難解に月男

エリー.ファー

難解に月男

 滑るように明日がやって来て、日が落ちる。

 哀れ、この世は望月に似て、みすぼらしさの一つもない。

 合わせて踊る、夜風と野風の違いを語って、飲み明かす真夜中。

 豊穣を祈るべきと、踊る貴様に、節操のない言葉を投げかけて、閉場する義憤。

 嘘をどれほど重ね、夢をどれほど潰し、月をどれほど見上げたか。

 数え切れぬよ。

 数え切れぬぞよ。

 浮かび上がるサイレンに足を忍ばせて、歩き出すために知り過ぎた真夜中を脱ぎ去って生きていく。

 何の間違いもしていない。

 何の問題もない。

 何もかも蝶々のように。

 悲壮感を物語にしなければ、黄色く染まることはない。

 水色と白と神の色を教えてほしい。

 水色と白と神々の色を教えてほしい。

 水色と白と髪の滑らかさを知りたい。

 あなたの髪を切り刻んで食ってしまいたい。

 食い散らかしたところだけで、映画にして自慢したい。

 地下街を歩く、君と貴様と貴方。

 違いが判らぬまま大人になってしまいまして、候。

 ござんす。

 なんて言葉遣いで喋る人間なんて、もう見つけられない。

 哀れ、哀れ、情報戦の中で暴れ。

 信仰対象を見つけて金魚に近づける山の中。

 金魚に爆弾が取り付けられている夢を見たので、抱いて欲しい。

 見て欲しい。

 気づいて欲しい。

 踊って欲しい。

 壊れて欲しい。

 いや。

 壊れかけて欲しい。

 何もかもスムーズでは、インスタント教養から脱出することはできない。

 響いているのは叫び声。

 鶏の鳴き声ではございませぬよ。

 ほほ。

 おほほ。

 おっほほほっほ。

 着物を燃やしてしまいましょう。金になるそうですが、売るのはもったいない。一気に燃やしてしまいましょう。そのためにガソリンを買ってくる必要がありますね。白い花に赤い燃料をかけましょう。何か思い違いをしているようですが、カウントで飛び出すタイミングを教えて下さい。いや、脳の中に刻み込んで下さい。

 素早くステップ。

 お願い。

 ワン。

 ツー。

 スリー。

 フォー。

 ファイブ。

 シックス。

 セブン。

 エイト。

 ナイン。

 テン。

 しっかりとした考え方を持って生きていくのは、かように難しいことでは御座いますが、それ故に身に着けてしまえば、一生ものの宝になります。かきならされたエレキギターのような、美しさと気高さを抱えている男性には、目もくれない。真っ赤に燃やした情熱と、嫉妬に狂った発想で、積み上げた時間のせいかも、気がつきゃあたしの目は紅。売れない魂には、何もない。意味がない。感情がない。心がない。上振れが存在しない、ところでようやく本物かどうかが暴かれる。

 あなたの知っている通りです。

 結構毛だらけ、猫灰だらけ、肺に入れてる汚れた麻薬で、こちらのお客はハイだらけ。

 札幌の風を知っているかい。

 渋谷の朝を知ってるかい。

 博多の雨を知ってるかい。

 大阪の昼を知ってるかい。

 京都の血を知ってるかい。

 切腹を皮切りに始まったお祭りの名前を知ってるかい。

 打ち込んでいる、自分の感情が僅かばかりの本音を書きだしてしまう限りは、いつまで経っても、アマチュアから出られないだろう。ただし、プロの定義自体があやふやであるがゆえに、否定もできないのが難点と言える。

 こん、と音がした。

 もう二度と聞こえなくなるだろう。

 楽しくなかった時間を取り戻すための旅が始まることはない。

 楽しくない時間を過ごしたのはあなたの責任である。

 あなたが無能だから、退屈なのではありませんこと。

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