第34話 樹と樹里亜の恋!
2016年の夏。
あぶら蝉があつさをかきたてるように鳴いている今日この頃
樹はやっと会えた美しい樹里亜と、また会える喜びで一杯。
いそいそとK大学近くの、緑と花に囲まれた美しい公園に出掛けた。
暫く待っていると、ターコイズとはトルコ石のこと。青空のようなきれいなブルーの空の下。軽やかに舞うように近づいてくる樹里亜の姿があった。
青々とした空に溶け出したようなスカイブル-のワンピースに、麦わら帽子の何とも涼しげな美しい樹里亜が現れた。そして…その後ろに、お友達の美紀の姿も見えて来た。
その公園の花の咲き乱れる池のほとりで、2人をキャンパスに納めた樹は、2人を近くのお洒落なレストランに誘った。
そのレストランで今どきの女子大生の動向を聞き出した樹は、僅かばかりのモデル代を支払いランチを御馳走した。
樹里亜と美紀は、このハンサムな大手デザイン事務所に勤務する樹に、開口一番ハ-ト💛を鷲掴みにされていた。
そして……すっかり打ち解け合った3人は、携帯番号の交換をし、この日は別れたた。
帰りの電車の中で2人は、ハンサムな大手デザイン事務所に勤務する樹の話で持ち切りだ。
「チョット樹さんてかなりイケてるわね~!」
「私もそう思う!」
一方の樹は益々樹里亜の事が忘れられなくなっている。
そんな時に……ある日、美紀ちゃんから電話が掛かってきた。
「あの~樹里亜の事で……どうしても……話しておきたい話が……あるのですが?」
「どんな話だい?」
「電話では……チョット……?」
美紀に呼び出された樹は、電話ではラチが明かないので取るものも取り敢えず、待ち合わせの喫茶店に出掛けた。
バックグラウンドミュージックには、ボブディランの曲が流れて……。
♪ハウ メニ♬・・・♪ローズ♬
樹はホットコーヒーを注文。一方の美紀はレモンティーを注文した。
そして…開口一番美紀が話し出した。
その話とは、耳を疑うような樹里亜の家族の話だった。
「それが……こんな話をすると……どういう人?と思われるかも知れないけど……それでも…どうしても……言っておかないと……そう思ってお電話さし上げたのよ。実は…あの家は呪われていて、産婦人科の院長達也おじさんは誰かに殺害したらしいのよ。更には人里離れた敷地内で、子供を焼き殺しているって言う事を聞いたので…私だって親友の悪い秘密を……話したくないけど……危険を感じて……それで…もし……樹さんに何か有ってはと思い……」
「それでも……そんな話を……?」
樹は美紀のその言葉に憤りを感じたが、確かに今までの経緯から考えて、何か有るに違いない家庭だと悟った。
それにしても美紀も、何故この様な突拍子もない事を口走るのだろうか?
産婦人科院長達也は数日前にも目撃されているのに……何故こんなとんでもない話をするの……?
それでも…確かにいろんな問題を抱えている一家ではあるのだが?
美紀の真意は、一体どのようなものなのか?
樹に危険が及んではと思う老婆心からなのか?
それとも……樹に対する恋心に火が付いた美紀は、到底樹里亜には勝てないと思い出鱈目な事を並べ立てて2人を、引き裂こうとしているのか?
(それでも…これがもし本当の事なら大変な事になる。確かにフランスでも樹里亜の周りには、目に見えない……何か?陰謀めいたものが渦巻いている事は分かっていた……そういえば……あのウール-ズ修道院に侵入して見た広い敷地内には、病院も併設されていて、初めての……待ち合わせてで会った時は樹里亜はあんなに元気だったのに……数週間後には息絶え絶えの姿に変わり果てていた。更には……防犯カメラで全てを確認していたのだろうか……強面男のガードマン達が駆け足で追いかけて来た事があった。あの時俺は、慌てて逃げて逃げて何処をどう走ったのか分からないほど、逃げて薄暗い不気味な建物に出たと、その時どこからともなく苦しそうな……今にも息絶えそうな、うめき声が聞こえて来た。「グウウウ~!ウウウウ~」『何なんだよ~!一体ここは?』あんな恐ろしい体験もしていたな~。絶対に何かあるに決まっている!)そう思う樹だった
それにしてもこの美紀という娘は一体どんな神経をしているのか?大切な友達の絶対知られたくない重要な秘密を、こうも……いとも簡単に人に話す等、とんでもない娘だ。
もし?口から出まかせを言っているのなら絶対許せない!
◆▽◆
樹の心の奥底には、もうとっくの昔に樹里亜が住みついている。
こんな悲惨な話を聞けば聞くほど益々恋心に火が付き、(そんなバカな事が有る筈がない!樹里亜に真実を聞こう。そして今度こそ樹里亜を絶対に守り通そう!と心に誓うのだった。
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