第14話 『ダンジョンデビュー④』
あれはお兄ちゃんと
「ねえ、お兄ちゃん。何でダンジョンの魔物は
私の疑問にお兄ちゃんは少し考えてこう答えたの。
「たぶんスキルを得ると同時に魔力を獲得するんじゃないかな? んで、魔力を獲得すると武器も含めて身体が魔力の膜に覆われて、その魔力が魔物の魔力の膜を撃ち破るとか」
今まさにそのことを思い出した。
私は自分の中の魔力を意識する。これは前の世界で経験があるからすぐにできた。今度はその魔力で刀を覆う。
その状態を維持しながら
"!? 今の攻撃きいたんじゃね!?"
"えっ? マジで? 何か変わったことした?"
"そうは見えなかったが……いや! 右前足の外側! 確かに血が出てるぞ!"
(もっと均等に、もっと鋭く)
それでも、この戦いで初めて傷をつけられたことに驚異を感じたのか、
極限まで集中した私はその全てを紙一重で躱し、カウンターを叩き込んで行く。私の反撃に怯むことなく攻撃を続ける血に飢えた魔物。
しかし、その腕の傷は徐々に大きくなっていき……
(できた)
強烈な噛みつき攻撃を跳躍して躱した私は、落ちる力を利用して前に突き出た
先程までの抵抗はなく、するりと刀が抜けていく。一瞬の間が空き、
"やばい! やばい! やばい!"
"うぉぉぉぉぉ! アスカちゃん最強!!!"
"やっべぇ、鳥肌たった……"
"¥10000 いいもの見させてもらいました! これはそのお礼です!"
気がつくと周りは静かになっていて、腕にはめたスマホの画面が真っ赤になっていた。どうやら、
私がスマホの画面を見ていると、楓ちゃんが駆け寄ってきて私に抱きついた。うん、ごめんね。心配かけたよね。
ひとしきり無事を確認し合った後、さすがに疲れた私達はすぐにダンジョンを出ることにした。あ、せっかく倒したんだから
楓ちゃんにも分けてあげようとしたけど、『私は何もできなかったから』と受け取ってもらえなかった。そんなこと気にしなくていいのに。
そして、落ちていた素材をリュックに詰めて帰ろうとした時、足元にビー玉サイズのほんのり赤みがかった透明な球を見つけた。
「あれ、これってもしかして……」
私が目の前に翳したビー玉サイズの玉を、楓ちゃんの高性能カメラが映し出す。そして、本日、何度目かになるチャット祭りが始まった。
"えっ? それって……まさか?"
"ちょっと待って。オレは本物を見たことがないんだよ。誰かわかる人いないのか?"
"ビー玉サイズ、ほんのり赤みがかっている、
"そこから導き出される答えは……"
"スキルオーブじゃねえかぁぁぁぁ!!!!"
"うぉぉぉぉぉ、くれぇぇぇぇぇ!!"
"初めて見たぁぁぁぁ、くれぇぇぇぇぇ!!"
"それがあればオレも
"オレモオレモオレモォォォォォ!!"
やっぱりこれはスキルオーブだったみたい。ドロップするのはものすごく稀だった言ってたから、違うのかと思ったけど見たことある人がいたみたい。
ふと楓ちゃんを見てみると、あんぐり口を開けて放心していた。そっか、これ一つで最低100万円だったっけ? もしかして、これが売れたらお兄ちゃんに楽をさせてあげれるのかな? そう考えると私も嬉しくなってくる。
しばらく放心状態だった楓ちゃんが復活したところで、他の魔物が集まってくる前にこの場を離れることにした。
私達は極力戦闘を避けながら、第2階層、第1階層へと上がって行き、当初の予定より大幅に遅れて、それでも無事にダンジョンから出ることができた。
途中、楓ちゃんにスキルオーブをどうするつもりか聞かれたので、普通に『売るつもり』って答えたら、またもやチャット欄が大荒れになっていました。
最終的に今回のカエデチャンネルの同時接続は3万5千人を超え、楓ちゃんの過去最高記録をあっさり塗り替えてしまった。
それどころかカエデチャンネルがトレンド1位になったり、私と
とにかく、私が出させてもらったことで迷惑をかけることはなかったから、今回の配信は成功と思っていいのかな?
私的にも
スキルオーブもほんのり赤みがかっているから、100万円より高く売れるだろうってさ。もう、にやにやが止まらないね。
一応、スキルオーブだけは協会の買取には出さず、持って帰ってお兄ちゃんとどうするか相談することにした。買取カウンターのお姉さんが、すごく残念がっていたけど、こればっかりは仕方ないよね。
私は買取が終わった後、楓ちゃんと別れてほくほく笑顔でお兄ちゃんが待つ自宅へと帰るのであった。
……その頃、肝心の兄はというと……徹夜でレベル上げをした影響で、家で爆睡していた。帰ってきた妹の話を聞き、二度と配信を見逃さないと誓ったとか……
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