錬金術少女と、とある古代遺物をめぐる物語

ういの

出会い

0.プロローグ

 とある、貴族の一人が言った。


「三百年もの間、研究され続けてきたというのに、一向に成果を出せないとは情けない。幸い、研究対象は数え切れないほどあるのだ。いっそのこと、一般の錬金術師達にも協力を仰ぎ、ほんの僅かな可能性でも見つけ出してくれるくれることに賭けようではないか。」


 それから僅か一年の間に準備を整え、今日はそれが開放される日となった。







 ミルクティー色のふわふわとした髪に、透き通った水色の瞳。綺麗というよりかは、可愛らし顔立ちをしているエルリア。

 その前に堂々と立っているのは、サラサラの赤髪に、赤みの強いオレンジ色の瞳。女性にしては背も高く、肩幅もあるため、一見すれば細身の騎士のような佇まいをしているジュティア。

 

 新米錬金術師であるエルリアはその日、師匠であるジュティアに連れられ、とある遺跡の前に来ていた。


 そこは、厳重な警備体制が整えられていて、何も知らないまま着いてきたエルリアにも緊張が走る。


「錬金術師のジュティア・ピファネットと、弟子のエルリア・エリーシアだ。」


 厳かな門の前で、屈強な体躯の門番に名乗り、招待状らしきものを出すジュティアの後ろで、エルリアはいくつも突き刺さる厳しい視線に震えていた。


 体格のいい男たち――おそらく、騎士団員――が壁際に並び、厳しい目で辺りを警戒している。何も悪いことをしていないエルリアでさえも、身体の強張りは増すばかりだ。


 許しが出て案内係の男についていくと、長い廊下を渡った先の大きな広間に出た。反対側の壁が見えないほどの広さだ。

 

 そこには、布に包まれた何かが所狭しと並んでいた。この、大きな広間を埋め尽くす程に。


「さ、エルリア。好きなものを選んでいいみたいだよ。」


 師匠であるジュティアに促され、一歩前に出るが訳のわからないまま連れてこられたエルリアには選ぶも何もない。


「師匠……。これは?」


 眼の前のひとつを指差し、訪ねてみる。ジュティアは合点が行ったとばかりに目を開き、笑いながら言った。


「ああ、すまない。説明してなかったか。……まあ今は、君の卒業祝いを選びに来た、とだけ言っておこう。詳しい説明は帰ってからにするよ。」


 ジュティアはいつも、大切なことは教えてくれない。今も曖昧な返答でエルリアを困らせるばかりだ。


 こうなったら何も教えてくれる気はないと知っているエルリアは、溜息をひとつつき目の前にあったひとつ――さっき質問するために指さしていたもの――をもう一度指差す。


「じゃぁ、これで……。」






 これは、新米錬金術師エルリア・エリーシアと、とあるひとつのが紡ぐ物語。

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