第16話
リフォームの話がなくなってから夢子さんには全く会えなかった。Yは休みの日などに時間があるとあちらこちらとあてもなく車で出かけて行って探した。夢子さんが仕事や趣味で行きそうな場所をネットで探して色々行ってみたのだが、しかし夢子さんには全く会えなかった。家の前にあるお袋の墓にも毎朝願いに行った。墓に願ったところで無駄なのかもしれないと思いながらもYは他にどうしたらいいかわからなくて毎朝の墓参りを止められなかった。Yは夢子さんに連絡する術も何もなかったことに今更ながら驚いた。
夢子さんは幻なのか本当にいる人なのかそれも分からなくなってきた。
リフォームの話をする時にもらった名刺に書かれていた LINE のアドレスにメッセージを送ったこともあったが、返事は全くなかった。Yは夢子さんに会う術を全て失ったことにやっと気がついた。夢子さんとの繋がりは全くない状態だった。
それでもYはやっぱり夢子さんのことを諦めきれなかった。休みで時間があるたびYは夢子さんを探した。
それは思いがけないことで別れた恋人を探すように。
「たまたまだ。夢子さんが家に来たのもたまたまなら、いきなり来なくなってしまったのもたまたまだ。」
何もかもはっきりした理由があるわけじゃなかった。ただなんとなくこれといった理由もなく全ての事は始まり終わって行く。夢子さんに出会えたのもたまたまであり、夢子さんに会えなくなってしまったのもほんの偶然なんだ。特に何かの意思とか意図が働いているわけじゃない。全くの偶然ただまったくの偶然で俺は今夢子さんに会えない。今更ながら俺は夢子さんのこと本当に何も知らない。結婚しているのかいないのかも、今付き合ってる男がいるのかいないのかも何もかも全く知らない。ただ一度会って夢子さんのこと好きになったそれ以外全く何も知らない。夢子さんのことを可愛らしくて素敵な人だなと思った以外のことを…。
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