今の一撃で鱗のひびが広がってしまったのだ。
「効いてるねぇ。」
「やはり、専用の武器は強いな。」
流れの勢いがままに懐に飛び込むエリク。
顔に槍斧の重たい一撃を加えた後に、首に槍をぶっ刺し鱗を完全に砕いてしまう。
仰け反るドラゴンだが、負けじと顔を振りかぶり頭突きをくりだす。
避けるエリクだが、そこに顎を叩きつける。
「このやろうっがぁ。」
叩きつけられる直前、武器で防ぐことに成功する。
しかし、槍一本ではのしかかる顔の重さを堪える事しか出来ない。
ドラゴンは、それでもなお体重をかけ続けるもグレンによるタックルでようやく離れる。
「無事か?」
「あぁなんとかな。」
「まさかあれだけ反撃してくるとは。迂闊に踏み込むことが出来んな。」
ドラゴンの攻撃はまだ終わらない。
警戒する二人を踏み潰そうと飛び込んでくるが二人は左右に回避。
さらにエリクを尻尾で吹き飛ばし、グレンに頭突きを仕掛けるも後ろに倒れて避ける。
「それ以上はさせねぇっての。」
戦線に復帰したシルファは、休みもなく攻撃を続けるドラゴンのわずかな隙を狙って懐に飛んだ。
それと同時に込み足を払とドラゴン体勢を崩す。
そこに現れたユーリアが首を狙って一太刀を入れると血が垂れる。
ドラゴンは、絶叫しさらに暴れる。
「決まった?」
「だが少し浅いか。」
「まさか、鱗の中までかてぇとはねぇ。」
「手応えはあったのに。」
ドラゴンの首からは血が出たものの致命傷なダメージを与えるには至っていない。、
デカイ獣を軽々と吹き飛ばす破壊力なだけあって、その体の筋肉は並み尋常の固さではない。
圧倒的な攻撃力に、並々ならぬ防御力。
それらを振りかざすがゆえに、上位の存在として君臨し続けるのだ。
「見せつけてくれるねぇ。」
「燃えてくるじゃねぇか。」
だからと言ってそんな相手に気後れするハンターではない。
むしろやる気をみなぎらせ、改めて攻撃を加えていく。
その度、ドラゴンの首に傷が付いていく。
その早さに、ドラゴンは対処できない。
「ダメージが無いなら出るまで攻撃を与え続ければ良いだけだ!」
「同意。」
ドラゴンに飛び込んだユーリアは、顔による突きそして払いをかわす。
そして、頭突きを飛び込んでかわし胸元に一閃を与える。
それにより、首以外にも傷が付き始める。
「そうだな。ずっとやってりゃ、いつかはくたばるだろ。」
エリクは、ユーリアに気をとられるドラゴンの顔に向かって槍斧を叩きつける。
すると、その顔が大きく弾かれた。
「うってうってうちまくる。それでいいんよ。」
ドラゴンの前足を踏み込んだシルファは、背中に飛んで一閃。
着地をした瞬間、回りながら勢いをつけて剣を叩きこんでいく。
「合わせて。」
「任せろっ!」
ドラゴンの胸元にいたユーリアは前足にも一閃を浴びせ体勢を崩す。
そこにエリクが槍斧で顔に一撃を叩き込むとドラゴンの体が傾く。
「ついでに食らっときなぁっ!」
シルファが傾いた体の横っ腹に一撃を加えると、ドラゴンはとうとう倒れてしまう。
その隙に、エリクがドラゴンの首を押さえ込む。
「今のうちだ!」
「助かる!」
グレンは、盾を掴むとドラゴンの顔を蹴る。
そのまま引っ張り上げて盾を取り戻出す。
「これを失うと出費が痛いんだ。返してもらうぞ。」
ドラゴンは、槍をはねのけ上体を上げる。
多少とりもちがついているものの、盾を取り戻せたのは大きい。
「かかってこいっ!」
起き上がり様に尻尾を振り回すドラゴンに対しグレンが盾を構える。
そして、、これまでのうっぷんを晴らすかの様に前に出て受け止める。
「そんなもんか? 弱すぎる。」
そして、続いて迫ってくる顔による叩きつけも受け止める。
それから何度か来るが弾いていく。
「効かんと言っている!」
強烈な一撃が見舞われたはずだが、びくともしない。
むしろ、顔に合わせて盾で殴り付けた。
それにより、ドラゴンの顔が跳ね上がる。
「ふっ、武器があると言うのは良いものだ。」
「盾を武器と言い張るのはリーダーだけなんよ。」
「実際、威力ありそうだしな。あれ。」
と、呆れているシルファとエリク。
その攻撃を受けたドラゴンは、意識が一瞬飛んだのだろうか顔を振っている。
エリクの攻撃を受け続けたのも効いてるのだろう。
「動きが止まった。」
「うむ、このまま行くぞ。」
やる気がみなぎるグレンは先頭に立ち、相手の攻撃に警戒する。
このまま一方的だと思われたが、そう上手くは行かない。
急にドラゴンは空高く羽ばたき上がる。
「今度は、何するつもりなんだ。」
「何か来る?。」
「俺が迎え撃つ。各自警戒し下がれ。」
仲間に下がるよう指示を出すグレンはドラゴンと睨み合う。
ドラゴンはある程度上がると、羽ばたきをやめ落下するようにグレンに飛び込む。
グレンはその攻撃を後ろに流すように弾く。
もちろんグレンは後ろに体勢を崩してしまい、倒れないようぐっと足を堪えるが。
「リーダーっ、危ねぇ!」
「なっ。」
気付いた時にはもう遅い。
尻尾のぶんまわしをもろにくらい吹き飛び地面を転がる。
そこに追撃として突っ込んでくる。
「ぐぅっ、負けるかぁっ!」
とっさに立ち上がり体勢を低くするグレン。
そして、突っ込んでくるドラゴンの懐に入りぶつかる様につかみかかる。
かなりの距離を引きずられるも止める事が出来た。
「生きてるかぁっ!」
駆けつけたエリクが、ドラゴンの横に槍斧を叩きつける。
その衝撃で横に倒れかけるも、尻尾を叩きつける様に一回転。
尻尾による激しい衝撃に襲われるが、二人がかりによって受け止める。
「しぶといな。」
「全くだ。」
続く頭突きを後ろにかわし、顔による払いもかわす。
更に、叩きつけも左右に別れかわす。
「任せるんよ!」
「続く。」
二人とすれ違うように、シルファとユーリアがドラゴンの前足を左右から攻撃。
それで、一度は倒れかけるも踏ん張った。
そして、頭を低くしての頭突きの構えを取る。
「させん!」
「させねぇ!」
二人に迫る頭突きをグレンとエリクが受け止める。
衝撃は強いが受け止める。
そして、その勢いを利用し距離を取る。
「気づいてるか。リーダー。」
「あぁ。」
「あいつ、かなり弱ってやがるんじゃねぇか?」
二人の言うとおり、ドラゴンをよく見ると肩で息をしている。
先ほどからの攻撃を何度も受け止められていたのは、ドラゴンの体力が相当消耗してるからだろう。
直接攻撃を受け続けた二人だからこそ、その状態を理解する事が出来たのだ。
「敵は弱っている。攻めろっ!」
グレンの合図で一斉に斬り込む。
ユーリアが横を、シルファが足を、エリクが背中を攻撃する。
ドラゴンは無抵抗だ。
その結果、今までの戦いで傷ついた鱗が剥がれて、生身がさらされていく。
「このままいっちまおうぜ。」
全く動かない為、ドラゴンを上手く追い詰められているという確信を得た一同だが。
ドラゴンは残りわずかな気力と体力を振り絞り暴れだす。
「おおっと。」
シルファとユーリアは、暴れるドラゴンから離れられるもエリクは背中に残る。
そのまま、ドラゴンの翼にしっかりとしがみつく。
「おとなしくしやがれっ。」
そのまま、暴れるドラゴンに振り落とされないようにしつつも槍で体を突き刺す。
さらに激しく暴れるドラゴン。
「エリクさん、そのままひばりついててほしっいす。」
「よく分からねぇが任せろ。」
武器を深く刺し、片手で翼をしっかり捕まる。
それと同時に先ほどの声の主であるコガラキがドラゴンを捉えていた。
手に持っていたボウガンをドラゴンに向け発射する。
「掴んでくださいっす。」
エリクは飛んできたロープを上手く掴んだ。
そのロープの先には鉄の輪っかがついており、中をロープを通せるよう一部が外せるようになっている。
「なるほどなっ。」
コガラキの目的を理解したエリクはロープを巻き付けようと首に飛び付く。
しかし、巻き付ける寸前でドラゴンは急に走り出したため失敗してしまった。
そのままハンター達から距離を離すと、エリクを乗せたまま空へと飛び出す。
「何だ? 逃げるつもりか?」
せっかく追い込んだのにこのまま逃げられるとまた回復されてしまう。
その為、急いでロープを取り付けないといけない。
「させねぇ。」
エリクは、直ぐさまロープを巻き付け鉄の輪っかの中に通す。
そして、ロープを引っ張り確認する。
「あばよっ。」
そう言うと、エリクがロープをつたいながら降りてくる。
ロープが上手くかかったのか、ドラゴンは引っ張られている。
「無事取り付けたようね。」
「後は私の出番だね。」
ロープをおっていくと、地面にある機械に巻き付けてあるのが分かる。
その機械を操作する人物、カリネは自信満々にスイッチを押す。
すると、機械はロープを巻き取っていきその先のドラゴンを引っ張る。
当たり前だがドラゴンは暴れだす。
「自信作だよ。そうそう簡単には負けないからね。」
暴れるドラゴンだが、ロープが逃がさない。
そうとう丈夫なロープのようだ。
それでも、それから逃げようと必死に羽ばたいている。
「・・・まるで釣りね。」
「ってことは、俺は釣餌かなんかかよ。」
空で暴れるドラゴンを見ながら呟くアリアに突っ込むエリク。
そのまましばらく暴れていたが体力がつきて落ちてしまう。
「どうよ。」
指をドラゴンが落ちた場所を指し、鉄砲のように撃つポーズを決めたカリネであった。
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