第113話 支部長大活躍!
さて、必要な情報は揃ったし支部長も復活したみたいだから、ファイアーボールで天井を打ち抜いて、その隙にサポートに回らせて貰おうか。
渋谷センターの天井に米粒大のファイアーボールを放ち、落ちてきた天井のがれきの粉塵に紛れ支部長のもとへ駆けつける。
「支部長、何も言わずこれを食べてください。バフが付きますので」
まず俺は、アイテムボックスから魔物の素材で作ったサンドイッチとジュースを取りだし、支部長に渡した。
「これは……すまない。いただこう」
一瞬、訝しげな表情を見せた支部長だったが、俺が明日香の兄だと思い出したのか、魔物料理をすぐに頬張ってくれた。サンドイッチの中身は
「うま!?」
こんな場面なのに、思わず声を出してしまうくらい美味しいんだよね。わかるよ、その気持ち。
サンドイッチを食べ、ジュースを飲み干した支部長は自身の変化にすぐに気がついたようだ。
「まさか、これほどとは。仁は大げさに言ってるものばかりと思っていたが、それ以上だな」
支部長は両手の拳を打ち鳴らし、コンクリートの塵が舞う中、海原めがけて一直線に駆けていった。
「熊田!? なぜ復活している!?」
熊田の突然の復活に慌てふためきながらも、自慢の回避術で初撃を躱す海原凪。支部長はその問には答えず、肘打ち、回し蹴り、正拳突きと絶え間なく技を繰り出していく。
「くっ、さっきより速い!? 何が起こった!?」
バフが乗った支部長の息もつかせぬ連続攻撃に、女リーダーの回避術が追いつかなくなってきた。それでも致命傷を避けているあたりが、この女の実力の高さをうかがわせる。
「姉さん、援護します! 火の玉よ、敵を打ち砕べぶぅ」
せっかくのいいところで邪魔をしてきたヤツがいた。最初にファイアーボールをかましてきた男だな。また、火魔法を唱えようとしてたから背後から忍び寄って頭をぶん殴ってやった。
そしたら舌をかんでしまったらしく、口中血だらけにしながら床をのたうち回っている。復活したら困るから、腹をパンチして気絶させておいた。
支部長の怒濤の攻撃を何とか回避している女リーダー。なかなかの腕前だが、そろそろ終わらせてあげようか。俺は彼女の足下を氷操作で凍らせた。つるっと滑る女リーダー。乗りに乗ってる支部長がその隙を見逃すわけもなく、腹に一撃で決着だ。
さて、残るは残党共だが、ノリノリの支部長と復活した
侵入者達は、自ら塞いだ入り口が徒となって逃げることもできず、今までの鬱憤を晴らすかのように勢いづいた
侵入者達を完全無力化した
近隣で起きていた同様の襲撃事件も、結局は東京への援軍を防ぐ目的だったので、ほどなく鎮圧され事なきを得た。
そして俺はというと……
「ちょーっと待ったぁぁぁ! ショウって言ったな、お前さん! いやぁ、助かったよ! お前がいなかったら、俺達みんな殺されてたかもしれねぇからな! それで、ちょぉぉぉっと聞きたいことがあるんだよ。なぁに、そんなに時間は取らせないって! 支部長室まで、来てくれるよな?」
こっそり帰ろうとしたら、強面のおっさんにがっちり肩を掴まれてしまった。ここの支部長の熊田剛健って言ったかな?
正直、聞きたいことがどれなのか、思い当たる節がありすぎてわからないが、できれば勘弁してもらいたい。近くにいた、クールな美人のお姉さんに視線を送ってみたが、目をそらされる。くそ、明日香が無理矢理誘われた件は許してやったというのに。
引きずられるように支部長室へと連れて行かれ、魔物料理のこと、自作の
魔物料理とポーション類は明日香経由でキー坊に貰ったで何とかなったけど、馬と土はね……知らぬ存ぜぬで押し通すしかなかった。
はあ、久しぶりに変な汗かいた。
たっぷり2時間は拘束されていたが、何とか正体はバレずに済んだ。あー、でも監視の目がきびしくなりそうだな。
転移で家に帰って来てすぐに行ったのは、政府の発表の確認だ。今の北海道解放作戦の状況を知りたい。
新品の大型テレビをつけると、丁度ニュースで紹介されていた。それによると、獅子王戒達の解放軍は札幌奪還に失敗したそうだ。ダンジョンマスターどころか、その側近に負けてしまったと報道されている。ずいぶん詳細に報告されてるな。そのせいで非難されないといいんだけど。
だが、その次に釧路方面が突如解放されたという報道に切り替わる。詳細は不明だが、政府はすでに釧路港に大船団を送り込んだようだ。電波が通じるようになったことから、ダンジョンマスターが消失したとの見方が強まったと、アナウンサーが興奮気味に語っている。
まあ、明日香には伝えたけど獅子王さんに伝わるわけないよね。『なんでそんなこと知ってるの』ってなるから。
とりあえず、解放軍の中に死傷者はいないみたいだからよかった。明日香はまあ大丈夫だと思うけど、仲間に死傷者が出たら優しい妹は悲しむだろうから。だが、いつかそれも乗り越えないといけないんだけどね。
明日香に危害が及ぶのは以ての外だが、あまり過保護になるのも良くない。そのバランスが難しいのだ。とりあえず、明日は学校に行くが少し具合が悪い振りをしておこう。いつでも早退できるように。
夜ご飯を一人寂しく食べ、明日香に念話でお休みと伝え俺はベッドへと潜り込むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます