第87話 『いざ北海道へ』
特殊クエストを達成してから3週間。私と楓ちゃんはお兄ちゃんにレベル上げに付き合ってもらい、また一回り強くなることができた。ただ、私はスキル恩恵でレベル60まで到達できたけど、楓ちゃんは47までしかあがっていない。ちょっと申し訳ない気持ちになっちゃったけど、ふたりで生き残るためだからと割り切って考える。
お兄ちゃんが鑑定を使えるのは内緒にしてるから、楓ちゃんには伝えていないけど、やっぱりお兄ちゃんはチートだねチート。ありがたいけど。
さて、北海道へと出発するのが明日へと迫った我が家では、お兄ちゃんによる持っていくアイテムの説明会が始まっていました。
「これは
何でも向こうの世界にあった
この念話付きの指輪は、一見便利に見えるけどもの凄く魔力を消費するみたい。安易に使ったら魔力切れで動けなくなるみたいだから、いざというときに一瞬だけにしてくれと言われました。それと、海斗さんみたいな念話持ちがいたとしても、思わず返事をしないようにしないとダメね。
それから、大量の食料と飲み物も用意されていました。お兄ちゃんがこつこつ作っていた魔物料理で、楓ちゃんとふたりでも1ヶ月はもつみたい。もうこれでもかってくらい過保護なんだから。嬉しいけど。
そんなに心配ならお兄ちゃんも参加すればいいのにと思ったけど、それは違うみたい。あくまで私が一人前になるためのサポートを頑張りたいってさ。もちろん、本当に危ない目にあったときには助けに来てくれると思うけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんなりに考えてくれてるみたいで……やっぱり大好き!
アイテムを説明してもらうのに1時間以上かかったけど、お兄ちゃんの大きな愛を感じたことで、何の心配もなく満足して眠ることができるのでした。
翌朝、お兄ちゃんの転移で楓ちゃんを迎えに行き、そのまま船が出る横須賀軍港に送ってもらう。あっ、直接中に転移したのがバレると大変なことになるから入り口の近くまでだけどね。
「おはようございます! 獅子王さん!」
入り口で
「やあ、アスカさんにカエデさん。聞いたよ。たった1週間で特殊クエストをクリアしたんだって? あれからまた強くなってるみたいだし、来てくれて嬉しいよ」
獅子王さんは相変わらず紳士的だね。2級という強さでこの性格だから、人気が出るのも頷ける。楓ちゃんも獅子王さんは好印象だしね。
「やあやあ、かわいこちゃんたち! 船の旅は長いよ! オレと一緒に楽しもうぜ!」
軽快な口調で話しかけてきたのは、震雷のメンバーのひとりである火神さん。ウィンクまで決めちゃって、悪い人じゃないのはわかってるけど、そのお誘いに乗る気にはなれないのよね。
「あんたはこっちで作戦会議でしょ」
そんな火神さんを、震雷唯一の女性メンバー早乙女さんが、耳を引っ張りながら連れて行ってくれました。ふふふ、早乙女さん強し!
「そうだ、紹介したい人がいるんだけどちょっと一緒に来てくれないかな?」
その一連の漫才を苦笑いしながら見ていた獅子王さんは、ふと真面目な顔に戻って私達を誘ってきた。紹介したい人って誰だろう?
私と楓ちゃんは、獅子王さんの後に続いて歩いて行く。たくさんの
獅子王さんは、これから乗るであろう大きな軍艦へとどんどん近づいていく。その軍艦の乗り場付近に固まっている一団へと私達を案内した。
「やあ、兄さん。久しぶりだね。ちょっと紹介したい人がいるんだけどいいかな?」
そう言って獅子王さんが声をかけたのは、日本最強と言われる獅子王さんのお兄さん『獅子王戒』さんでした!
「ああ、仁か。久しぶりだな。それで、そっちが以前話していたお嬢さん達……そちらのお嬢さん。
獅子王戒さんは、あいさつもそこそこに会話を中断して私にレベルを聞いてきた。さすが1級
「はい、もちろんわかっています」
楓ちゃんは私の本当のレベルを知らないせいか、きょとんとしている。弟の仁さんは、何か思い当たる節でもあったのかちょっと渋い表情だ。
「そうか。確か、私の記憶だと君は後方支援担当だったかと思うが……無理にとは言わないが前線に出てくれると非常に助かるな」
ああ、やっぱり私のレベルが高いことがバレちゃってるね。多分、ここにいる
「考えておきます」
とは言っても、すぐに『はい』とはならないよね。楓ちゃんのこともあるし。まあ、楓ちゃんのレベルもその辺の
私の答えに満足したのか、戒さんは協会の人であろう偉そうな人達との会話に戻っていった。
それから、すぐにみんな集められちょっとした出発式みたいのが行われた。今回の団長は当然獅子王さんのお兄さんで、みんなの前で北海道を解放するという目的を熱く語っていた。
そして、分厚い冊子が一人ひとりに渡され、船の中で読んでおくように指示された。各役割の仕事内容が詳細に書いてあったり、北海道の地図や生息している魔物について、最後には緊急時の対応についても書かれていた。
冊子を受け取った
あっ、文句垂れ男がいた。こっちを見て怯えたように軍艦に乗り込んでいった。うん、ちょっとやり過ぎたかも。
私達も気持ちを引き締めて軍艦へと乗り込んだ。
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