イケメンな彼女が欲しい!
二歳児
第1話 田舎人と王子な彼女
今までの人生、大して特出したこともなく平穏に、更に言えば平凡に過ごしてきた。勉学は数学と国語は苦手ではないのだが英語がからきしで、運動もクラスで中の上程度。確かに悪くはないのだろうが、もう少し目立ちたいというのが男子の
しかし最近では、新たに目標ができた。勉強が出来るようになりたいとか、運動が出来るようになりたいとか、そういう目標ではなく。
「イケメンの彼女が欲しい…………!!」
そう、彼女である。
男子高校生にとって、彼女が出来るということ以上に魅力的な出来事はない。それも、気になっている女子がいるのであれば尚更。
こんなことを言っている宗助も、実は今回が初恋なのだが。
「………また変なことを。どうせあれだろ、少し前に言ってた初恋の朱美だろ」
その初恋の相手とは、同じクラスの女子。『男子よりもイケメン』で有名な
まず初めに身長が高い。そして細いがしっかりとした体付きをしている。表情が凛々しい。勉強もできる、運動もできる、先生とも仲がいい。流石は女子の彼氏にしたいランキング堂々の一位を、血も涙もなく搔っ攫っていった存在。
恋慕に気が付いたのは割と最近である。同じクラスになってから宗助は少し彼女を意識していたのだが、ついこの間自分の感情を理解したのだ。何せ彼は恋愛とは遠く離れた辺境の地にて生活をしてきた生粋の田舎人。自分の恋慕に気づけなかったのも、当然と言えば当然である。
「朱美、ねぇ。確かにイケメンだけど、女子らしくないって言うか」
「何言ってんだ、可愛いだろ。イケメンなのに女子っぽい仕草が偶にあるのが良いんだろ」
「………そう言われてみればそうかもな」
「おいお前、朱美さんに色目使うつもりか。許さねえからな。見んな。っていうか何で呼び捨てで呼んでるんだよ」
「めんどくせぇな、おい」
宗助の目の前でスマホを弄っていた
浩太郎とは二年になってから仲が良くなった。この学校はかなりの人数が通っている高校であるため、同学年の人でも顔に見覚えがないことが多々あり、宗助にとって浩太郎はその一人だった。しかしクラス替えをしてから体育の授業を通して仲良くなり、今は席が近いのでかなり話すようになっている。
名字が朱美と同じであるために、出席番号順で並ぶときなどは朱美の直ぐ後ろに並ぶことになる。羨ましいことこの上ない。
「っていうか、何で惚れたんだっけ?」
「男女合同の体育の時に、俺の方にボールが飛んできたのを止めてくれた」
「チョロインかよ」
「俺はそれで朱美さんの格好良さに気が付けたんだ、馬鹿にすんなこの野郎」
「うるせぇな」
浩太郎と話しながら、今日の授業の用意をする。残念ながら今日は体育がない。女子の体育の教師が今長期の休暇を取っているため、体育は男女共同になる。宗助は朱美の雄姿を見られると楽しみにしていたのだが。
まぁ、明日になれば体育がある。それで良いだろう。別に体育がなくても同じクラスに朱美はいるわけだし、ずっと会えないようなわけではないのだから。
宗助が教室の前の方で、女子数人と楽しそうに話す朱美のことをぼんやりと見る。彼女は机の上に腰かけて、その長い足を組んでいた。女子にも着用が許されているズボンをはいているのだが、それが彼女の闊達な印象をより一層引き上げている。
朱美が、爽やかで楽しそうな表情で声を上げて笑った。
「…………可愛いんだよなぁ。やばいよなぁ」
「やばいってなんだよ、やばいって」
「俺もう朱美さんに彼氏とかいたら普通に学校来れなくなりそう」
「ガチ惚れじゃん」
「残念だったな、微塵も否定できねえ」
ヤバ、と呆れたような表情で浩太郎が言った。
「────ということらしいですが」
場所は、佐藤家。浩太郎は、食卓で突っ伏している朱美にそう言った。
何を隠そう、浩太郎と朱美は
浩太郎は柄にもなくこの状況を楽しんでいた。
「…………もう宗助君の顔見れないんだけど」
「今日だって極力見ないようにしてただろ」
「当たり前じゃん。『かわいい』とか私言われ慣れてないし」
負けず嫌いな性格も相まって、普段は男子と同列扱いされることが多い朱美。彼女がここまでストレートな言葉を受け取ったのは生まれて初めてだった。
伝えられるのは弟である浩太郎を介して、だが。
「『朱美さんに彼氏が居たら普通に学校来れなくなりそう』だと」
「あー、聞こえなーい」
赤くなっている耳を塞いで、朱美がまた俯せになる。
これまで姉弟では揶揄われる側であることが多かった浩太郎にとって、その表情が見られただけでも十分だった。
人伝いに聞いただけで聞いただけで恥ずかしさに顔を赤くするような朱美。
彼女もまた、初恋であった。
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多分続きません
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