第121話 明日香が帰ってきた
明日香達が釧路に入ってからは、とくに危険なことはなかったみたいで俺も学校を早退しなくて済んだ。その明日香は今日の夜に帰ってくると連絡があった。一応、船の中で反省会とやらがあるみたいだから、東京湾に着いたら連絡してもらうことにした。
楓ちゃんも一緒にお疲れ様会をやろうと思う。もちろん、メインはこの間作ったフルーツパフェだ。明日香も『船の中で配信を見てめっちゃ食べたいと思ってた!』って言ってたからな。ふふふ、よくやったあの時の俺。
今日の晩ご飯は豪勢にするつもりだから、学校から帰って来てすぐに料理を開始した。
食後には前回作ったフルーツパフェも待ち受けている。明日香はストロベリーパフェ、楓ちゃんにはチョコバナナパフェを用意している。それぞれの好物も調査済みなのですよ。我に死角なし。
丁度、全ての料理を作り終えていったんアイテムボックスに入れたところで、明日香から連絡が来た。今、東京湾について一時解散になったそうだ。俺はすぐに東京湾上空に転移し、人気のないところに降り立つ。そして、何事もなかったかのように歩いて明日香達と合流した。
「ただ今! お兄ちゃん!」
「翔さん、お迎えありがとうございます!」
美少女二人から感謝される。なんて素晴らしい日なんだ。これからさらに素晴らしいお食事で疲れを癒やしてもらう。もっと感謝されるに違いない。今から楽しみだ!
「それじゃあ、帰ろうか」
俺は右手を明日香、左手を楓ちゃんと繋ぎにやけそうになるのをぐっとこらえながら、自宅へと転移した。
▽▽▽
「これ、翔さんが全部作ったんですか!?」
明日香と楓ちゃんがお風呂に入っている間にテーブルに並べた料理を見て、楓ちゃんがびっくりしている。うん、自分が作った料理に驚き喜んでくれる美少女。ごちそうさまです。
「いて!」
何か、楓ちゃんの方を見ていたら明日香に足をつねられた。この俺の防御力を突破してくるとは、明日香恐るべし。
「さ、さっそく食べようか。明日香に楓ちゃん、北海道解放作戦お疲れ様でした! 乾杯!」
オレンジジュースで乾杯し、早速料理に手をつける。うん、美味い! 明日香も楓ちゃんも一切しゃべることなく、黙々と料理を口に運んでいく。これだけ美味しそうに食べてくれたら、料理人冥利に尽きるというものだ。
乾杯から一時間、全ての料理を食べ終わり一段落した。
「ふう、お兄ちゃんの料理おいしすぎ! 食べ過ぎちゃったよ」
明日香が口の周りを拭きながら、満足げに頷いている。
「翔さんの料理は最高ですね! 毎日でも食べたいくらいです! あっ、あの変な意味じゃなくて……」
おっと、俺の料理を毎日食べたいか。料理人としては嬉しいけど、それは明日香だけの特権なんだよね。ごめんね、楓ちゃん。それを聞いた明日香が、もの凄い笑顔でこっちを見つめている。
さて、たくさん食べてお腹いっぱいだと思うけど、デザートは別腹っていうからね。今日のメイン料理を出すよ!
「わあ! おいしそうなパフェ! 翔さん、私の好きなもの覚えててくれたんですね!」
「あー!! また楓ちゃんに先を越された! あたしのストロベリーパフェだった大好物なんだからね!」
うん、何を競い合っているのかな? 最近、明日香が楓ちゃんと張り合っている気がする。何に対してかはわからないけど、ライバルがいることはいいことなのか?
「「ああ、幸せ~」」
張り合ってたわりには、デザートの感想はハモっている。仲良しの友達がいるっていいね。眼福、眼福。
今日は楓ちゃんがうちに泊まっていくようだ……えっ!? 大丈夫!? 部屋はたくさんあるけど、俺も一緒にいるんだよ?? 心配じゃないの? 親御さんはオッケー出しちゃったの?
ああ、何か妙に緊張してきたな。さっき二人がお風呂に入っているときは、料理を並べてたからあんまり意識しなかったけど、一段落ついた今はちょっと意識しちゃってる自分がいる。
うむ、気を紛らわすために
ふかふかのベッドに寝っ転がりながら、スマホをポチポチいじってると魔物料理の再現に挑戦しているという掲示板を発見した。なになに……おおう、結構な数の犠牲者が出てるじゃないですか。
そうか、明日香が言ってたのはこのことだったのか。魔素分解のスキルなんて、みんな当然知ってるのかと思ってたら、むしろ誰も知らなかったのか。それは悪いことしたな。おっ、最後に明日香に聞いてみたらってコメントがあるな。明日香はこれを見て俺に電話してきたのか。
おっと、二つ目の掲示板もあるのか。どれどれ……ああ、ここで俺のスイーツ動画が公開されたのか。うむ、盛り上がってる、盛り上がってる。おお! やっぱり魔素分解持ちがいたじゃないか!
どれどれ、ふむふむ、なるほど。魔素分解が魔物に効かないか。そりゃそうだな。魔物の魔素が分解されたら、魔物じゃなくなっちゃうからね。よっぽどレベル差がないと効かないだろうな。
この様子じゃ、魔素を感じ取ることもできてないっぽいな。それじゃあ、魔物の肉を手に入れても魔素を分解できないかもしれない。うーん、もったいない。せっかくの魔素分解持ちなのに。
ひょっとしたら、他にも魔素分解持ちはいるんだけど上手く使えてないのかもしれないな。これはあれか、教えてあげた方がいいのか?
よし、この掲示板をお気に入りに入れて置いて、魔素分解持ちさんが戻ってきたら、ちょっとレクチャーしてあげるか。それでダメなら直接会って教えてあげよう。こんなに美味しい魔物料理をもっとみんなに食べてもらいたいからね。
次にやることを見つけた俺は、なるべく楓ちゃんが泊まっていることを意識しないように、頑張って眠りにつくのであった。
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