T.U. W~ふたりは運命共同体

sorarion914

序章

 朝靄あさもやにけむる川沿いの道を足早に歩く。

 自分の足音以外は何も聞こえない。すれ違う者もいない。

 呼吸が上がり、肩で大きく息をついてから——男はふいに立ち止まった。

 目を閉じて、じっと背後に迫る気配に耳を澄ます。

 何も聞こえない。

 でも、早朝の冷たい空気を揺らす僅かな振動が、うなじに触れた。


 来たか?


 空気がピンと張りつめていくのが分かる。冷えた感触が背中に張り付く。

 誰かが、ゆっくりと自分の背後に立つのが分かった。



 よし…来い———


 男はゆっくりと目を開いた。


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