第20話 クロ―ン作りに着手
徐々に身体も回復して軽度の仕事復帰をしていた達也。
1997年「緑さす」初夏の鮮やかな新緑のまばゆい5月まさに緑のシャワー。
そんな五月晴れの季節、軽い協調運動障害だった達也は無事回復して、産婦人科に完全復帰する事が出来た。
一方の陽介と貴理子夫婦は、あれ以来険悪な関係が続いている。
あの日、陽介と弥生の愛の復活を知った貴理子は、夜遅く帰って来た陽介に対して、苦しみぬいた挙句、手に刃物を握りしめて待ち構えていた。
「あなたが私と遥斗を捨ててこの家を出て行くと言うのなら、私は今すぐに遥斗を殺して私も死にます!」
「ヤッ止めろ!」
「じゃ~もう2度と弥生さんとは会わないと約束して。お願い!もし会っていた事が分かったら今度こそ絶対に死んでヤル。容赦しないから~。私と遥斗の事なんてどうでもいいんでしょう?どうせあなたの事なら、病院の名前を汚したくないだけなのでしょうけれどね?あんな女のどこがそんなに良いの?ワァ~~~ンワァワァ~~ン😭どうして分かってくれないの~!」
「バカを言うんじゃ無いヨ!お前たちが可愛いに決まってる!」
こんな経緯があり、弥生とは会う事もままならなくなってしまった陽介。
それと言いうのも、あの貴理子に全てを知られてしまって以来、弥生の怪しい言動がピタリと止まってしまった。
何とも嬉しい限り。そんな事も手伝ってか、達也は協調運動障害のリハビリに、造精機能障害の辛い治療にも打ち勝ち、仕事復帰を果たすことが出来たのだった。
そしてなんと!更には妊娠の朗報まで飛び込んできた。
◆▽◆
1998年9月中旬。
茜色の空を背景に、黄金色に染まった稲穂の上を飛び交う赤とんぼに、すっかり懐かしい、どこか寂しい、秋の夕暮れを感じる今日この頃。
待望の赤ちゃん樹里亜が誕生した。
達也の喜びようときたら尋常なものではなかった。
(散々俺を苦しめた弥生だが、こうして俺の赤ちゃんを無事生んでくれて本当にありがとう。もう今までの事は全て水に流そう。こんな可愛い赤ちゃんまで誕生した事だし、子育てで陽介どころでは無いだろう)
これでもう流石に陽介も、手出しは出来ないだろう。と安心しきりの達也。
それでもクロ―ン人間の製造に着手して来た事を、今更中断する訳にも行かない。
我が子はあくまでも我が子、子供が授かったからと言って中止は出来ない。
人間の欲とは底知れないもの、益々欲望に拍車がかかっている達也。
(俺を心の底から愛してくれる弥生を、作り出す事こそ最大の願い。最大の希望!
そして…その弥生と心の底から愛し合う事こそ、俺の一番の喜び!最大の幸せ!アアアア……そして若い弥生をまた味わう事が出来る何度でも……}
異常な精神状態の達也なのだが、実は……。
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