第120話 『撤退』
摩周湖付近で家族を保護してから、真っ直ぐ釧路港へと向かう。道中、二回ほどはぐれの小鬼に遭遇したけど、楓ちゃんが魔法でちゃちゃっとやっつけたら、男の子がもの凄く喜んでた。私から見てもかっこよかったからね。
一般の方を保護しながらだから、少し時間がかかったけど、何とか二日でたどり着くことができた。すでに他のパーティーは到着していて、取り残されていた数名と船に乗り込む準備を進めている。
戒さんは他のパーティーのリーダーを招集して、今後の動きについて話し始めた。私達はその間、保護した家族を釧路港に来ていた政府の方に引き渡し、少し休憩させてもらうことにした。何だかんだで歩きづめだったしね。
しばらくおやつを食べながら談笑していると、戒さんのメンバーを集める声が聞こえてきた。急いでおやつをしまって、戒さんの元へと急ぐ。どうやら、今後の動きについて決まったようだ。
「政府の見解を聞き、我々で話し合った結果、一度東京に戻ることにした。何か意見があれば遠慮なく言ってほしい」
集まったみんなの顔を見回しながら、戒さんが話し合いの結果を伝えてくれた。そうか、やっぱり一度戻るんだね。正直、ダンジョンマスターは強すぎた。側近ですら戒さんよりも強いんだから、賢明な判断だね。
一度戻って力を蓄えるか、もっと強い人を引っ張ってくるかしないと、とてもじゃないけど北海道解放は難しそうだもんね。
それに戒さんを始め、東京の上位ランカーがいなくなった隙を狙って『新人類』が渋谷センターを占拠しようとしたみたい。
今回は、たまたま低ランクながら成長著しいパーティーによって未然に防がれたみたいだけど、かなり危なかったって言ってた。情報が漏れてるみたいだから、その辺りの調査もしないといけないかもしれない。
釧路方面で生き残っていた人達は、函館方面より少なかったようで迎えに来た船が余っていたから、私達もそのまま空いている船に乗せてもらって、東京へと戻ることになった。
結果的には、釧路方面は解放されて生き残った人達も救出できたけど、私達の戦果は何一つなかったと言っても言い過ぎじゃないと思う。私達が生き残れたのも、釧路方面が解放されたのも全部お兄ちゃんのおかげだからね。
いっそのことお兄ちゃんが全部……だめだめ! そんなことさせたら、お兄ちゃんは化け物扱いされてこの世界にいづらくなっちゃう。何としてもそれだけは阻止しなくちゃ。
帰りの船の中では、今回の作戦の反省会が行われた。札幌で出逢ったネームド悪魔を倒すためには、どのくらいの戦力が必要なのか。とはいっても、戒さんのレベルは75。最近はほとんど上がっていないんだとか。
それに比べ、あの赤目の悪魔はお兄ちゃんの情報によると82だったそうだ。もうお兄ちゃんが倒しちゃったけど、ダンジョンマスターはもっと強いんだからレベルを上げてから挑むとなると、時間がいくらあっても足りない。
そうなると、もっと強い人を探す必要があるんだけど、戒さんは日本No.1だからもう海外のトップランカーに頼るしかない。現在の世界の
1位 ジャック・ウォーレン(アメリカ)
2位 ミハイロ・ブリュハノフ(ロシア)
3位 ルドラ・マリック(インド)
4位 アキーム・サハレ(エジプト)
5位
6位 ヨーゼフ・メルケル(ドイツ)
7位 ノア・ターナー(イギリス)
8位 クローディア・オルセン(アメリカ)
9位 エマ・ルノアール(フランス)
10位 エミリア・アクテ(フィンランド)
この十人だ。
戒さん曰く、あの赤目の悪魔に対抗できるのはこの十人くらいしか思いつかないそうだ。この中から日本に来て北海道を解放してくれる人を見つけなければならない。反省は段々と、海外のTOPランカーをどうやって日本に来てもらうのかの話し合いに変わっていった。
戒さんこの中で話したことがあるのはクローディア・オルセンのみ。彼の二つ名は『狩人』で『弓術』と『腕力強化』を持っている。彼にしか弾けない特注の弓から繰り出される矢は、1級の魔物すら貫通するとか。
しかし、あくまで彼は後衛だ。あの悪魔に接近されたら厳しいかもしれない。そういう意味では、9位のエマ・ノルアールも後衛で、聖女と呼ばれ回復特化のスキル持ちだから、こっちも難しいよね。
世界のトップランカーの話は盛り上がっているけど、結局、日本政府が依頼したとして彼らの内の誰かが来てくれるという保証はない。なにせ彼らは、あまりにも強すぎるため誰も言うことを聞かせることができない存在なのだ。
さっき名前が挙がったクローディアやエマなんかは割と話が通じる方らしい。でも、他のメンバーは気まぐれで、よっぽどおいしい条件か興味深いことがないと動かないんだって。
一応、今回の話し合いは政府の役人さんも聞いていたのでとりあえず、それぞれの国にあたってみることになった。
(世界のトップランカーか……お兄ちゃんとどっちが強いんだろう?)
その後もみんながトップランカーの話で盛り上がっている中、私だけはそんなことを考えていた。
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